会長挨拶

平成21/22年度 会長挨拶

これからの化学センサ

化学センサ研究会・会長 松永 是

(東京農工大学理事・副学長)

 

 

 

  今年から、化学センサ研究会の会長を務めさせていただくことになりました。微力ながら化学センサ研究の発展のためにお手伝いをさせていただこうと思っております。東京工業大学資源化学研究所の鈴木研究室で、学生時代、微生物センサの研究を始めて以来、あっという間に35年たってしまいました。

 

  バイオセンサの歴史は長く、1962年にクラーク博士が、酸素電極とグルコースオキシダーゼを使ったグルコースセンサを発表したのが最初であると認識しています。その後、1967年にアップダイク博士とヒックス博士が固定化酵素を用いたグルコースセンサをNatureに報告し、糖尿病患者およびその予備軍の血糖値をはかるセンサとして大きく発展しました。その後、本化学センサ研究会の諸先輩方が、種々の酵素センサ、微生物センサ、免疫センサなどを研究され、世界のバイオセンサ研究に大きく貢献してきました。バイオセンサの検出素子は、酸素電極から始まり、白金電極、イオン電極、FET(電界効果トランジスタ)、さらに、光電子倍増管、CCD(固体撮像素子)、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)などの光受光素子へと展開していきました。表面プラズモンを検出様式のバイオセンサも多く開発されてきました。水晶振動子を用いるバイオセンサも種々な種類のものが開発されてきました。バイオ素子のほうも、酵素から始まり、抗体、DNA、微生物、細胞、組織など用いられてきました。また、単一のセンサから、複数化やシステム化したセンサへと発展してきています。

 

  化学センサは、バイオセンサのみならず、ガスセンサ、イオンセンサなど多様なセンサを含みます。これまで、人類は石油に依存した、大量生産、大量消費をもとに発展を続け、便利で快適な生活を営めるようになりました。一方では、環境問題、資源の枯渇、食料不足などの問題も表面化してきました。今後も、持続性社会を実現するためには、化学センサの役割は極めて重要です。特に、環境や食料の安全安心問題を正確に把握するためには、高度なセンシングと情報処理技術が不可欠です。化学センサは、広範囲な分野で基本原理は確立してきましたが、今後ますますユビキタス化が求められ、活発な研究開発が望まれる分野です。化学センサ研究会もさらなる発展が望まれています。