Chemical Sensors
Vol. 12, No. 3 (1996)
Abstracts
大学を取りまく状況の認識とセンシング
谷 口 功
熊本大学工学部・教授
Recognition and Sensing for Current Changes on Campus
Isao TANIGUCHI
Kumamoto Univ., Professor
来るべき将来に向けて、我が国の大学の改革・改編が急ピッチで進んでいる。科学技術立国のための高度な科学技術の推進のため大学院を中心とした大学教育の推進が叫ばれている。我が国の科学技術政策の最近の動向などについて、その巨大な資金計画から世界的な関心が集められている。例えば、10月4日号のサイエンス誌でも大きく取り上げられ、表紙には大学教育に対する政策を表現したイラストが画かれている。漢字の誤りもあってアメリカの認識の大ざっぱさや注意不足を思わせるが、なかなかおもしろい。ご覧になった方も多いかと思う。小生もこのところ同窓会や地域の集まりなどで大学の現状を話す機会が多くなっているが、そのときのイントロにこのイラストは役立っている。アメリカのNSFに友人がいることもあって、そこから我が国の最近の科学技術政策に対する問い合わせや我が国の政策の解説を求められることも多い。その強い関心に驚かされる。最近のこの大きな改編の背景には科学技術立国のための我が国の戦略と若年人口の減少が絡んでいる。
こうした改編や変革の時期にあっては、事態を的確に判断するための情報のセンシングとその選択された情報を基にした事態の認識能力が益々必要になる。小生にその様な能力が有るわけではないが、あちこちの友人からの情報や国外からの反応によって事態を単純化して見ることができることも多い。
小生の所属する大学においてもいろいろな形でこの改編の波が押し寄せている。所属する工学部応用化学科は今年度より物質生命化学科となった。カリキュラムの改編や教養部の改編による授業担当の変化など対応に追われることも多い。大学院の改革も議論されている。教員の任期制の導入も議論が始まろう。すべてプラス思考で大学が良くなる方向で進むことを念じている。今なぜ改革かを改めて問いかけることで、今日の状況を的確に認識したい。若年層の動向や世界の動向を的確にセンシングすることが未来へとつながる。教官も教育と研究だけではなく、いろいろな学務(雑務とは言わない)をもこなせるマルチタレントが要求されていることを思い知らされている。
一方で、もちろん、研究の方も手が抜けない。科学技術立国日本は最先端の創造的な科学技術の展開による世界への貢献を要求されている。化学センサは我が国が生んで育てた科学技術の一つとして輝いている。もっともっとこのような世界をリードする成果が必要である。そのための基礎研究に対する理解も随分進んできた。来年度からは構造規制された表面での電気化学反応に関する文部省の重点研究も計画されている。勿論、原子・分子レベルでのセンシングや認識の理解が進むことが期待される。幸いにも小生もこの研究計画に参画させていただく予定になっている。近頃では学生諸君との議論の時間や研究論文の作製に割ける時間の確保に苦心する。それでもやはり研究が一番おもしろいので何とか時間を確保する。学会や研究会に出かけ、刺激を受けて意欲をかき立てるとともに、仲間のみんなの熱意と笑顔で疲れをいやし、明日へのエネルギーとする。研究の動向や人々の興味、世の中の動きや要求、そして、科学の本質と道理など大事なことを洩らさずセンシングして、世界を相手に競争・協力して世界から認識される仕事ができればと考えている。
温度センサ
松口正信
愛媛大学工学部応用化学科
〒790 松山市文教町3
Chemical Sensors 1995/96 - Humidity Sensors
Masanobu MATSUGUCHI
Faculty of Engineering, Ehime University
3-Bunkyo-cho, Matsuyama 790, Japan
湿度センサに関する1995年後半から1996年前半に発表された論文を、その検出原理、及び材料の種類によって分類しまとめた。今年は、例年に比べるとやや数が少なかった。特にセラミックスセンサ以外のものが目立って少ない。数が少ないのは、昨年7月にストックホルムで開催されたトランスデューサー95の特集号がいまだに(9月現在)Sensors and Actuators誌から発行されていないことも原因のひとつかもしれない。また筆者の検索不足も否定できないが、その点に関してはご容赦願いたい。
イオンセンサ
駒場慎一、瀬山倫子、逢坂哲彌
早稲田大学理工学部 早稲田大学材料技術研究所
〒169 東京都新宿区大久保3-4-1
Chemical Sensors 1995/96 - Ion Sensors
Shinichi KOMABA, Michiko SEYAMA and Tetsuya OSAKA
Department of Applied Chemistry, School of Science and Engineering; Kagami Memorial Laboratory for Materials Science and Technology, Waseda University
3-4-1 Okubo, Shinjuku-ku, Tokyo 169, Japan
技術化社会の高度化に伴い、各種センサの社会的、産業的重要性が認識されるようになってきている。この社会的状況において化学物質を識別検知して電気や光信号に変換する化学センサは、科学分野の研究者、技術者が興味を引かれるものである。近年、化学センサの研究開発およびセンサデバイスの実計測への適用を目的としたセンサプローブのマイクロ化、自動化センシングシステムの設計が益々盛んとなっている。
ここでは、イオンセンサの最近一年間の研究報告および関連論文について概観する。いくつかの総説も出ているので参考にして頂きたい。センサ全般に関する論文数を年度別に集計し、新しいセンサの開発にみられる傾向を論じた文献が発表され、イオン選択性電極(ISE)およびイオン感応性電界効果型トランジスタ(ISFET)のフロー系への適用についてISEの将来の展望までまとめた報告がなされている。同じくフローインジェクション分析法の20年前の開発より現在に至るまで、その性能向上について触れ、市販のFIA機器について代表的なものをリストアップして価格、応用範囲、機能などが概説されている。さらに、今話題となっいるインターネット上での分析科学分野のリソース、政府機関、学会、大学の研究報告やその他ニュースソースをまとめた報告も有益と思われる。
