Chemical Sensors
Vol. 36, No.4 (2020)
Abstracts
データ駆動型研究開発の重要性
産業技術総合研究所
極限機能材料研究部門 研究部門長
松原 一郎
我が国の国際的な産業競争力が低下している中においても、強みとして維持しているのが材料・素材分野である。強みをさらに強化するという観点で、2020年4月に「マテリアル革新力強化のための戦略策定に向けた準備会合」が設置され、経済産業省と文部科学省が連携して、統合イノベーション戦略2020および第6期科学技術基本計画への打ち込みを視野に入れた検討が行われた。2020年6月にはマテリアル革新力強化のための政府全体の戦略策定に向けた基本的な考え方、および今後の取組の方向性等が提示され、この内容を含む統合イノベーション戦略2020が2020年7月に閣議決定された。この中で、我が国が戦略的に取り組むべき基盤技術として、「マテリアル」が、「AI技術」、「バイオテクノロジー」、「量子技術」と並んで、新たに位置づけられた。この「マテリアル」の中には、データを基軸としたマテリアルDX (デジタル・トランスフォーメーション)プラットフォームの実現に向けた研究開発を産学官の協力で進めることが目標として明記されている。より具体的には、産学官から良質なデータが効率的・継続的に創出される仕組みを持つ、我が国全体としてのプラットフォームを構築するという構想が、2020年末を目途に決定される見込みである。
産総研では、上記政府の方針に沿って、データ駆動型研究開発の基盤となるマテリアルデータの中核拠点・ネットワークを形成すべく議論を行っているところであるが、データ駆動型研究開発は、センサ材料の開発においても重要な役割を果たすと考えられる。近年マルチセンサを利用した各種ニオイ成分の識別に対して大きなニーズがあるが、その識別精度を上げるためには、マルチセンサを構成する個々のセンサ素子の検知特性の多様性が重要である。各ガス種に対する応答特性が異なるセンサ素子を組み合わせることが必要であるため、個々のセンサ素子には、他のセンサ素子にはない特徴的な応答特性を有することが求められる。データベースとAI技術は、その様なセンサ素子の開発に役立つものと考えられる。個々のセンサ素子の応答特性をデータベース化し、AI技術を活用することで、識別の高精度化のために必要となる応答特性を持つセンサ材料が提案できれば、センサ材料の開発が加速されると共に、それに止まらず、マルチセンサを構成するセンサ素子の組み合わせの最適化も迅速に実現できると考えられる。この際、公表されているデータベースの活用も必要であるが、ポイントとなるデータは自ら取得し、これを知的財産として保護することが肝要である。データベースは、大別すると人類の知の蓄積としてのデータベースと、材料や製品開発に資するデータベースの2種類があると考えている。前者は、例えば結晶構造等ですでにシステマティックにデータベース化されており、公開されている。一方、後者は保護すべきものであり、我が国の材料開発における産業競争力強化に資することになる。この保護すべきクオリティーの高いデータベースを如何に早く構築するかが、センサ材料開発における鍵となる。今後、我々は効率的なセンサ応答データの取得システムの構築とデータのプラットフォーム化に注力したいと考えている。データベースとAI技術を活用した触媒の開発事例は報告され始めているが、化学センサ分野においても、従来にない革新的なセンサ材料とそれらを利用したマルチセンサが生み出されることを期待している。
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CMOS集積回路技術を用いたオンチップ光・電気イメージセンサ研究
德田 崇a、 横式 康史a、 太田 淳b
a東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1-S9-11
b奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 物質創成科学領域
〒630-0192 奈良県生駒市高山町8916-5
On-Chip Opto-Electric Image Sensors Based on CMOS Technology
Takashi TOKUDAa, Yasufumi YOKOSHIKIa, Jun OHTAb
aLaboratory for Future Interdisciplinary Research of Science and Technology, Institute of Innovative Research,
Tokyo Institute of Technology
2-12-1-S9-11 Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8550, Japan
bDivision of Materials Science, Graduate School of Science and Technology,
Nara Institute of Science and Technology
8916-5, Takayama-cho, Ikoma, Nara 630-0192, Japan
This article describes sensor devices and systems based on CMOS electronics technology. Taking advantage of ultra-fine-structured electric integrated circuit and various circuit technologies, CMOS-based on-chip sensor can be a promising platform for bio- and electrochemical- sensing techniques. Concept and technical approach for the technology will be described.
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金属酸化物メモリスタによるセンサ時系列データの特徴量抽出とそのにおいセンシングへの展開
岩田 達哉a、吉河 武文a、澤田 和明b
a富山県立大学 工学部 電気電子工学科
〒939-0398 富山県射水市黒河5180
b豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系
〒441-8580 愛知県豊橋市天白町雲雀ヶ丘1-1
Metal Oxide Memristor-Based Feature Extraction
from Transient Sensor Output
and Its Application to Electronic-Nose
Tatsuya Iwataa, Takefumi Yoshikawaa, Kazuaki Sawadab
aDepartment of Electrical and Electronic Engineering, Toyama Prefectural University
5180, Kurokawa, Imizu, Toyama 939-0398, Japan
bDepartment of Electrical and Electronic Information Engineering, Toyohashi University of Technology
1-1, Hibarigaoka, Tempaku-cho, Toyohashi, Aichi 441-8580, Japan
Electronic-nose (e-nose) has been widely applied to various fields including food, cosmetics, agriculture, and environmental monitoring. With the recent development of internet of things technology, the requirements to e-nose become highly diverse: high discrimination performance, miniature size and low power operation so that they can be installed in wireless sensor network (WSN). For these requirements, e-nose can utilize transient sensor output to enhance its discrimination performance. In this study, we propose a metal-oxide memristor as a device that enables low-calculation-cost feature extraction from the transient sensor output, which is desirable for e-nose installed in WSN. First, the concept of feature extraction from transient sensor output by a memristor is introduced. Then, a feature extraction test by a memristor was carried out. Using acetone and ethanol as test gases, the transient sensor outputs were input into the memristor under the condition that the sensor outputs for these gases in their steady states were similar to each other. Then, the resultant resistances of the memristor were different between the test gases, whereby the promising property of memristor as a feature extraction device from transient sensor output was demonstrated. These results lead to the development of a novel hardware which enables feature extraction with low calculation cost in e-nose system.
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