Chemical Sensors
Vol. 34, No.4 (2018)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサ研究会今昔

創価大学理工学部 教授

久保 いづみ

1983年9月 福岡でInternational meeting on Chemical Sensorsが開催された。この国際会議で筆者は初めての国際会議参加、そして初めての英語での口頭発表をした。このときの演題は”Hybrid Biosensor for Clinical Analysis”であった。ここでの発表内容は後に筆者の学位論文の一部になった研究であるが、当時は先のことなど考えてはおらず、発表をやりとげなければという思いのみであった。筆者は生物系の学部を卒業後、企業の研究所に就職し、血糖計 (グルコースセンサ)の研究を手始めにこの分野に入った。会社に勤務しながら、大学の研究室に研究生として出入りさせていただき、国際会議では、この研究室での研究を発表したのだが、生物系出身の筆者は、聞いたこともないような専門用語の中で繰り広げられるディスカッションに圧倒された。この国際会議のorganizing committeeには化学センサ研究会を立ち上げられた先生方が名を連ねておられたが、自分自身が化学センサ研究会と長きにわたる関わりを持つことになるとは想像すらできなかった。
 この当時は、そもそもこの分野でどこまで研究を続けていくかということすら自分自身にまっとうなビジョンはなく、化学センサ関連の先達の適切な指導のおかげで、このような道を歩むことになり、有難いことであったと思う。
 1980年代は世にバブルと言われる時代であったが、筆者自身はこのバブルを個人の生活で感じたことは全くない。しかし、この国際会議の3年後1986年に学位をいただくことができ、学位を取得したことで1989年に現在所属している大学に、助手や講師の経験もないのに助教授として採用していただくことができたという意味ではバブリーな時代であったのだと振り返って思う。
 そしてこの時代は研究の分野でも短期的な視野で世の役に立つことを求めない研究ができるだけの余裕があったと思う。
 筆者は学位取得後しばらくセンサの研究からは離れていたのだが、大学に職を得たことで、再びセンサの研究を始めることになった。そして、91年1月の化学センサ研究会で発表させていただいて以降、この研究会との関わりが再び始まった。
 本稿を執筆するにあたり、筆者が保存している資料をひもといたところ、1993年4月の第16回化学センサ研究発表会のときのプロシーディングがあった。筆者はこの研究会では発表はしていないが、プログラムを見ると、長く活躍されて現役を退かれた先生方のお名前と同時に、現在も化学センサ研究会を支え、活躍されている先生方のお名前が多いことに感銘を受けた。この会が多くの研究者に活躍の場を提供しつづけてきたことが垣間見える。また、先生方のご努力があって化学センサ研究会が継続的な発展をしてきたことが伺われる。
 もうひとつ、驚いたことがある。このプロシーディングにこの時の電気化学会の大会参加費と化学センサプロシーディングの領収書が挟まれていた。電気化学会の大会参加費は5000円であり、現在の参加費の約半額である。一方化学センサ研究会のプロシーディングスは現在と全く変わらない4000円であり、発表の形態、プロシーディングの様式等があまり変わらないことから考えると、いかに事務局が努力されているかが推察される。
 化学センサ研究会は電気化学会の中の研究会のひとつではあるが、昨今の発表は必ずしも電気化学を要素技術としない化学センサの研究発表も見受けられ、筆者もその一人である。筆者のような浅学の徒を暖かく受け入れ、支えていただいたこの研究会に感謝するとともに、時代の声に呼応した様々なタイプのセンサの研究を発表できるような懐の深い研究会であり続けていただけることを祈念して本稿を締めくくりたい。

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トピックス

六方晶窒化ホウ素を用いる起電力式
アンモニアガスセンサ

板垣 吉晃

愛媛大学大学院理工学研究科物質生命工学専攻
〒790-8577 愛媛県松山市文京町3

Potentiometric Gas Sensor Using Hexagonal Boron Nitride

Yoshiteru ITAGAKI

Department of Materials Science and Biotechnology,
Graduate School of Science and Engineering, Ehime University
3 Bunkyo-cho, Matsuyama, Ehime 790-8577

Hexagonal boron nitride (h-BN) was used as an auxiliary electrode of YSZ-based potentiometric sensors for selectively detecting NH3 gas. Coating a Pt sensing electrode on a YSZ substrate with h-BN powder enlarged the sensor response to NH3. The ball-milling treatment of the h-BN powder in ethanol further enlarged the sensor response. On the other hand, milling in water decreased the sensor response. Loading Ag and RuO2 on the h-BN particle effectively enlarged the sensor response. 20 wt%h-BN/Al2O3 composite electrode was found to be useful to discriminate NH3 from H2.

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分子インプリント高分子を用いた治療 モニタリング(TDM)用センサ

吉見 靖男

芝浦工業大学工学部応用化学科
〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5

Development of Sensors Using Molecularly Imprinted Polymers
for Therapeutic Drug Monitoring

Yasuo YOSHIMI
Department of Applied Chemistry, Shibaura Institute of Technology
3-7-5 Toyosu Koto-ku, Tokyo,135-8458

Therapeutic drug monitoring (TDM) is required for chemotherapy in which both of overdose of underdose pose the fatal danger. TDM requires sensors which can detect drugs in blood rapidly with simple operation. A molecularly imprinted polymer grafted on electrode has several advantages for application as a sensor for TDM.

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