有機色素を用いた化学センサ
定岡芳彦
愛媛大学工学部 機能材料工学科
〒790-77 松山市文京町3番
Optochemical Gas Detection based on Organic Dyes dispersed in Polymer Matrices
Yoshihiko SADAOKA
Department of Materials Science and Technologies, Faculty of Engineering, Ehime University
3-Bunkyo-cho, Matsuyama 790-77, Japan
The history of optical sensors can be traced back to when pH indicator strips were developed by immobilizing pH-sensitive indicators on cellulose. It is fruitful that many environmental indicators are applicable to optic chemical gas sensor. Here, some main principles and our recent works about the gas sensor are reviewed.
はじめに
光ファイバーの発達に伴い、温度や位置センサといった物理センサの分野で多くの光ファイバーセンサがこれまでに開発されてきた。この光ファイバーを用いて雰囲気中のガス成分を検出する技術は、最近注目されている新しい方法である。光ファイバーを用いた化学センサ利点としては、
1) 出力信号が電気的なノイズによって影響されない、
1) 薄膜を用いるため応答性に優れている、
1) ファイバーのクラッド部、エバネッセント波の利用により高感度が期待される、
1) 多成分同時検出が容易である、
などがあげられる。一般的に、光学的化学センサーは良く知られている環境クロミズムを示す色素、指示薬をポリマーマトリクスに分散させ、吸光か蛍光のどちらかが環境の変化に対応した応答を示すことを原理としている。可逆的変化を示す色素、指示薬の選択並びにその固定化法がこのタイプのセンサー開発の鍵といって過言ではない。色素を含んだ膜では、吸光や発光のような光学的性質は、膜材料及び被検知ガス分子の極性、酸性度(塩基性度)などによって影響されるため、最適化により選択性を有するガスセンサを開発できるであろう。さらに各々異なった吸収、発光のピークを持つ数種類の色素を用いれば複数の成分を認識できる、同時一体型多成分センサも可能となる。このようなインテリジェント、マルチセンサを構築するには、まず、材料面からの研究を系統的に進める必要がある。現在までに、光学的化学センサーとして、水素、炭化水素類、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素、有機蒸気、湿度などを対象ガスとして研究されている。ここでは、常温作動型光学的化学センサーの基本的要素について、また、筆者の研究結果を例として概説する。
固体電解質ガスセンサの新展開
三浦則雄、山添 f
九州大学大学院総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園6-1
Recent Evolution of Solid Electrolyte Gas Sensors
Norio MIURA and Noboru YAMAZOE
Department of Materials Science and Technology, Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan
The potentiometric solid-electrolyte gas sensors can be classified into three groups. Among them, the third group (Type III) sensor using an auxiliary phase is highly potential for constructing new type sensing devices. Recently we have been intensively focusing our efforts on developing high-performance sensors based on Type III for detecting environment-related gases, such as CO2, NOx, SOx and so on. As a result, we have found that the selection of the auxiliary phase as well as the structure of the interface between the solid electrolyte used and the auxiliary phase are very important gor the gas-sensing characteristics. The fabrication of new type sensors including "heterojunction" of an anion conductor and an cation conductor has also been shown to be possible. These achievements in Type III sensors will be introduced here, together with up-to-date results on new amperometric sensors as well as mixed-potential type sensors using oxide electrodes.
