Chemical Sensors
Vol. 33, No.4 (2017)

 

Abstracts



巻頭言

分析機器に求められる技術と産学連携

京都電子工業株式会社
執行役員 技術開発本部本部長
(化学センサ研究会 副会長)

川口 賢治

大変恐縮なのですが、8 年前 (25 巻3 号) にも巻頭言を執筆させていただきました。その中で、センシング技術の実用化ということについて、それを目指す企業と大学等の研究機関との認識の違いについて意見させていただきました。その後、年月が経過しましたが、状況はそれほど変わってきたとは思えません。革新的な技術や高度な設備を駆使した研究は注目を浴びるし、華やかですが、長期にわたる耐久性に関する研究、加速試験の妥当性を評価する研究、適切なバルブ・チュービングなどの周辺素子に関する研究などは依然として稀であると言わざるを得ません。したがって、独自の研究開発によって、センシング技術の実用化を行っていかなければならない状況が続いています。化学センサ研究会では、「センシング」というカテゴリーは馴染み深いものですが、「分析機器」という切り口では必ずしもそうとはいえないかもしれませんので、この機会に、弊社が求められている技術の一端を紹介させていただきます。
 京都電子工業は分析機器の専門メーカーです。弊社が販売するほぼすべての製品は化学物質の濃度、物質の物理量、熱物性等を高精度に測定するためのものです。測定対象 ( 試料) は液体、固体、気体のすべてに及び、濃度レベルも% オーダーからppb オーダーまで、測定環境も実験室レベルからごみ焼却場などの高温環境までと非常に幅広くなっています。使用現場は、お客様の工業製品の品質を管理する品質管理部門、基礎研究のための研究機関、屋外環境、排ガスをモニターしているごみ焼却場、工場廃液出口、プロセス制御を行っているプラント、健康に影響する環境のモニター現場などで、分析機器によって測定される数値には非常に高い信頼性が要求されます。誰がどこで測っても同じ数値が測定されることも大事で、ほぼすべての分析機器を高度に自動化しているのはそのためです。自動化のための周辺技術も重要です。要求される測定精度も年々高くなってきています。では、測定値の信頼性はどのように保証していくのでしょうか。それは国家標準とのトレーサビリティーの確立です。分析機器の健全性は社内検査によって保証されていますが、使用現場で確認する場合には、国家標準にトレーサブルな標準物質そのものが必要になってきます。例えば、弊社では物理量の一つである液体の密度、および、屈折率を測定するための分析機器がありますが、超高精度なリファレンス分析装置を開発し、密度標準液と屈折率標準液を提供できるようにしました。これらのリファレンス分析装置は製品の原理とは異なり、校正液として使用される純水さえも値付けできる絶対測定装置なのです。これらの装置は産総研の協力を得て開発が行われ、日本で初めて密度標準液と屈折率標準液の提供を可能にしました。なお、非常に高額な装置なので、製品化は行っていません。 ( 行っても高くて売れません。)
 これまで現場の要求に応えるために様々な技術開発を行ってきましたが、周辺素子の問題で実用化に至らなかった技術も少なからずあります。一企業だけではカバーしきれない技術も、産学連携による実用化技術までも含めた総合的な取り組みが解決してくれる可能性はあります。以前の巻頭言の繰り返しにはなりますが、実用化のための地道な研究を含めたアプリケーションオリエンテッドな研究の重要性を皆が理解し、十分な研究資金と研究者が高い評価を受ける環境の構築が不可欠です。しかしながら、現時点では、大学の研究資金として減少化してきている運営費交付金と重要分野に集中しがちな科研費の中で、実用化のための産学連携をどのように進めていくかが課題解決の一つなのでしょう。

To Japanese Contents / To English Contents


トピックス

セラミックスデバイスによる環境イオンセンシング

清水 陽一

九州工業大学・大学院工学研究院・物質工学研究系
〒804-8550 福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1

Design of Environmental-Ion Sensor Based on Ceramics

Youichi SHIMIZU

Department of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Kyushu Institute of Technology
1-1 Sensui-cho, Tobata, Kitakyushu, Fukuoka 804-8550

Novel concepts environmental-ion sensor devices have been proposed based on a transducer function of chemical sensor which mainly prepared by using ceramic-based materials, such as solid-electrolyte, mixed oxides, etc. Based on the ceramics, amperometric-, electrochromic-, and impedancemetric- types of ion sensors could be investigated. Amperometric sensor using carbon-based electrodes loaded with Co based perovskite-type oxides showed anodic current responses, which increased with increasing concentration of hydrogen-phosphate ion. More improved thick- or thin- film perovskite-type oxide sensor devices showed higher sensitivity and high anion selectivity with fastest response time to HPO42-. It was firstly found that an electrochromism of oxide thin-film could be used as an high sensitive sensor signal. NiO, Co3O4 thin-films could be used as electrochromic type hydrogen-phosphate-ion sensors. A solid-electrolyte ion sensor device using a Na+-ion conductor (Na5DySi4PO12) as an impedancemetric transducer and a perovskite-type oxide thin-film as a receptor, respectively, has been also developed. The AC impedance responses of the device were found to vary logarithmically with increasing K2HPO4 concentration between 1.0 x 10-5 and 1.0 x 10-2 M at 10 kHz.

To Japanese Contents / To English Contents


プリンタブルエレクトロケミストリーによるバイオセンシングデバイス

四反田 功

東京理科大学・理工学部・先端化学科
〒278-8510 千葉県野田市山崎2641

Electrochemical Biosensing Devices based on Printable Electrochemistry

Isao SHITANDA
Department of Pure and Applied Chemistry, Faculty of Science and Technology,
Tokyo University of Science, 2641, Yamazaki, Noda, Chiba 278-8510 Japan.

This article introduces electrochemical devices based on “Printable Electrochemistry”. I show our recent progress in the field of screen-printed electrochemical devices, such as paper-based biosensors, reference electrodes and self-powered wearable biosensors. These devices will provide a novel insight into future healthcare tools.

To Japanese Contents / To English Contents