Chemical Sensors
Vol. 35, No.1 (2019)
Abstracts
化学センサ研究会の更なる発展に向けて
化学センサ研究会会長
筑波大学数理物質系・教授
鈴木 博章
本年度から化学センサ研究会の会長を務めさせていただくことになりました。私は東京大学の物理工学の出身で、学生時代は超高真空の物理、原子・分子の衝突論の研究を行っておりました。その後、㈱富士通研究所に就職し、1年だけ超伝導デバイスの研究を行った後、諸般の事情によりバイオセンサの研究を始めることになりました。それが結局ライフワークとなり、筑波大学に移った後、現在まで続いています。それまで、化学センサとは無縁の分野を転々としてきましたが、その頃得たノウハウを活かし、1980年代中頃から、当時東京工業大学の資源化学研究所におられた軽部征夫先生のご指導もあり、微細加工技術を用いた電気化学センシングデバイスの微小化を中心的なテーマとして研究を進めてきました。
私の化学センサ研究会との関わりは、35年前の1984年に長津田の東京工業大学で開催された第4回化学センサ研究発表会での発表が最初になります。化学・バイオセンシングデバイスの微小化は、現在では世界中で誰でも行うような時代になっていますが、当時、この種の研究を行っているグループは、世界的にも非常に限られていて、学会発表をしても、異端的に見られているような雰囲気を強く感じておりました。しかし、化学センサ研究会では、そのようなテーマでも受け入れてくれる居心地の良さは感じておりました。15年前には研究業績を評価していただき、清山賞を受賞させていただきました。
現在、元会長の清水先生、前会長の丹羽先生とともにSensors and Actuators Bのエディターを務めています。最近の投稿数の増加は顕著で、年間に掲載される論文数も1000を軽く超えています。ここまで掲載論文数の多い論文誌を見つけるのは容易ではありません。Impact factorも現時点で5.67であり、今後着実に上がり続けることは確実です。これは、化学センサ研究の世界的な高い活性度を端的に表しています。しかし、喜んでばかりもいられません。近年、どの論文誌の目次を眺めても、大半の論文は中国発です。一方で、日本発の論文を見つけるのは容易ではなく、我が国が世界的な上昇傾向についてゆけていないことを強く感じます。この流れを何とか変えたいところですが、残念ながら、現在、運営費交付金の削減、人員削減、雑務の増加等の影響で、国内の大学の研究環境は総じて悪く、影響力のある研究にじっくりと取り組める状況にはなっていません。
我が国以上に科学技術に重点的に予算をつぎ込んでいる勢いのある諸外国を前に、金と人では太刀打ちできないと感じているのは私だけではないと思います。科学技術は川のごとく基礎から応用へと流れ、拡がってゆきます。センサのように実用化が最終目標となるテーマでは、もちろん応用研究が主となりますが、上流のより基礎に近いところから影響力のある新技術を開発し、先手を打って、我が国が独占的に有利に進められるような新しいテーマ、分野、製品を開拓・開発する戦略が、個人のみならず、分野としても今後益々重要になってくるのではないかと思います。この点において、ニーズとシーズのマッチングは重要です。ニーズにうまくマッチした製品は順調に伸びてゆきますし、インパクトのある研究はニーズと密接に関係しています。秘密保持という壁もあり、容易ではありませんが、化学センサ研究会の良いところは、民間企業の会員の方が多く在籍し、活発に活動されている点です。大学と企業がともに考える場がこの研究会を基礎にしてできればと考えています。ご協力をお願いします。
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内部電解質および液絡を有するスクリーン
印刷型銀/塩化銀参照電極
古茂田 将人、星 芳直、四反田 功、板垣 昌幸
東京理科大学大学院理工学研究科先端化学専攻
〒278-8510 千葉県野田市山崎2641
Screen-Printed Silver/Silver Chloride Reference Electrode
Having Inner Electrolyte Layer and Liquid Junction
Masato KOMODA, Yoshinao HOSHI, Isao SHITANDA, Masayuki ITAGAKI
Department of Pure and Applied Chemistry, Faculty of Science and Technology,
Tokyo University of Science, 2641, Noda, Chiba 278-8510, Japan.
Screen-printed reference electrode is highly attractive attention for practical applications such as environmental monitoring and biosensors because the screen-printed reference electrode can be fabricated with low cost, high reproducibility in large amount. Many researchers have been investigated the constituent material and structure of the screen-printed reference electrode to realize short set-up time and long lifetime. In the present paper, we introduce the recent researches of the screen-printed silver/silver chloride reference electrodes.
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AI技術を活用した微生物の菌種判別 -
コロニーフィンガープリンティング
前田 義昌、松永 是、田中 剛
東京農工大学・大学院工学研究院・生命機能科学部門
〒184-8588 東京都小金井市中町 2-24-16
Discrimination of Microorganisms with Artificial
Intelligence - Colony Fingerprinting
Yoshiaki MAEDA, Tadashi MATSUNAGA, Tsuyoshi TANAKA
Institute of Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology,
2-24-16, Naka-cho, Koganei, Tokyo 184-8588
Artificial intelligence (AI) technology potentially enables automatization of intellectual labor including biological testing such as microbial discrimination that usually requires a well-trained operator. Since there is increasing interest in food-safety, demand for rapid, easy and inexpensive methods for microbial testing is on the raise. We have proposed a novel method for microbial discrimination based on bioimage informatics approach, referred to as “colony fingerprinting”. In colony fingerprinting, growth of micro-sized colonies of target microorganisms are monitored using a wide-field-of-view lens-less imaging system. The obtained images, termed colony fingerprints, were used to extract a number of discrimination parameters refracting image features of colony fingerprints. Machine learning methodology, an AI technology, is applied to discriminate the species of the target microorganisms by analyzing the discriminative parameters. In this article, we highlight the advantage of colony fingerprinting, and discuss the future perspectives.
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