Chemical Sensors
Vol. 36, No.1 (2020)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサ研究会の目指すところは?

化学センサ研究会 副会長
フィガロ技研株式会社  代表取締役社長

天本 太郎

この度化学センサ研究会の副会長を拝命いたしました。数年前にも副会長として研究会の事業に携わらせて頂き、微力ながらその職責を遂行させて頂きました。今回も新たな気持ちで会の運営に関わらせて頂きますのでご支援のほどよろしくお願い申し上げます。フィガロ技研のガスセンサとの関わりを少しご紹介させて頂きます。弊社はガスセンサの専業メーカーとしてスタートし、現在はガスセンサ素子とセンサ駆動回路付ユニットに特化して「世界地域展開」・「センサ品種拡大と深耕」、「ニッチ分野のガスセンサユニット」を三本柱にした展開を図っております。ガス種につきましては1970頃の祖業でありますプロパン (LP)・都市ガス漏れ警報器用センサから1986年以降のCO警報器用センサ、車載用/居住用の空気質センサとモジュール、そして2000年ころからのフロン漏洩検知センサへと進んできました。これらのガス種向けのセンサは数量的にも需要が大きく弊社の主力となっています。地域的には日本国内からスタートして、北米、欧州、中国、韓国へと事業展開し、国内売り上げは飽和状態である中で2000年以降海外でのビジネスが過半を占めるようになりました。また、ガスセンサユニットでは自動車室内の内外気切替、業務用エアコンのフロン漏洩検知、そしてアルコールチェッカーのような特定のニッチ分野でのシェアを得てきました。このような事業展開を進めるうえで最も重要なことは、顧客が求める性能を持つセンサをリーズナブルな価格でタイムリーに、そして高品質で如何なる納期・数量にも対応できる体制を確立することであるということを学んできました。特に1000万個を超えるユーザー需要に応えるためのQCDSの体制整備は弊社の強みとなっています。このような難しい命題をクリアするうえでキーになるのはセンサの検知原理に立ち返り開発を進めることではないかと感じております。弊社は半導体式からスタートして、最初の焼結型からパイプ基板型、平板型、ビーズ型という形状の多様化や、手作りからスクリーン印刷、そしてMEMSという製法上の進化、さらには接触燃焼式の加熱タイプへとプラットフォームを取り揃えてきました。一方、低消費電力と高精度の要求に対しては電気化学式で対応を、また、フロンやメタン、CO検知には光学式へと方式の範囲を拡げてきました。このようなセンサビジネスの展開の水先案内役として化学センサ研究会では従来の化学センサのテーマに止まらずバイオセンサや新しい原理のセンサのテーマを取り上げて頂いております。そして、さらには物理センサへと垣根を超えた対象を扱う方向を目指すことも重要かと思われます。昨今のIoTやAIによる新しい分野の開拓ではおおくの大手企業や研究機関がそのビジネスの進化を競っていますが、その技術の成否を握るのは検知対象にどのようなセンサを採用するかであると言っても過言ではありません。基本的にIoTやAIはセンサからの信号をどう扱うかの技術ですので、如何にして信号を採るかを左右するのはセンサです。これらの応用分野で求められるセンサを開発し商品化することは化学センサ研究会に関わっておられる大学や研究機関、そしてその関連企業であることは間違いないと感じています。このような社会の要請に応えてゆくことがこれからの化学センサ研究会の大きな使命であろうかと感じており、そのような目をもって新しいセンシング技術の探索と育成にいくらかでも尽力したいと考えております。

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トピックス

新機能を付与したタンパク質とDNAの
特異な反応を利用するバイオセンサ

長谷部 靖

埼玉工業大学工学部生命環境化学科
〒369-0293 埼玉県深谷市普済寺1690

Biosensors Based on Unique Reaction of Proteins
and DNA with Novel Functions

Yasushi HASEBE

Department of Life Science and Green Chemistry, Faculty of Engineering, Saitama Institute of Technology,
1690 Fusaiji, Fukaya, Saitama 369-0293, Japan

We developed novel biosensing principle based on unique reactions of proteins and DNA. First challenge is an intermediate regeneration of oxidase induced by appropriate reducing reagent, which is useful for signal amplification and enhancing the sensitivity of O2-electrode-based biosensor. Second challenge is a functional conversion of copper-oxidases (amine oxidase and galactose oxidase) by extrinsic ligands (i.e., histidine and histamine). These ligands lead change in coordination structure of active center of copper-oxidases, resulting in enhancing ascorbate oxidase activity of copper-oxidases. This phenomena can be used for the determination of histidine and histamine. Third challenge is hemeprotein-catalyzed electrocatalytic reduction of O2, which can be used for amperometric determination of not only O2 but also respiratory toxins (e.g., CN- and N3-). Final challenge is a peroxidase-mimic catalytic activity of DNA-Cu(II) complex, which is useful for the electrochemical determination of H2O2, oxidase substrates and DNA-binding drugs.

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特異的表面構造を有する鉄系複合酸化物微粒子を用いた
ガスセンサの開発

小畑 賢次、松嶋 茂憲

北九州工業高等専門学校
〒 802-0985 福岡県北九州市小倉南区志井 5-20-1

Development of Gas Sensor Based on Alkaline Earth Metal Ferrites
with Specific Surface Structure

Kenji OBATA and Shigenori MATSUSHIMA
Department of Creative Engineering, National Institute of Technology (KOSEN), Kitakyushu College,
Shii 5-20-1, Kokuraminami-ku, Kitakyushu 802-0985, Japan

This research aims to develop novel gas sensor based on alkaline earth metal ferrites (AFe2O4: A = Ca or Mg) for sensing CO2 or CO gases. We determined that Si- or Zr-containing CaFe2O4 particles had a porous structure, whereas the crystallite growth of MgFe2O4 powder was remarkably suppressed by adding lanthanoid atoms (Ln = La, Sm, and Dy). In the initial stage, we examined the sensing properties of CaFe2O4 for CO2 gas. The CO2 sensitivity of the 5 mol% Zr-added CaFe2O4 sensor reached maximum at 300°C and 350°C, which we estimated to be 2.6 times higher than that of pure CaFe2O4. Furthermore, we prepared MgFe2O4 nano powder by addition of Ln atoms, as a CO sensing material. The addition of La considerably enhanced the MgFe2O4 sensor’s CO sensitivity. Of the La-doped sensors investigated, the sensor with 7.5 mol% La-doped MgFe2O4 showed the highest sensitivity in the operating temperature between 300°C and 350°C. At 300°C, the sensitivity to CO gas was estimated to be 11.2 times higher than that of the sensor fabricated using pure MgFe2O4 powder.

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