Chemical Sensors
Vol. 33, No.3 (2017)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサの実装化について

日本特殊陶業株式会社 顧問 技監

大島 崇文

本年度から副会長を務めさせて頂くことになりました。化学センサ研究会には、30 年程前からお世話になっています。当社では固体電解質のジルコニアを用いた酸素センサを長年研究開発してきましたが、先々の厳しい排気ガス規制に対応するため、HC やNOx、アンモニア等を直接検知出来るガスセンサを新規開発するため、検知原理・材料を広く見直す必要があり、当研究会に参加し大学或いは公立研究所の先生方との共同研究を通し、様々なご指導を頂きました。ただ開発目標のセンサは自動車用途が主体で、温度変化、湿度 ( 水分量) 変化、妨害ガス、被毒物質による劣化等センサにとって厳しい条件の中で、センサ信号の再現性、安定性、劣化モード予測、長期耐久信頼性保証等製品実用化への課題が多く、選択出来る検知原理、材料がかなり制約されるというジレンマとの闘いだった事を思い返します。
 自動車のパワートレインのトレンドは、リーマンショック後100 年近く主流を占めた内燃機関 ( エンジン) から電動化へと大きくシフトしつつありますが、自動車用排気ガスセンサに求められる要件は、基本的には環境或いは人体に対し影響のある有害排気ガス (HC、NOx、PM 等) の削減を目指す、触媒を含む排気ガス後処理システムの技術動向に大きく影響されたと思います。例えばNOx は、当初は実験室レベルの数千万円する高額な分析計でしたが、簡易でポータブルな分析器へ、更には小型センサへと移行し、年間数千万本使用される車載センサへと実装化が進む事で、環境保全に寄与していると思います。
 昨今話題のIoT (Internet of Things) の流れを振り返ってみますと、1990 年頃にはユビキタス社会、所謂「いつでも、どこでも、何でも、誰もが」ネットワークに繋がる事により、物と物、人と物、人と人が繋がる社会‐‐が提唱されました。海外では2011 年ドイツでIndustry 4.0 が提唱され、その後アメリカではIIC (Industrial Internet Consortium) が始動し大きなトレンドが形成されました。それらを受け、日本では2016 年政府の総合科学技術・イノベーション会議で「超スマート社会の実現を目指すSociety 5.0」が第5期科学技術基本計画の中で提唱されました。しかしユビキタス社会からSociety 5.0 に至るまで共通基盤技術としてのセンサの重要性は不変ですし、ここ10 ~ 20 年で「スマートセンサ」を実現させるための要素技術も目覚ましく発展しています。低消費電力で高性能な半導体技術や、微小なエネルギーを利用する環境発電 ( エネルギーハーベスティング) 技術や、無線通信技術等周辺技術の進化により、更に社会への実装が近くなっていると思います。
 化学センサは自動車用途に限らず様々な用途に使用される可能性を秘めていますが、一方多くの種類の化学物質の中から特定物質の濃度を測定する難しさも持っています。しかし高機能の分析計からスタートした技術は、簡易分析器、更には小型センサ、ウエアラブルセンサ、バイオセンサ等へと、センサ素子だけでは無くAI を含む各種要素技術と協調、連携しながら、超スマート社会に広く使われるようになって行く事を期待したいと思います。

To Japanese Contents / To English Contents


トピックス

ボロンドープダイヤモンドパウダー (BDDP)を用いたセンサデバイス開発

近藤 剛史

東京理科大学・理工学部・先端化学科
〒278-8510 千葉県野田市山崎2641

Development of Sensor Devices Using Boron-Doped Diamond Powder (BDDP)

Takeshi KONDO

Department of Pure and Applied Chemistry, Faculty of Science and Technology, Tokyo University of Science
2641 Yamazaki, Noda, Chiba 278-8510

This article reports on boron-doped diamond powder (BDDP) for electrochemical sensing devices. The BDDP can be prepared by BDD deposition by chemical vapor deposition (CVD) method on an insulatingdiamond powder. An ink containing BDDP and polyester (PES) resin binder was printed on a polyimide substrate by screen printing to fabricate a BDDP-printed electrode. The BDDP-printed electrode was shown to be a disposable sensitive electrochemical electrode exhibiting large signal-to-background (S/B) ratios. The BDDP-printed electrode was demonstrated to be applied to a glucose sensor by the modification with glucose oxidase and cobalt phthalocyanine as an electrocatalyst for hydrogen peroxide oxidation. PES/BDDP ratio in the ink was found to be a key factor to control the diffusion mode at the electrolyte/electrode interface. The BDDP-printed electrode with a large PES/BDDP ratio (1.0-2.0) should be a promising disposable sensitive electrode exhibiting remarkably large S/B ratios.

To Japanese Contents / To English Contents


ゴーストサイトメトリー
機械学習が駆動する高速“イメージング”フローサイトメトリー

太田 禎生

科学技術振興機構・さきがけ専任研究者
東京大学・大学院工学系研究科・客員研究員
シンクサイト株式会社
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1

Ghost Cytometry
Machine-learning driven image-free “imaging” flow cytometry

Sadao Ota
JST, PRESTO
Department of Engineering, University of Tokyo
Thinkcyte Inc.
Hongo 7-3-1, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033

As a mixture of advanced imaging, microfluidic, electrical and information technologies, we recently developed an ultrafast image-free fluorescence “imaging” flow cytometry, which we named ghost cytometry. As an alternative to conventional image generation and processing using human’s limited knowledge and capability, our approach utilizes optics as a part of the computational machinery of compressing and processing massive imaging data at unprecedentedly high throughput.

To Japanese Contents / To English Contents