Chemical Sensors

Vol. 26, No. 2 (2010)


Abstracts


夜光塗料技術とガスセンサ

化学センサ研究会 副会長  松澤 隆嗣

(潟lモト・センサエンジニアリング 取締役社長)

 

当社は創業以来夜光時計などに用いる夜光塗料の製造・販売を生業としてまいりました。当初の夜光塗料は、蛍光体に微量の放射性物質を添加することにより夜間も放射線のエネルギーで発光する所謂放射性夜光塗料(自発光塗料)が主体でした。いまではこの放射性夜光塗料の製造は廃止されていますが、夜光塗料で培った@蛍光体の開発・製造技術、A放射性同位元素の取り扱い技術、B精密印刷・塗装技術の3つのコア技術が起源となり、その後の当社の事業が発展してきています。

当社とセンサとの関わりも、古くは蛍光体が放射線で発光する性質を利用して環境放射線や人の被ばく放射線量を計測するためのセンサ材料(シンチレータ、熱発光線量計等)の開発に端を発しています。その後、放射線の電離を利用して煙密度を計測するイオン化式煙センサを開発して欧米等に販売しました。

この煙センサの開発がその後のガスセンサの開発に繋がっていきます。1980年代米国ではイオン化式煙センサを搭載した家庭用煙感知器が大量に販売されていました。主力警報器メーカがポスト煙感知器として注目した防災機器が、ガス爆発事故を未然に防止するための家庭用ガス警報器でした。警報器に関するUL規格やBS規格が整備されるなど、各国で家庭用ガス警報器の規格化が進みました。当社も煙センサに続きガスセンサの市場に参入するため、当時はあまり検討されることのなかった接触燃焼式ガスセンサの優れた特性に着目し、その耐久性能を大幅に向上させた家庭用の接触燃焼式ガスセンサを開発しました。当時はまだ国内に都市ガス警報器の性能に関する規格や試験・評価機関がなかったことから、接触燃焼式ガスセンサを搭載した都市ガス警報器としては世界初となる米国UL規格を取得して、国内外でセンサの販売を開始しました。現在では日本を含めたアジア、欧米市場等で多くのお客様にご利用頂いています。

この民生用接触燃焼式ガスセンサの開発で培った経験、特に品質や信頼性に関するお客さまの要望にお応えするための努力を継続して行ってきたことが、その後の毒性ガスセンサなど各種ガスセンサの開発に大いに役立っています。とくに開発当初は、センサの信頼性や寿命評価技術が確立しておらず、際限のない環境試験や加速試験を繰り返しながら、結果としてお客様と当社の双方による長期間にわたる実環境での実証試験を経てようやく市場でご利用頂くことができました。振り返ってみて化学センサの開発の難しさを改めて痛感しています。信念だけで開発を進めてきましたが、信頼性のより高いセンサを求めて叱咤激励して頂いたガス会社や警報器メーカの研究開発者の皆さまに支えられて今日があるように思っております。

今日、低炭素社会の実現に向けてよりエネルギー効率の高い天然ガスの利用が再認識されています。地球環境保全の面からもガスの利用は拡大していくものと考えられ、その安全利用にガスセンサは不可欠なものとなっています。また、医療・工業用途等にも様々なガス種を選択的に検出するための優れたセンサが必要とされています。ガスセンサのニーズが拡大するとともに、信頼性の向上はもとより、省電力化、集積化など求められる機能もより高度になっていくものと考えられます。我々はセンサメーカとしてこれらの要求に応えながら、少しでも社会の安全・安心に貢献できるセンサの開発と供給を目指していきたいと考えています。

 


セラミックスのメソ・マクロ構造設計手法の確立とガスセンサ材料への最適化

兵頭 健生

長崎大学大学院生産科学研究科・助教
〒852-8521 長崎市文教町1-14

Optimal Design of Meso- and Macro-structures for Ceramic Gas Sensors

Takeo HYODO

Graduate School of Science and Technology, Nagasaki University
1-14 Bunkyo-machi, Nagasaki 852-8521, Japan

Design approaches of meso- and macro-structures for gas sensors were reviewed in this article. We have so far improved gas-sensing properties of varistor-type, semiconductor-type, and diode-type sensors by the modification of the surface and grain-boundary of oxides with some additives, the introduction of mesopores into various oxides by utilizing a self-assembly of surfactant as a template, and the structural and compositional controls of both oxide films prepared by anodization and Pd-based metal electrodes, respectively. The hetero-stacking of oxide films by slide-off transfer printing was also effective in improving the gas-sensing properties of semiconductor gas sensors. In addition, macroporous oxide films have been fabricated by a modified sol-gel technique and a physical vapor deposition process employing a polymetheylmethacrylate (PMMA) microsphere template film, and macroporous oxide powders have been prepared by pyrolysis of an atomized aqueous precursor solution containing an appropriate amount of PMMA microspheres. Their well-developed macroporous materials showed excellent gas-sensing properties in comparison with conventional materials without macropores.


機能化生体分子を利用する新規バイオセンサの開発

長谷部 靖

埼玉工業大学工学部生命環境化学科・教授
〒369-0293 埼玉県深谷市普済寺1690

Development of High Performance Biosensor Using Aritificially Functionalized Biomolecules

Yasushi HASEBE

Department of Life Science and Green Chemistry, Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji, Fukaya-shi, Saitama 369-0293, Japan

We have developed high performance biosensors using chemically functionalized biomolecules and their novel catalytic activities. These biosensors can be divided into three categories; (1) highly sensitive oxidase-biosensors based on reducing reagent-induced substrate recycling from oxidized products and enzymatic-intermediates, (2) novel biosensing strategies based on exogenous ligand-induced novel catalytic activity of active center-modified copper-proteins (i.e., monoamine oxidase and galactose oxidase), and (3) novel biosensors using enzyme-mimic biopolymer-metal complexes [i.e., poly(amino acid)/Cu(II) complex and DNA/Cu(II) complex].


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