Chemical Sensors
Vol. 27, No.2 (2011)
Abstracts
ガスセンサビジネスへの取り組み
フィガロ技研株式会社 代表取締役社長
(化学センサ研究会 副会長)
天本 太郎
フィガロ技研の創立は1969年で、当時はベンチャー企業のはしりとしてマスコミの話題にのぼることもありました。会社の寿命30年といわれる中で2011年10月には創立42周年を迎えることになりますので、創業メンバーやその後の成長に貢献された方々、また応援して下さいました皆様に対しましては、一企業として存続させて頂いていることに感謝の念を感じざるをえません。
フィガロ技研の最初の製品は、1960年の山中湖でのプロパンガス爆発事故をきっかけにガス漏れ検知機器の開発を思い立った創業者の田口氏により発明された半導体式ガスセンサです。同氏の頭文字をとってTGS□□□(Taguchi Gas Sensor)が商品名として広く知られています。同時期に全くフィガロ技研とは別にガスセンサの開発に成功された当時九州大学の清山哲郎先生とは特許面での競争はあったものの、ご両名の協力の下、まもなく産学協同の雛形として「新規発明品の商業化の成功」と「学術面での新しい学問分野の創造」がなされたことは注目される成果であったと言えましょう。
このガスセンサの商品化によってガス漏れ警報器が世に広く普及しガス漏れ事故の発生件数を着実に減少させてきたという実績は、ガスセンサの保安商品としての存在意義を確立したものと思われます。
半導体式ガスセンサに始まった事業は、家庭用ガス漏れ警報器用センサとして、創業当時の手作りセンサから1990年以降は機械化による印刷タイプの小型・低消費電力化した均質な量産品へと進化して、現在では究極の微細化センサとしてのMEMSタイプが世に出つつあります。一方、センサの応用機器によっては、コストメリットがあるものの、半導体式ガスセンサでは、精度上その要求を満たせない場面も多くなり、半導体式から電気化学式への転換を余儀なくされるケースも多くなってきています。例えば、1990年半ばに北米で大きなマーケットが形成された家庭用の一酸化炭素警報器市場では、市場の立ち上げ時期にはコスト面での制限から半導体式のCOセンサが採用されましたが、市場のCO警報器に対する要求はコストだけではなく、信頼性に対して厳しい目が向けられるようになり、最終的には低コストの電気化学式センサが市場を席巻するという結果となりました。また、将来的には光学式のようなもう一歩進んだ技術の導入も求められるのではないでしょうか。
このように半導体式ガスセンサに限って見ても常に市場の要求は高度化して、かつセンサ価格が低下するという道を辿りますし、応用面から見ると一つの方式では対応が出来なくなり異なる原理・方式へのシフトが求められることもしばしば起こります。
ガスセンサビジネスへの取り組みということから弊社のこれまでの経験を挙げさせていただきましたが、その過程においてセンサのプラットフォームを進化させる、或いは異なる方式のガスセンサに間口を拡げる際に、学術面での理解を抜きにこれらを成功させることは叶いません。弊社も化学センサ研究会はじめ化学センサ関連の学会への参加や発表の機会を通じて、多数の先生方や関連企業の研究者の皆様のご指導やご助言を受けることにより、化学センサへの理解を徐々に深めてゆくことが出来たようです。
今後の大きな流れとしては、より幅広い検知方式のセンサに商業的価値を付加して新しいガスセンサとして上市する、または全く新しい原理のセンサを提案する方向の努力を続けてゆきたいのですが、従来のガスセンサという領域から一歩踏み出した領域を目指したいと考えます。今回は化学センサ研究会の副会長という大役を仰せつかりましたが、弊社の創業当時の「産学協同」を模したようなビジネスでの成功と化学センサの学術的進歩を融合させるという視点での活動が出来ればと念じつつ任期を務めさせて頂く所存です。
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マクロ分子界面の構造と機能の構築と
定質という新しいセンサ技術への発展
春山 哲也
九州工業大学大学院生命体工学研究科生体機能専攻・教授
〒808-0196 福岡県北九州市若松区ひびきの 2-4 北九州学術研究都市
Physical- and Functional- Fabrication of Bio-Macro-Molecular Interface
and Its Application for Epoch Sensor Technology
Based on The Concept of Qualified Analysis
Tetsuya HARUYAMA
Bioelectronics Division, Department of Biological Functions and Engineering,
Kyushu Institute of Technology (KYUTECH)
Kitakyushu Science and Research Park, Hibikino, Wakamatsu-ku,
Fukuoka 808-0196, Japan
Efficient biological reaction, i.e. specific affinity and catalysis, can be combined with electrochemical reaction. The scheme has been employed in order to fabricate various biosensors. I the cases of the bio-macro-molecular interfaces, there are two interfaces on an electrode; a solution phase-enzyme layer interface and an enzyme layer-electrode interface. The interfaces act as a chemical reaction interface and a physicochemical reaction interface respectively. However, the interfaces at bio-macro-molecular layer are the key of late-limiting part respectively in whole reaction through the molecular interfaces. The author has studied the functional and physical structures of macromolecular interfaces in bioelectronics properties and others. The designed molecular interfaces also have been applied for new types of sensors, such as seamless cellular biosensor. In the article, author will provide current development about molecular interface and its application for biosensor designing.
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化学工学の視点に基づいた人工臓器制御用バイオセンサの開発
吉見 靖男
芝浦工業大学工学部応用化学科
〒135-8548 東京都江東区豊洲 3-7-5
Development of Biosensors for Controlling Artificial Organs
Based on Chemical Engineer's Point of View
Yasuo YOSHIMI
Department of Applied Chemistry, Shibaura Institute of Technology
3-7-5 Toyosu, Koto-ku, Tokyo 135-8548
This paper is a review of my Seiyama-prize-winning works of biosensors for control of artificial organs. High stability and robustness against sterilization are required for biosensors for artificial organs. However it is difficult for conventional biosensors using enzymes or antibodies to satisfy the requirements. So I paid attention to the gate effect of molecularly imprinted polymers as a principle of new biosensing. I have succeeded in sensing of amino acids, glucose, alkaloids and anti-coagulant (heparin) using gate effects. I believe the gate effect is promising for actualization of monitoring chemical signals for controlling artificial organs.