Chemical Sensors
Vol. 37, No.4 (2021)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサと女性研究者

東北工業大学工学部 教授

丸尾 容子

化学センサ研究会と筆者との関わりは20世紀末から21世紀初めに始まったと記憶しています。放射性物質を扱った大学院での研究を終え、企業の研究所に就職し放射光分析に取り組んだのも束の間、管理区域であったために子供の出産では研究の継続が難しくテーマを高分子光部品の電子線加工方法の研究に変更し、第二子の出産で更にテーマを変更し、落ち着いて取り組み始めたのが化学センサの研究でした。育児の負担を感じての時期に取り組み始めた化学センサの研究で、現在は化学センサ研究会の重鎮となられている先生が同じ企業内におりご指導を仰ぐことができたのは偶然とはいえ非常にありがたいことでした。その先生に化学センサ研究会をご紹介いただき発表させていただいたことは鮮明に記憶に残っており、そこでの白熱した議論や研究にかける先生方の熱意を心地よく感じ、純粋な電気化学ではない筆者の研究を受け入れてくださった懐の深さを感じ、自分もその中の一員であり続けたいと感じたことがその後の息の長い研究会活動につながったと感謝しきりです。
 あくまでも私感ですが、化学センサの研究というものは女性研究者を悩ます出産や育児さらには男性研究者にも関わる方が多くなっている介護などの生活イベントや状況変化にうまく付き合いながら継続して行くことのできる、もっと積極的には、生活イベントから独自の発想を得ることのできる研究分野である気がしています。化学センサの研究には材料の創製方法や測定方法やデータ解析方法に柔軟さや複雑で複合的な発想力が求められ、それが生活イベントで求められる臨機応変さや柔らかい楽しみを見つける想像力などとうまくリンクしていると感じます。
 昨今理工学部門への女性の進出を促すイベントを頻繁に目にするようになってきました。大企業では採用する技術系の30%を女性とする目標を掲げている会社も多いと聞きます。ECSでも今年度Journal of Electrochemical Societyで"Women in Electrochemistry"の特集号が企画されており、IEEEでもWIE(Women In Engineering)が講演会の企画など活発に活動を行っているとお聞きします。そのような社会の動きの中、では化学センサ研究会での女性の動きはどうなっているのかと、研究会で発表者総数に占める女性の割合を数えてみました。女性というのは要旨集の名前の判別で、データのない回もあるので少し正確性に欠けますが、2007年〜2009年の平均が9%、2010年〜2013年の平均が11%、2014年〜2017年の平均が18%、2018年〜2021年の平均が20%と確実な伸びを見せています。2021年9月の発表会ではコロナ禍の中リモートで発表件数が少なかったことも手伝った可能性もありますがその割合は29%と非常に高いものでした。また発表者のみならず指導的役割の共著者の女性の割合も増加しているようです。女性が特に少ないと言われている工学系の団体であるにも拘らず確実に化学センサ研究会における女性の活躍の度合いが増しているのを感じられるデータではないでしょうか。女性に関するデータでは準位の芳しくない日本にあって化学センサ研究会は学術的のみならず男女共同参画の分野でも日本の牽引役を担っていると感じます。
 今後のますますの化学センサ研究会の発展を祈念して巻頭言といたしたいと思います。

To Japanese Contents / To English Contents


トピックス

低温での高感度検知用酸化タングステンの構造制御

橋新 剛

熊本大学大学院先端科学研究部物質材料生命工学部門
〒860-8555 熊本市中央区黒髪2丁目39-1

Structural Control of Tungsten Trioxide for High-sensitivity
Detection at Low Temperature

Takeshi HASHISHIN

Division of Materials Science and Chemistry,
Faculty of Advanced Science and Technology, Kumamoto University
2-39-1 Kurokami, Chuo-ku, Kumamoto 860-8555, Japan

In this topic, tungsten oxide was discussed as one of candidates of highly sensitive detection of low-concentration gases at low temperature by controlling the structure of semiconductor materials used in gas sensors. The sensor response (S = Rg/Ra) of tungsten trioxide to 0.3 ppm NO2 was 13 and 1270 for hexagonal WO3 (h-WO3) and monoclinic WO3 (m-WO3), respectively, at an operating temperature of 50 ℃. The detection limits of the former and the latter were estimated to be 0.16 ppq and 15 ppb, respectively, based on the dependence of the sensor response on NO2 concentration. On the other hand, the detection limits of h-WO3 and m-WO3 for hydrogen sulfide were 0.16 ppm and 11 ppb, respectively.

To Japanese Contents / To English Contents


ボディー・オン・チップの開発

吉本 昂希、亀井 謙一郎

京都大学高等研究院・物質―細胞統合システム拠点
〒606-8501 京都府京都市左京区吉田牛ノ宮町

Development of Body-on-a-Chip

Koki YOSHIMOTO, Ken-ichiro KAMEI

Kyoto University, Institute for Advanced Study,
Institute for Integrated Cell-Material Sciences (WPI-iCeMS)
Yoshida-Ushinomiya-cho, Sakyo-ku, Kyoto, 606-8501, Japan

Body-on-a-Chip (BoC) platforms hold a great potential for applications in drug discovery and toxicological testing as an alternative of animal tests by recapitulating human pathophysiological phenomena in vitro, in which microscopic conventional cell-culture methods could not. Human pluripotent stem cells (hPSCs) are advantageous over cell lines and primary cells for their use in BoC development because of their capability of unlimited self-renewal and differentiation into almost any kinds of tissue cells. Until now, we were able to establish a collection of BoC platforms, including eye corneal barrier, liver and cancer-heart interaction. In this section, we introduce on-going trends and our recent development of BoC platforms

To Japanese Contents / To English Contents