ガスセンサ開発のキーポイント
二田穂積
矢崎計器(株) ガス機器開発事業部
〒431-33 静岡県天竜市二俣町南鹿島23
A Key to Success for Development of Gas Sensors
Hozumi FUTATA
Yazaki Meter Co., Ltd. Gas Equipment Development Department
23 Minamikashima Futamata, Tenryu, Shizuoka 431-33, Japan
In the case of developing into all kinds of gas sensors, in business, five terms need to put the sensor to practical use as followed, 1)enough life to use free from maintenance, 2)sensitivity (depend on gas concentration) and selectivity, 3)handry and enough strength against dropping and shock, 4)sensitivity don't lose by toxic gases, 5)low cost.
In this paper described to example of points, four developed sensors as followed, the catalitic combustion type flamable gas sensor, the catalitic combustion type carbon monoxide gas sensor, the thin film limiting-current type oxygen sensor and the solid state electrolyte type carbon dioxide sensor.
はじめに
当社は、ガス警報器等の汎用機器に搭載するガスセンサの開発にあったてきた。そこでの開発に要求されることをまとめると以下の5項目となる。
@. メンテナンスフリーで使用するため、センサ寿命が十分にあること。
@. 取り扱いが簡単で落下、衝撃に対する強度があること。
@. 性能的には、ガス濃度依存性及びガス選択性がある程度確保されていること。
@. 使用環境条件下での被毒性ガス等によって急激な感度劣下がないこと。
@. コストが安くできること。
そのために開発するセンサが原理面や材料、構造面で以上の条件とマッチングできるかどうかが検討課題となる。
永年、センサ開発は小型化、省電力化、スマートセンサなど取り組まれてきているが、以上の条件のいずれかを満足できないでいる。必要とされるセンサを開発するにあたって当社では原理的に発表されているものの中で、実用改善が行い安い方とか使用環境の中で影響の受け方が小さい方を経験的に察するのが仕事になる。信頼性テスト、加速テスト、イタズラテストを繰り返し行って改良、改善を行って行き、ISO,PL法を意識した企業で行われている品質管理手法の品質表、FMEA,FTAの展開もクリアされなければならないので、望むことではないが、おおよそ5年から10年の開発期間日数を要しており、コストパフォーマンスの仕事とは言えない。以下、いくつかの開発したセンサの事例について記す。
('96年7月22日〜25日 於 National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg, MD, USA)
水谷 文雄(生命工学工業技術研究所)
勝部 昭明(埼玉大学工学部)
伊藤 善孝(新電元工業株式会社)
南戸 秀仁(金沢工業大学工学部)
江頭 誠(長崎大学工学部)
福井 清(新コスモス電機株式会社)
春山 哲也(東京工業大学生命理工学部)
長谷部 靖(埼玉工業大学工学部)
三浦 則雄(九州大学大学院総合理工学研究科)
久本 秀明(慶應義塾大学理工学部)
安藤 昌儀(大阪工業技術研究所)
矢吹 聡一(生命工学工業技術研究所)
中川 益生(岡山理科大学理学部)
大藪多可志(富山国際大学人文学部)
外山 滋(国立リハビリテーション研究所)
Conference Report. The 6th International Meeting on Chemical Sensors.
Fumio Mizutani (Nat'l Inst. Bioscience & Human-Technol.)
Teruaki Katsube (Saitama Univ.)
Yoshitaka Ito (Shindengen Kogyo Co.)
Hidehito Nanto (Kanazawa Inst. Of Technol.)
Makoto Egashira (Nagasaki Univ.)
Kiyoshi Fukui (New Cosmos Electric Co.)
Tetsuya Haruyama (Tokyo Inst. of Technol.)
Yasushi Hasebe (Saitama Inst. of Technol.)
Norio Miura (Kyushu Univ.)
Hideaki Hisamoto (Keio Univ.)
Masanori Ando (Osaka Nat'l Research Inst.)
Soichi Yabuki (Nat'l Inst. Bioscience & Human-Technol.)
Masuo Nakagawa (Okayama Univ. of Science)
Takashi Oyabu (Toyama Univ. of International Studies)
Shigeru Toyama (Nat'l Rehabilitation Center for the Disabled)
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