Chemical Sensors

Vol. 26, No. 3 (2010)


Abstracts


観賞魚飼育と化学センサ

化学センサ研究会 幹事委員  丹羽 修

(産業技術総合研究所 副研究部門長)

 

水戸市に住んでいた1991年より、転勤や転職等で厚木、つくばと2度ほど転居したが、その間20年間、観賞魚の飼育を趣味にしている。メダカや金魚の様な小魚に加え、現在では60cm近くに成長した錦鯉も数尾飼育しているため、水質には特に敏感となる。錦鯉の模様や色は、素質もあるが、水質にもかなり敏感と言われており、綺麗な模様も一夏で見る影もなくなることが良くある。また、サイズが大きくなるにつれ池も過密になり、餌を多く食べる夏場は、水質の急変は致命的である。申し訳ないことであるが、化学センサ国際会議(IMCS)は、いつも7月に開かれる為、講演を聞きながら、実は池の心配をしていることもある。

化学センサの研究開発を長年やっていると、酸素濃度、pH、亜硝酸、硝酸塩、アンモニア、硬度など、水質に関する化学量を気にすればきりがないが、色々と気になってくる。特に毒性の強いアンモニアは、水が澄みわたっていても濃度が高いことがあり、慣れてきた最近では、筆者自身が化学(バイオ)センサ化して、魚の動きや水の匂いで判断できるが、見のがすと大変なことになる。初心者の頃は、とにかく何かおかしいとまず測定するのが無難である。その際、ドイツのT社の比色キットが、良く使われており、様々なキットが発売されているが、全部買うと結構かかるので、コスト削減のため絞り込むことになる。このあたりは、多項目センサ開発にも通じるものがある。

比色キットの使用は、化学実験に慣れた本会の会員の皆様であれば、テレビを見ながらでもできる簡単なもので、飼育水を測りとり、それに指定の試薬を1〜3種類決められた量を加えて反応を待つ。しかしながら、一般人ではミスも多いらしく、薬品の量を間違えて魚を殺してしまったなどと言う話を聞くことがある。また、簡単な測定であっても、出勤前や深夜の帰宅時に異常を見つけた時は、結構面倒なもので、ワンタッチで、同時に多項目が測れないか良く思ったものである。また、使用した器具を洗うのも面倒である。

随分前であるが、本会会員でもある伊藤さん(当時 新電元工業(株))より、pHセンサを頂いたことがある。飼育水を測りとることなく、試薬も不要なため比色より格段に便利で速く、かつ数値で出てくるので化学センサの威力を実感した。また、長く使えば、一測定あたりのコストもかなり安いと感じた。残念ながら、アンモニアなど他の項目を測定できる小遣い程度で買えるセンサは、見つからなかった記憶がある。

本会会員になって、約20年くらいになるが、化学センサの研究開発をやっていても自分がユーザーになって、実際に何かを毎日計測することは、自身が高血糖でもなければ、めったにない。ガス警報器の様にスタンドアローンで、人の手を煩わせないのが良いセンサとすればその為かも知れない。一方、本会も所属している電気化学会の大きな実用的分野である電池は、携帯や子供のゲーム、車(私の車はプリウスです)などで、ユーザーとして、その進歩と問題点を実感する機会はより多い。

化学センサで特に基礎よりの研究開発をやっていると、ユーザーの視点を見落としがちになる。やはり論文が通りやすいのは、超高感度、極めて高い選択性などが優れている研究である。また、多少操作が面倒でも実験室レベルでは、そう苦にならない。しかし実際家庭で使うとなると、その数十分の一の労力でも面倒になることもある。数年前に縁があって臨床検査関連の会と交流する機会があり色々と現場の話を聞くことができた。本研究会でもユーザーの方の講演を拝聴する機会がもっとあっても良いかと感じる。また、実際ユーザーになって見るといろいろ必要な事が見えてくる。一時期問題になったコイヘルペスの影響で、錦鯉の専門誌でも定量PCRの計測法が詳しく解説されている。しかし、家庭で買う人はまずいない。簡単なイムノセンサでコイヘルペスの有無を測定できるキットがあると便利である。趣味のお陰で、研究開発者の立場以外で化学センサを考えることができて幸いである。ただ、家族は電気代、水道料などで大変迷惑とのことである。最後に本研究会の大学、研究機関より多くの使えるセンサが開発され、会が益々発展することを期待します。

 


インジェクションを利用した単一生細胞機能解析

舟橋久景、斉藤美佳子、松岡英明

東京農工大学大学院 工学府 生命工学専攻
〒184-8588 東京都小金井市中町2-24-16

Biofunctional Analysis in Single-Living Cells Using Injection Techniques

Hisakage FUNABASHI, Mikako SAITO, Hideaki MATSUOKA

Department of Biotechnology and Life Science, Tokyo University of Agriculture and Technology 2-24-16, Naka-cho, Koganei, Tokyo 184-8588, Japan

Microinjection is a prominent technique which enables us to introduce various types of substances including chemical reagents, proteins and DNA into individual living cells directly. Our group has developed multi-channel capillaries for microinjection which are capable of measuring cellular potential and introducing substances by electrophoresis at the same time. We have also developed Single-cell Manipulation Supporting Robot which facilitates introducing femto grams of substances into a single cell and thus the injection technique is termed as femtoinjection. With these techniques, biofunctions such as an enzymatic activity, an intracellular signaling pathway, cell-cell communication and a promoter activity were analyzed in a single-living cell manner. The injection technique opens up a novel approach for biofunctional analysis in a single-living cell manner.

 


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