化学センサ研究会 10年の歩み


2.1 化学センサ研究会の発足

 昭和58年9月大成功裡に開催された化学センサ国際会議は、センサ研究懇談会活動の集大成ともいうべきイベントであった。これによって化学センサという新しい研究分野が世界的に認知されるとともに、この分野における日本の先導的役割が認められたと言えよう。一方、この会議の成功は、センサ研究懇談会が所期の目的を達成したことを意味していた。そして、この研究懇談会を解散するか、新しい組織に衣替えして再発足をはかるかの選択が迫られることになった。同年12月の第22回研究懇談会(学士会館)でこの問題が提起され、種々の角度からの議論検討がなされた後、翌年3月の第23回研究懇談会(矢崎技術開発センター)で意見集約がなされた。その結果、この新分野の発展のためには、化学センサの基礎・応用についての研究発表、情報収集、意見交換の場などを提供できる組織が引き続き是非必要であり、センサ研究懇談会をそのような組織に拡大改組すること、および新組織は化学センサ研究会と称することで意見の一致を見た。さらにこの研究会が、電気化学協会の技術専門委員会の一つとして、広範囲かつ定常的に研究会活動ができるよう、いくつかの新しい方針が策定された。すなわち、

1. 研究会活動は、(1)研究発表会や研究会(講演会)の定期的な開催、(2)機関誌の定期的発行、(3)その他本会の目的に沿う事業の企画実施あるいは支援、を三つの柱とする。

2. 活動経費については、(1)研究会を個人会員および法人会員からなる会員制とし、その会費によりまかなう。(2)法人会員年会費はセンサ研究懇談会当時の半額とし、より広く法人会員を勧誘する。(3)個人会員にも郵送料程度の年会費を負担していただく。

3. 組織については、(1)研究会の円滑な運営を行うため任期制(任期2年)の役員をおく。(2)役員には企業からも積極的に参加していただくこととし、特に副会長(複数)については法人会員企業のしかるべき方にお願いする。

などである。

 これらの方針のもとに検討がつづけられた結果、4月には化学センサ研究会の趣意書(本節末尾参照)ならびに会則、組織、事業等の案がまとめられた。趣意書の発起人にはセンサ研究懇談会全メンバーになっていただけることになった。これと併行して電気化学協会への申請がおこなわれ、6月には技術専門委員会としての化学センサ研究会の設置が認められた。このような経過を経て、8月24日大阪ガーデンパレスで設立総会がもたれ、化学センサ研究会が正式に誕生し、塩川二朗大阪大学教授を会長、早川茂氏(松下電器)および千葉瑛氏(フィガロ技研)を副会長とし、山内繁、相澤益男、足立吟也、軽部征夫、荒井弘通及び山添fの各氏を幹事委員とする新体制がスタートした。ちなみに、この年の会員数は個人会員56名、法人会員32社であった。

 新体制の最初の課題は、研究会活動方針をいかに肉づけていくかであった。定例研究会(年2回)および研究発表会(春季:電気学会主催のセンサシンポジウム、秋季:化学センサ研究発表会)については、当面センサ研究懇談会での実績を踏襲することになった。最も議論されたのは、機関誌についてであった。有効性、経済性の観点から編集幹事委員(相澤、足立両氏)を中心として検討がなされ、化学センサニュースという名称で年4回発行することとし、化学センサ関連のニュース(学会、トピックス等)および化学センサ研究年間抄録を順次掲載することが決定された。特に年間抄録は、前年1年間の研究全般をカバーするという大きな試みであり、各種の化学センサを適当に区分して、各区分ごとに若手会員に抄録を担当していただくこととした。化学センサニュース第1巻第1号は、年が改まった昭和60年1月に発行されたが、この号から化学センサ1984年の抄録がはじまっている。


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