Chemical Sensors
Vol. 37, No.2 (2021)
Abstracts
化学センサの将来
株式会社リケン
技術統括本部 技術戦略部長
(化学センサ研究会 副会長)
小 野 敬
この度、化学センサ研究会の副会長を拝命し大変光栄に思うとともに、その責任の重さを強く感じております。微力ではありますが今年から2年間、副会長として本会の発展のために尽くして参りますので、ご指導、ご鞭撻の程何卒宜しくお願い致します。
まず、リケンについて紹介します。戦前に理化学研究所でピストンリングの製造方法が発明され、事業化されたのがリケンの始まりです。ピストンリングは自動車エンジンの中でも最重要なキーパーツであり創業から94年経った現在も国内で40%強のシェアを維持しており、今日の自動車産業発展に大きな役割を果てしてきたと自負しております。
次に、リケンと化学センサとの関わりについてご紹介します。弊社はピストンリングから事業化を始めて、その後多くのエンジン部品、自動車部品について事業化して参りました。1980年代には事業ポートフォリオ拡大のために非自動車分野への参入を図って参りました。その中の一つが化学センサであり、1990年代初めにはMRIが設置されている部屋の酸素濃度をモニターする酸欠警報器を上市しました。その後、弊社の主力である自動車事業への展開を図るために、自動車排気ガス中の低濃度NOxを検出するための車載用NOxセンサの開発を進めて参りました。NOxセンサは残念ながら事業化に至りませんでしたが、国内のセンサメーカーが事業化に成功し、グロ-バルに展開されております。
また、自動車に目を向けると、NOxセンサより以前に自動車排気ガスを低減するための三元触媒システムに空燃比検出センサが実用化されました。自動車産業発展にピストンリングがその一役を担ってきたと述べましたが、化学センサにおいても今日の自動車産業発展に大きな役割を担ってきたと考えます。
自動車においては脱炭素化に向けて電動化の流れが加速してきており、100年に一度の大きな変革期に入りました。自動車の動力源が電動化されると、エンジン、排気システムは不要となり、弊社の主力製品のピストンリングやλセンサ、NOxセンサ等の排気ガスセンサは使われなくなります。そのため、弊社のみならず自動車メーカ-各社は生き残りをかけて次世代自動車製品の研究開発を精力的に進めております。一例ですが、燃料電池車のような水素をエネルギーとした自動車の普及に向けた開発が加速しており、水素センサ等の新たな化学センサが自動車に適用されつつあります。このように、化学センサは次世代自動車に欠かせない製品として、自動車産業の次の100年においても大きな貢献をするものと期待しております。
更に、自動車分野以外においても新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の拡大防止対策としてCO2センサのニ-ズが急速に高まり、ニューノーマルにおいても化学センサは重要な役割を果たしていくものと考えております。
上述したように、ここ4~5年の間においてビジネスや市場を取り巻く環境が目まぐるしく変化し、今までの価値観やビジネスモデルが通用しない「VUCA」の時代が到来したと言えます。将来の予測が困難な
「VUCA」の時代に取り残されないために、市場や環境の変化を迅速に察知・行動する力が求められていくと考えます。
化学センサ研究会の皆様とは、自動車産業の次の100年に向けた新たな取り組みをはじめとした産業界発展に貢献する先進的な研究開発について議論、研鑽を重ね、「VUCA」の時代における化学センサの更なる発展を一緒に担っていきたいと思っております。
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バイオ材料の特性を活用した高感度電気化学バイオセンサシステムの開発
有本 聡
パナソニック株式会社
テクノロジー本部 マテリアル応用技術センター
〒619-0237 京都府相楽郡精華町光台3-4
Development of Highly-Sensitive Electrochemical Biosensing
Systems Utilizing the Characteristics of Biomaterials
Satoshi ARIMOTO
Panasonic Corporation, Technology Division,
Applied Material Technology Center
3-4 Hikaridai, Seika-cho, Soraku-gun, Kyoto 619-0237, Japan
Designing biosensors, it is important to select the appropriate material and detection method according to the characteristics of the target molecule. We have developed a new sensing technology using ionic liquids for sensor applications. In this article, we introduce the results of applying measurement technology that utilizes the characteristics of various biomaterials such as enzymes, antibodies, and DNA aptamers to medical analysis of body fluids, detection of explosives, dangerous drugs and viruses.
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表面電気化学を駆使した高感度分析法及び
新規炭素系電極触媒の開発と実分析への応用
松浦 宏昭
埼玉工業大学 工学部 生命環境化学科
〒369-0293 埼玉県深谷市普済寺1690
Development of Highly Sensitive Analytical Methods with
Novel Carbon Electrode Materials Fabricated by Surface
Electrochemical Techniques and their Practical Applications
Hiroaki MATSUURA
Department of Life Science & Green Chemistry, Faculty of Engineering,
Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji, Fukaya, Saitama 369-0293, Japan
In this article, the working principle of the highly sensitive analytical methods by using electrochemically activated carbon electrodes is described, and then the practical applications of proposed analytical methods to determine inorganic compounds are introduced. The first content consists of carbon material surface terminated with other atoms containing functional groups such as amino group or tightly immobilized electrodeposited platinum nanoparticles on nitrogen-containing functional groups introduced carbon electrode material, which can control electro-catalytic activity, and are used to detect various electroactive chemicals. The second content describes electrochemical sensors based on the batch injection coulometry by using our proposed electrode materials, which exhibited absolute determination of hydrogen molecule and chlorine dioxide in practical fields.
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