Chemical Sensors
Vol. 37, No.3 (2021)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサ技術と社会貢献

株式会社タニタ 代表取締役社長

谷田 千里

この度、化学センサ研究会副会長を務めさせていただくことになりました。タニタの社長就任後、今回で2度目となります。歴史ある研究会ということで大きな責任を感じておりますが、本会の発展のために微力ながら全力を尽くす所存でございます。皆様からのご指導、ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
 就任にあたり、ご挨拶を申し上げます。タニタではこれまで、「はかる」を通して世界の人々の健康づくりに貢献していくことを理念とし、「健康をはかる」計測機器の開発・販売に取り組んで参りました。"人生100年時代"といわれる昨今、「健康寿命の延伸」は個人にとってもまた社会にとっても非常に重要なファクターとなります。これからタニタが取り組むのは、健康づくりを通して世界の人々が「幸せを感じられる」社会をつくっていくことです。
 タニタでは、化学センサの技術を使った商品を多数販売しています。その中でもアルコール検知器は、社会貢献に寄与する商品だと考えております。タニタにおけるアルコール検知器の歴史は長く、1999年に、アルコールと上手に付き合う健康飲酒を提案する機器として、半導体センサを搭載したアルコールチェッカーをいち早く一般向けに発売したのが始まりです。当時はまだアルコールを測定する機器は珍しく、また、数値化してわかりやすく表示したことにより、爆発的なヒット商品となりました。2012年には、燃料電池式センサを搭載した検知器を、事業用自動車 (トラック、バス、タクシー等)向けに発売しました。この当時から、飲酒運転による悲しい事故が多発していたことから、飲酒運転事故撲滅と、アルコールとの上手な付き合いの促進を目的として、2015年4月に日本初のアルコール業界団体「アルコール検知器協議会 (J-BAC)」をタニタの発案で設立しました。当時は4社でスタートしましたが、2021年5月時点で加盟社が23社にまで拡大しております。
 アルコール検知器業界が大きく動いたのは、2018年のヒースロー空港での飲酒問題のときです。これは、日本の航空会社の副操縦士が、乗務前の呼気検査で現地基準を大幅に超えるアルコールを検知され、英警察に逮捕された事件です。これを発端に、各航空会社で操縦士や客室乗務員のアルコールに関する不適切な事案が相次いで発覚しました。これらの問題を受け、各航空会社では乗務前後のアルコール検査の規定値を厳格化したり、検査手法を改善 (検査漏れ対策や顔認証システムの導入)したりするなど、再発防止への取り組みが加速しました。現在では自動車 (貨物、旅客)、航空、船舶、鉄道の全ての業界で、アルコール検査が義務化されています。
 また、記憶に新しいところでは、今年の6月に、千葉県八街市で小学生5人が白ナンバーのトラックにはねられて死傷したという、痛ましい事故があります。報道では、このトラックのドライバーから基準値を超えるアルコールが検出され、酒の影響か居眠り運転のような状態だったとされていました。この事故を受け、警察庁は、白ナンバー (自家用)の車を業務で使う事業者に対し、アルコール検査を義務付ける方針を固めたとのことで、今後飲酒運転対策の強化が図られるものと期待されます。
 さて、新型コロナウイルスによる混乱が続き、今まで当たり前であった生活が一変する中で、運動不足や過剰飲酒による健康被害が懸念されております。ワクチン接種後の状況も見えない中、CO2センサやアルコールセンサ、ウィルス検知が可能なバイオセンサ等、化学センサニーズは急拡大しており本会の役割はますます重要なものになっていると感じます。
 本会を産学官の密接な連携の懸け橋として、皆様と一緒に化学センサ分野をさらに発展させていきたいと考えております。

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トピックス

有機分子触媒を使った電気化学センサと医薬品分析

佐藤 勝彦a, b、柏木 良友c

a 東北医科薬科大学薬学部
〒981-8558 宮城県仙台市青葉区小松島4-4-1
b 鶴岡工業高等専門学校
〒997-8511 山形県鶴岡市井岡字沢田104
c 奥羽大学薬学部
〒963-8611 福島県郡山市富田町字三角堂31-1

Electrochemical Sensors Using Organocatalysts and the Electroanalysis of Pharmaceuticals

Katsuhiko SATOa, b, Yoshitomo KASHIWAGIc

a Faculty of Pharmaceutical Science, Tohoku Medical and Pharmaceutical University
4-4-1 Komatsushima, Aoba, Sendai, Miyagi 981-8558, Japan
b Department of Creative Engineering, National Institute of Technology, Tsuruoka College,
104 Sawada, Inooka, Tsuruoka, Yamagata 997-8511, Japan
c School of Pharmaceutical Sciences, Ohu University
31-1 Misumido, Tomita-machi, Koriyama, Fukushima 963-8611, Japan

Electrochemical measurements are simple to execute and suitable for use in clinical settings. In particular, biosensors based on enzymatic reactions have high substrate specificity and temporal resolution derived from the enzymatic reactions, which enables highly reliable and rapid measurement without pretreatment. However, these sensors are less versatile because of the poor long-term stability and high cost of enzymes. We propose that the enzyme-free electrochemical sensing based on organocatalysts such as nitroxyl radicals and its application to the electroanalysis of pharmaceuticals.

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温度変調駆動を用いた粒子表面機能の増強による半導体ガスセンサの高性能化

末松 昂一、渡邉 賢、島ノ江 憲剛

九州大学・大学院総合理工学研究院
〒816-8580 福岡県春日市春日公園6-1

Superior Performance of Gas Sensing Properties by Enhancement of
Particles Surface Function Based on Thermal Modulation Driving

Koichi SUEMATSU, Ken WATANABE, Kengo SHIMANOE

Department of Advanced Materials Science and Engineering,
Faculty of Engineering Sciences, Kyushu University
6-1, Kasuga-koen, Kasuga, Fukuoka 816-8580, Japan

Gas sensing performance of semiconductor gas sensor can be improved by not only the materials design but also the sensor driven mode using thermal modulation. Recently, we investigated the effect of instantaneous thermal modulation, which is switching the heater on/off (pulse-driven mode), using miniaturized gas sensor constructed with microheater and a pair of electrodes such as MEMS device. Pulse-driven mode, including the high-temperature preheating process, improved the particles surface functions such as adsorption function of gas molecules and oxygen dissociatively adsorption. Accordingly, pulse-driven mode enhanced up the sensor response and gas selectivity of the semiconductor gas sensors. Furthermore, we achieved the ppt level toluene detection by combining the sensor materials and driven designs.

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