会長挨拶

平成21/22年度 会長挨拶

化学センサ研究会の過去、現在、そして将来

化学センサ研究会・会長 三浦 則雄

(九州大学産学連携センター・教授)

 

 

 

  本年度から会長という大役を仰せ付かりました。大変な重責ではありますが、これまで8年間務めさせて頂きました庶務幹事(事務局)の経験を生かしつつ、本研究会のさらなる発展のために精一杯努力したいと思っております。

 

  1984年に誕生した本研究会の歴史を振り返って見ますと、先人方の偉大さに改めて敬服させられます。恩師である故清山哲郎先生が中心となって本会の前身であるセンサ研究懇談会を1977年に発会された時、私はまだ博士課程の2年生であり、「熱化学法による水素製造プロセスの研究」という難しいテーマと悪戦苦闘していた時でした。その後、この化学センサという新分野の地盤固めを先生方がされて、1983年に化学センサに関する初めての国際会議を福岡で開催された時には、助教授になりたての私もガスセンサの研究を始めており、「プロトン導電体を用いた室温作動可能な混成電位型新規水素センサ」についての研究成果を、口頭発表したことを懐かしく思い出します。この研究は24年たっても、車載用排ガスセンサや環境ガスセンサなどの開発といった私どもの現在の研究に連続的に繋がっています。また、当時はぺいぺいであった私も、実行委員として会議の運営に携わらせて頂いたことは、準備は色々大変なこともありましたが、その後のことを思うと大変に良い経験をさせて頂いたと感謝しています。また、2年毎に開催され、現在まで11回も続いているこの国際会議の記念すべき第1回に関わられたということは、非常にラッキーだったと思っています。

 

  物理センサに対して、化学的現象を伴うすべての検知素子(バイオセンサも含む)に対して包括的に化学センサ(Chemical Sensor)という呼称を清山先生らがつけられた後、国際的にも認知され始めたのはこの会議が契機だったようです。現在、この呼称はよく定着しており、Yahooで検索すると「化学センサ」は約70万件、Googleでは「Chemical Sensor」は約500万件もヒットします。

 

  本研究会の初期における活動には目覚ましいものがあり、この期間に現在の研究会の基礎ができ、基本路線が敷かれています。これらは当時の幹事であられた山添、山内、軽部、足立、相澤、荒井(故人)といった錚々たる先生方のご努力に因るものと思われます。最近もこの基本路線に沿って活動を着実に続けており、私が庶務幹事を務めたこの8年間だけを見ても、機関誌発行48回、研究会16回(講演:48件)、研究発表会14回(講演:約800件)、第10回化学センサ国際会議主催(つくば、発表:約450件)、弟5回東アジア化学センサ会議(長崎、発表:約150件)、また数多くの国際会議の支援や国内会議、発表会の共催や協賛、さらに清山賞(16名)、碇山国際交流基金(4名)の授与、電気化学会各省の受賞(7件)などの実績を残しています、これだけの膨大な量の情報発信や学術交流が短期間でなされているわけですし、また、本会の会員の業績が良く認められていることも事実です。

 

  今後は、このような研究会の順調な歩みに胡座をかいているわけにはいきません。幸いにもガスセンサ、バイオセンサともに日本初のオリジナルな技術ですし、これほどの実績を有する化学センサに関する強力な組織は、国内外に類を見ません。さらに、昨今注目を集めている飲酒運転事故、CO中毒事故、シックハウス症候群、健康志向、食品安全性やテロ対策などといった話題のため、環境、防災、医療などを含めた安全・安心社会の確立を目指したセキュリティ用化学センサに対する重要性が益々高まっています。そのためには、産学、産産連携により、高品質な新技術や新製品をできるだけ速く世に出すことが肝要です。本研究会はそのためのインターフェイスとしての役割を果たせると思いますし、実際、夏の泊りがけの研究会などは強い人的ネットワーク作りには最適と思われます。

 

  現在、研究会の財政はかなり健全な状態にあります。新設した学術交流基金を最大限活用して、国内外の優れた人材、特に若い研究者が率先して気楽に集い、活動できるような雰囲気作りやシステムの形成が重要と考えています。この機を捉えて、優秀な若い人材の育成、出版事業、HP、学会発表を通した世界へ向けての情報発信、さらには未踏領域までを含めたあらゆる分野・方面との学術交流、国際交流などを通して、本研究会自体が化学センサ研究の拠点(COE)となれるように努力する必要性を感じております。何卒さらなるご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。