Chemical Sensors
Vol. 34, No.3 (2018)
Abstracts
半導体ガスセンサの材料設計について考える
九州大学大学院総合理工学研究院 教授
島ノ江憲剛
皆さんがご存知のように、金属酸化物を用いた半導体ガスセンサは1962年に九州大学の清山哲郎先生とフィガロ技研の創業者である田口尚義氏から報告されている。清山先生は酸化亜鉛、田口氏は酸化スズを用いているが、そのバックグラウンドは大きく異なる。清山先生はガスクロの検出器、田口氏はガス漏れ警報器として、研究開発を行っている。センサ材料の設計という観点から、これら二つの材料には大きな違いがある。酸化亜鉛と酸化スズの酸塩基性(電気陰性度)を比較すると、酸化亜鉛の方が強い塩基性を示し、酸化力が強い。このような金属酸化物の酸化活性違いは、1975年に長崎大学の江頭誠先生から報告されているプロペンの酸化活性に見ることができる(長崎大学工学部研究報告, 6 (1975) 129.)。これは金属酸化物の酸化活性を考える基礎的なデータであるが、最近のセンサ材料の研究を見ると、この基本的な考えが忘れ去られているように思える。その一方で、新しいことも見出されつつある。それは、酸化物の結晶面の影響である。最近の巧みな材料合成方法により、特定の結晶面を多くもつ酸化物が合成され、特異なガス応答が見られるようになってきた。さらに、酸化物の種類による酸素吸着種の違い、酸化物の熱履歴による酸素吸着量の違いなども今後の材料設計に大いに役立つと思われる。 半導体ガスセンサの材料設計因子として、上記のレセプター機能以外に、トランスデューサ機能と利用効率がある。トランスデューサ機能は粒子サイズ効果として認知されているが、粒子サイズが小さいだけではその機能は発揮されない。空乏層形成にはドナー濃度も深く関わっており、粒子サイズとドナー濃度の両者を制御しなければならない。サイズとして“ナノ“を強調する例があるが、果たして”トランスデューサ機能はあるのか?“と考えさせられる。しかし、トランスデューサ機能を発揮しそうにない、直径数十nmの酸化物ワイヤーでも比較的高いセンサ応答を示すことがある。これは、利用効率の向上によるガス拡散の影響と考えられる。センサ膜がポーラスな構造であれば、被検ガスが膜全体に拡散しやすくなり、センサ感度は上昇する。実際に、同じ材料で同じ膜厚の緻密膜とポーラス膜を作製し、比較的分子径の大きなガスを用いてセンサ応答を調べると、ポーラス膜は桁違いに高いガス応答を示す。この点でワイヤー状の酸化物はユニークなセンサ特性を持つと考えられ、是非ともトランスデューサ機能と利用効率の両面からの詳細な解析を期待したい。 さて、愚痴っぽいことを述べたが、ガスセンサの研究では如何に実用化に近づけるかが重要であることを、多くの著名な先生方が示されている。素子の電気抵抗や感度の安定性、湿度などの他ガスの影響、素子の製造コスト、測定回路の価格など、いろいろな課題が挙げられるが、これらはセンサ材料の設計に依存する。最近、IoTのためのセンサが話題になっているが、これこそそれらの課題をすべて克服しなければならない。加えて、消費電力の問題もある。センサをマイクロ化して消費電力を低減するという報告もあるが、問題はシステム全体の電力消費、特に駆動と無線通信の回路における電力消費は素子加熱の電力消費と比べ桁違いに大きいことはあまり知られていない。これは、センサ材料の設計とは直接的に関係しないが、センサ素子の電力消費を議論する上で知っておく必要がある。これらのことを考慮した上で、最終的に実用センサとして世の中に送り出したいと考えている。
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尿によるガンのファーストスクリーニング
武田 康太、中村 暢文
東京農工大学・大学院工学研究院・生命機能科学部門
〒184-8588 東京都小金井市中町 2-24-16
First Screening Test for Cancer Using Urine
Kouta Takeda and Nobuhumi Nakamura
Department of Biotechnology and Life Science, Tokyo University of Agriculture and
Technology
2-24-16, Naka-cho, Koganei, Tokyo 184-8588
The first cancer screening test for urinary L-fucose as a tumor maker is of clinically importance because concentration levels of L-fucose in urine are increased in the patients with pathologic disorders such as liver cancer. We have developed an amperometric biosensor with a novel pyrroloquinoline quinone (PQQ)-dependent pyranose dehydrogenase (CcPDH) derived from the basidiomycete Coprinopsis cinerea, based on a direct electron transfer (DET) between the enzyme and electrodes. In order to overcome the interference effect of ascorbic acid present in urine, an isolated PQQ domain was immobilized on electrodes. The enzyme electrode able to detect L-fucose at a lower redox potential than that of ascorbic acid oxidation and while eliminating interference effects.
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ナノカーボン電極の開発と電解質溶液中での
酸化開始電位の解析
冨永 昌人
佐賀大学・教育研究院・自然科学域理工学系
〒840-8502 佐賀県佐賀市本庄町1番地
Preparation of Nano-carbon-Modified Electrode and
Its Oxidation Onset Potential in an Electrolyte Solution
Masato Tominaga
Graduate School of Science and Engineering, Saga University
1,
Honjo-machi, saga 840-8502
Carbon is widely used as a platform electrode for many fields. There are many types of bulk and nano-carbons such as glassy carbon, graphite, carbon nanotubes, graphene, and carbon black. We have used various types of nano-carbon as a functionalization material of electrode surface for developing enzymatic biofuel cell and enzymatic biosensor. Here, I describe briefly our findings about single-walled carbon nanotube-modified and nano-carbon composite electrodes.
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