Chemical Sensors
Vol. 29, No.2 (2013)
Abstracts
安全・安心を考える
矢崎エナジーシステム株式会社
ガス機器事業部 ガス機器開発センター長
石黒 義昭
2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、人々の安全・安心に対する意識は大きく変化した。安全・安心と一言で表すといささか抽象的だが、幸福な社会発展を継続させる重要なキーワードと考える。人間生活の基本は「衣食住」と言われるが、衣は体を守ること、食は運動機能を維持すること、住は生活することであると読替えれば、「衣食住」を安定且つ高いレベルで維持することこそ、安全・安心の基幹であるとも考えられる。これまで様々な安全・安心を目指した取組がなされ、私達の生活に不可欠な製品やサービスが提供されているが、今後もより高度化していくものと考えている。 その中で化学センサに着目してみると、この分野も安全・安心のニーズから研究開発が推進され、発展してきた技術であると言えるのではないだろうか。古くから、「衣と住」に貢献する防災機器用のデバイスとして実用化され、時代と共にその役割が大きくなるとともに、形を変えて進化を続けている。
防災機器に組込まれ、一般に普及している化学センサの代表としてガスセンサがある。「安全・安心」の取組として実用化されたガスセンサの歴史は古く、1800年代初頭、炭鉱坑内の爆発事故防止のために考案された油安全燈から始まり、現在でも広く普及している接触燃焼式ガスセンサが開発され、インフラ整備もほぼ整った1970年代には、一般家庭用の警報器として酸化スズ型の半導体センサが導入され始めた。センサ技術と共に警報器や検知器の小型化、高精度化がなされ、1980年の静岡駅前地下街のガス爆発事故以降、その事故防止措置に有用とされたガス警報器の普及が格段に進んだ。一方で、ガス漏れ以外の安全機器用途としてもガスセンサは活躍の場を広げた。一般家庭に給湯器が普及し始めると、一酸化炭素中毒事故が頻発し社会問題となった。その事故防止を目的として燃焼排ガスの不燃状態を直接検知可能なCOセンサ内蔵の給湯器が1990年代に実用化された。
ガスセンサの技術革新は目覚ましく、ひとつのセンサで異種ガス(メタン、一酸化炭素)を検知できる半導体センサも登場し、これまで独立した機器であった火災警報器とガス警報器の機能を合わせ持つ画期的製品である火災ガス複合警報器が実用化された。この機器は、社会ニーズである「安全・安心」の高度化に加え、安価もプラスされた製品として現在の警報器のハイエンドモデルとなっている。また最近では、MEMS技術を応用した小型、超省電力のガスセンサの技術開発も盛んに進められており、エレクトロニクス技術の進歩と共に省エネ設計の防災機器が多く実用化されてくると確信している。 以上のような防災機器としての位置づけを担うガスセンサの他、最近は「食の安全」についても化学センサの有効性が期待されている。人々の正常な生命活動にとって重要な「食」は、健康維持の根源でもあり、近年人々の意識と関心は非常に高まっている。これまでに開発された味覚や鮮度を数値化するセンサに加え、病原性微生物による食中毒防止判定が可能なバイオセンサの開発が望まれており、これまで以上に医療や健康志向ニーズに対応していくことが重要となってくる。住環境における快適環境やアレルギー源となる物質の見える化も期待される分野であると考える。
このように、化学センサに期待される分野は拡大し、それに応えることが私達の使命ではないかと感じている。日々高度化される周辺技術を採り入れながら、環境、防災、医療分野における「安全・安心」社会の確立を目指し、より一層努力していきたいと考えている。
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迅速、簡便、高感度なバイオセンシングシステムの構築
安川 智之
兵庫県立大学大学院物理学研究科
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
Development of Rapid, Simple and Highly-sensitive Biosensing System
Tomoyuki YASUKAWA
Graduate School of Material Science, University of Hyogo
3-2-1, Kouto, Kamigori, Ako, Hyogo 678-1297
The article reviews the development of biosensing systems with rapidity, simplicity and highly-sensitivity based on a scanning electrochemical microscopy (SECM), dielectrophoresis and chemical amplification method. SECM has been applied to image the distribution of molecules in the localized area and quantify the activity and function of single cell. Dielectrophoresis has been used to fabricate pattern with particles and cells and applied it to develop a simple and rapid immunosensing system. A novel immunosensing method has been developed on the basis of the sensitive determination of a product generated by an enzyme reaction with dual amplification system combining an electrochemical-redox cycling and coulometric signal transduction using a galvanic cell.
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水晶振動子センサに関する基礎的研究とその非線形化学振動反応への応用
吉本 稔
鹿児島大学大学院理工学研究科情報生体システム工学専攻
〒890-0065 鹿児島県鹿児島市郡元1-21-40
Fundamental Study of Quartz Crystal Microbalance and Its
Application to Nonlinear Chemical Oscillation Reaction
Minoru YOSHIMOTO
Department of Information Science and Biomedical Engineering,
Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University,
1-21-40 Korimto, Kagoshima, 890-0065 Japan
Quartz crystal microbalance (QCM) is a useful device for a chemical sensor and a biosensor. Recently, it has been developed as a rheometer of a soft matter. In this paper, in order to promote utilization of QCM, the dynamic property of a soft matter on the solid-liquid interface oscillating at MHz was investigated in detail. We used polyethylene glycol (PEG) as a soft matter and systematically varied the number-average molecular weights (Mn) of PEG molecules over 4 orders of magnitude. This study makes it clear that the series-resonant frequency shift, △F, of QCM against the square root of the density-viscosity product of a PEG solution is linear and has the intercept. Moreover, systematical analysis reveals that the △F slope rapidly decreases with Mn and that the △F intercept becomes constant above 4.0×103 g/mol. As a result, those reveal that the resonant length of PEG molecules moving with the oscillating plate of 9 MHz is 5.4 nm. We also find that the behaviors of △F due to Mn are mainly caused by the length of the PEG molecule.