Chemical Sensors
Vol. 38, No.1 (2022)

 

Abstracts



巻頭言

分析・計測の仕事

化学センサ研究会 副会長
株式会社堀場製作所
理事 分析・計測開発本部

佐 竹  司

この度、伝統ある化学センサ研究会の副会長を拝命し、たいへん光栄に思っております。これからの2年間、その重責を果たすべく、微力ではありますが本会の発展に尽くして参ります。皆様方からのご指導、ご鞭撻を頂戴したく、どうぞよろしくお願い申しあげます。
 就任にあたりまして、分析・計測について思うところを述べさせていただきます。人間には五感を駆使して、物の状態を説明できる能力があります。人によっては、優れた第六感により、状況を深く洞察することができます。そして科学技術の根源には、知らないものを知る、分からないものを説明できるようにするという探求心が存在します。人はそのような能力と心を育むことで、科学技術の進化の一端を担ってきました。もともと測る行為は人の感覚に頼っていましたが、社会の発展に伴って、普遍的にかつ客観的に数値化する道具として分析計測装置がとって替わるようになりました。分析や計測された結果は、研究開発や産業システムの行方に極めて重要な示唆を与えています。このたいへん重要な領域で堀場製作所は、“ものさし”とも言える装置を社会に提供しています。
 センサは物質と接触することや極めて接近することにより起こる現象を、主に電気信号や熱として捉え、信号は最終的に必要な情報へ変換されて利用されます。物質との原点で起こる相互作用は諸研究者によって発見され、測定原理として発明が続けられると同時に、原理応用の開発も続けられており、様々な社会ニーズに応えるシーズ技術に進化しています。特に最近では、測定する場が多様化しており、それぞれに特化した測定装置での対応が求められるようになりました。人間の通常の生活空間では想定できないような極端な条件、たとえば高温、高圧、強酸性、強アルカリ状態下での生命現象の解明にセンシングが要求されることがあります。このような状況では、極端な場に測定装置を持ち込むことができず、化学センサによってまず原点の相互作用を捉え、その後の信号処理とデータサイエンスによって解を考えることとなります。進化した科学技術の恩恵をうけて、Augmented Intelligenceの活用が進んでおり、未解明現象の探索がますます進むと考えられます。
 2021年に弊社グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」が「リュウグウ」で採取した砂や石などの試料を分析するプロジェクトに参画しました。試料に含まれる化学組成を非破壊、非接触で分析し、リュウグウの起源と成因を探ることに貢献しています。我々が持っている分析測定技術で数十億年も過去となる生命の起源を探る一翼を担い、また社会で共有できるデータベースの構築にも役立てると考えます。さらに、新たなセンサ材料の開発や応答メカニズムの解明には、昨今進歩が著しい電池材料や機能性材料研究の成果が活用され、センサ開発がますます学際的になっており、我々の理化学分析技術が少なからずお役に立てるのではないかと考えています。
 化学センサは、現在起こっている現象をリアルタイムで、また物質の直近で捉えることが出来ることに特徴があると考えられます。アカデミアによる基礎開発と産業界による装置および用途開発が連携し、さらに先進的なAI技術を導入しデータ資産を有効に活用することによって、ますます複雑化する社会ニーズに応えられる可能性が高まると考えています。本会を産学官が密接に連携する場として培ってこられた諸先輩方の想いを継承し、皆様と一緒に化学センサのさらなる発展を担っていきたいと思っております。

To Japanese Contents / To English Contents


トピックス

希土類銅酸化物を活性種とする貴金属フリー触媒を用いた
接触燃焼式 CO ガスセンサの開発

田村 真治、今中  信人

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻
〒 565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-1

Development of Catalytic Combustion-Type CO Gas Sensors with Precious
Metal- Free Catalysts Based on K2NiF4-Type Rare Earth Cuprates

Shinji TAMURA, Nobuhito IMANAKA

Department of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Osaka University
2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan

Novel catalytic combustion-type CO gas sensors were developed with the precious metal-free catalysts composed of the p- or n-type semiconducting R2CuO4-loaded CeO2–ZrO2–ZnO (R2CuO4 / CZZn; R = La, Nd, and Sm). The n-type semiconducting Nd2CuO4 and Sm2CuO4-loaded CZZn catalysts can completely oxidize CO gas at 220°C and 200°C respectively, while a p-type semiconducting La2CuO4-loaded CZZn catalyst required 350°C for a complete oxidation of CO. As a result, the sensor applying the n-type Nd2CuO4 or Sm2CuO4-loaded CZZn catalysts exhibited faster response to CO gas detection than the sensor employing La2CuO4/CZZn catalyst due to their superior CO oxidation activity. On the other hands, the sensor with La2CuO4 / CZZn catalyst showed the highest sensitivity caused by the small heat capacity, which effectively increases the Pt coil temperature.

To Japanese Contents / To English Contents


シグナリングプローブ方式DNAマイクロアレイによる
微生物遺伝子の迅速検出

宇野 晴香a、田口 朋之b、田中 剛a

a東京農工大学 大学院工学研究院 生命機能科学部門
〒184-8588 東京都小金井市中町 2-24-16
b横河電機株式会社
〒180-8750 東京都武蔵野市中町 2-9-32

Rapid Detection of Bacterial Genes
Using a Signaling Probe-Based DNA Microarray

Haruka UNOa, TOMOYUKI TAGUCHIb, Tsuyoshi TANAKAa

aDivision of Biotechnology and Life Science, Institute of Engineering
Tokyo University of Agriculture and Technology
2-24-16, Naka-Cho, Koganei City, Tokyo 184-8588, Japan
bYokogawa Corporation
2-9-32, Naka-cho, Musashino City, Tokyo 180-8750, Japan

Food safety is one of the most important issues in the food industry. DNA microarray is a powerful tool for food-borne pathogen detection by genetic testing. Recently, we have developed a novel microarray system; “signaling probe-based DNA microarray”, which does not require gene amplification, fluorescence labeling and washing steps. Two types of DNA probes labeled with a fluorescence dye and quencher molecule were spotted on the DNA microarray that fluorescent signals could be quenched by the quencher molecule due to duplex formation between the probes. The addition of the target DNA or RNA fragments resulted in the generation of fluorescence signals. Based on the principle, we achieved the specific gene detection from Escherichia coli genomic DNA and total RNA. This DNA microarray system can be applied to rapid and simple microbiological testing of multiple targets.

To Japanese Contents / To English Contents