Chemical Sensors
Vol. 36, No.2 (2020)

 

Abstracts



巻頭言

貴金属が持つ可能性

田中貴金属工業株式会社 執行役員
PGMカンパニー ヴァイスプレジデント
(化学センサ研究会 副会長)

道前 彰彦

この度、化学センサ研究会副会長を拝命いたしました田中貴金属工業㈱の道前彰彦です。微力ながら会員の皆様のご協力をいただきながら責任を果たして参りたいと思いますので宜しくお願い致します。2019年は元号が「平成」から「令和」へ改正。活気づくと予想された東京オリンピックイヤー2020年が始まった矢先に「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」の発生。ご承知の通り、東京オリンピック2020は延期、日本及び世界経済に対する影響としては執筆している現時点では全く見通しがつかない状況です。本誌が発行される頃には情勢が好転している事を切に願います。
 話は変わりますが、田中貴金属グループについて少しご紹介させて頂きたいと思います。田中貴金属グループは1885年 (明治18年)の創業以来、貴重な資源である「貴金属」に特化し幅広い分野で活動して参りました。現在では当社事業を「産業用」「資産用」「宝飾用」と3つのカテゴリーを柱とし、事業運営を行っております。一般消費者の皆様には「資産用」「宝飾用」カテゴリーにて「TANAKA」の名前をご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、本誌読者の皆様と多く関わりがある「産業用」カテゴリーに関しては自動車、電化製品、通信機器に加え近年ではクリーンエネルギー、リサイクル、ナノ・バイオテクノロジー、医療関連分野へと活躍の場を広げています。
 ここで需要が高まり続ける貴金属需要の特性について簡単にご説明させて頂きたいと思います。貴金属元素は「Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os」の8元素。周期表のほぼ中心に位置します。隣接している事もありその化学的、物理的、機械的性質は類似傾向にありますが個々の元素にはそれぞれ特徴があります。Auは良好な展延性、耐腐食性から電子部品、医療関連、宝飾品へと。また、その光り輝く美しさから古代より富や権力の象徴として人々に愛され続けています。Agは室温において電気伝導率、熱伝導率及び可視光線反射率が金属の中で最大であるという特性から電子部品に欠かす事ができません。白金系貴金属であるPt、Pd、Rhが持つ触媒能力は自動車排気ガスの浄化を始め多方面で応用されています。以上の様に貴金属が持つ特性をあげれば枚挙にいとまがございません。
 ご存じかとは思いますが、これら貴金属は化学センサとも密接な関係にあります。主な化学センサ関連製品適用例としては半導体式、接触燃焼式、MEMS式、及び電気化学式にPt、Auをはじめとする多くの貴金属が使用されています。貴金属に共通して求められる点は化学的安定性、熱耐久性、容易な加工性。要求される特性が強度であればPt系、導電率であればAu系と代用の利かない部材として活躍しています。また要求される形状は多種多様です。当社は化学センサ向け部材の形状としてはワイヤ、ペースト、スパッタリング用ターゲット等様々な顧客ニーズに応じております。
 昨今ではセンシングデバイスの微小化を目的とし、貴金属部材においても同様の対応を求められています。ワイヤを例に取ると要望される線径は“最小10μmレベル”と肉眼では確認の難しい線径サイズです。これらへの対応はセンシングデバイスの微小化はもちろんの事「材料購入費自体の低減」「低消費電力化」が望めます。当社としましては微小化の際に耐久性を保持できる高強度材料を提供していく事がサプライヤーとしての責務の一つと考えております。
 センシングデバイスの微小化は搭載される製品自体の小型化に繋がり、数多くの製品が小型化/低消費電力化とへと進めば最終的に地球環境保全に寄与する事に繋がります。これは当社の経営理念でもある「ゆとりある豊かな社会の実現と美しい未来に貢献」に通ずるものと思います。無限の可能性を持つ貴金属。貴金属という側面から化学センサ研究会に少しでも尽力できればと考えております。

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トピックス

表面プラズモン共鳴センサを用いた匂い分子の超高感度検出に関する研究開発

小野寺 武

九州大学大学院システム情報科学研究院情報エレクトロニクス部門
〒819-0395 福岡市西区元岡744

Research and Development of Surface Plasmon Resonance Sensor
for Ultra-Highly Sensitive Detection of Odor Substances

Takeshi ONODERA

Faculty of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University
744 Motooka, Nishi-ku, Fukuoka 819-0395, Japan

This article overviews a surface plasmon resonance (SPR) sensor using antigen–antibody interaction for detection of odor substances. Sensor surfaces and detection protocols for odor molecules were mainly developed for field use. Different sensor surfaces, which all include variations of a self-assembled monolayer containing oligo (ethylene glycol), dendrimer, and hydrophilic polymer, were developed. The development of monoclonal antibody for low molecular weight substances, sampling processes for odor molecules, and a protocol for the measurement of odor substances with the SPR sensor, the results of demonstration experiment are introduced.

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ビーズ型半導体式ガスセンサの駆動温度による検知機構の開発

栗林 晴美

NISSHAエフアイエス株式会社 技術部 技術一グループ
〒532-0027 大阪市淀川区田川2-4-28

Development of Detection Mechanism Devised on
Driving Temperature of Bead Type Semiconductor Gas Sensor

Harumi KURIBAYASHI
Nissha FIS, Inc. Gas Sensing Technology Development
2-4-28 Tagawa, Yodogawa-ku, Osaka 532-0027, Japan

The bead-type semiconductor gas sensors we developed are characterized by excellent thermal responsiveness. Based on this characteristic, these sensors periodically change the element temperature, detect methane at high temperatures, and detect CO at low temperatures. This article describes additional technologies that can supplement and improve gas identification, detection accuracy, and durability of sensor elements, which were disadvantages of previous gas sensors by processing and analyzing the high and low temperature sensor signals obtained by this drive or a slightly different drive. This technology is expected to be applied not only to bead-type semiconductor gas sensors, but also to small sensors such as MEMS sensors.

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