Chemical Sensors

Vol. 25, No. 4 (2009)


Abstracts


常にセンスを磨きつつ

大阪大学大学院工学研究科 教授  今中 信人

 

 私と国際会議との最初の出会いはフロリダ、ウエスト・パームビーチのブレーカーズホテルで開催された国際触媒会議であった。当時、私は中学校2年生、父がスタンフォード大学、ブッダ教授の研究室での客員教授としての留学生活を始める際に同国際会議が開催され、私を含め家族4人で学会会場となった同ホテルに宿泊した。朝食のなんと豪華なこと、たくさんのフルーツをはじめとした、さまざまな食べ物が並べられていることに驚きながら、アメリカ合衆国の地力の深さにも感心したことをはっきりと覚えている。

 その国際会議、私も興味がてら、父が出席している学会会場を覗いてみたら、真っ暗な会場にみんな席に座って一方向を見ている。そこにはスクリーンがあり、スライドが映されている。端にはスポットライトが当たった壇上で一人の人が何か喋っている。8月末、真夏のしかもフロリダ、外は快晴で、真夏のアウトドアーを楽しむ絶好の機会なのに、『何と変(奇妙)な集団なのだろう』と感じたのが最初であった。私は当然のことながら暑さを凌ぐために屋外のホテル専用プールに妹とともに飛び込んだのであった(なんと快感なことか)。そのホテルで清山哲郎先生と初めてお会いした。当時は中学生であるので、大学の教授と認識したまでであった。

 清山哲郎先生の研究内容を十分に把握したのは私の最初の国際会議での口頭発表の際であり、この時に私と前後して発表されたのが三浦則雄先生(前化学センサ研究会・会長)であり、化学センサ国際会議の記念すべき第一回目でもあった。考えてみれば、化学センサとの付き合いは大学院生になってからの長い付き合いである。

 ところで、センサは、化学センサと物理センサに大別され、化学センサの『化学』は、表面、界面反応を伴っており、そこでの制御がセンサの鍵を握っている。ここに影響を与えるのがまさしく化学反応であり、化学センサを志す限り、必ず考えないといけないのが、この化学反応であり、その反応式である。そのために大切なことそれは、常にセンスを持ち、日頃からそのセンスを磨くことに尽きる。そうすれば、目を閉じるだけで化学反応(式)が浮かんでくるようになり、また、そのような感も身につくのである。勿論、センスを磨くためには常に直感を磨くことが大切でもあり、常にその感を研ぎ澄ませることが大きな意味をもつことも事実である。

 著書『化学センサー その基礎と応用』(清山哲郎他編、講談社サイエンティフィク刊)の中のまえがきで清山哲郎先生が『化学センサは工夫好きの日本人に向いている』と紹介されている。それから約30年を経ている。もっと工夫を楽しみ、化学センサの『化学』の意味するところに常に接し、楽しみながら、グローバルな地球環境での安全、安心につながる丈夫で長持ちする新しいコンセプトの化学センサが創成されることを願っている。そのためにもセンスを磨きながら、世の中に貢献できる『ジャパンオリジナル』の真の材料を育みたいものである。

常に化学反応を思い浮かべ、センスを磨きつつ。


3価イオン伝導体を用いた低温作動型アンモニアセンサ

永井 つかさ1、田村 真治2、今中 信人3

1大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・博士課程学生
2大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・助教
3大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・教授
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1

Low-Temperature Operative Ammonia Gas Sensor
Based on Trivalent Al3+ Ion Conductor

Tsukasa NAGAI, Shinji TAMURA, Nobuhito IMANAKA

Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering,
Osaka University, 2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan

Solid electrolyte type ammonia gas sensor which can operate at low temperatures was fabricated by combining the Al3+ ion conducting (Al0.2Zr0.8)20/19Nb(PO4)3 solid electrolyte and the rare earth ammonium sulfate, R2(SO4)3・(NH4)2SO4 as an auxiliary sensing electrode. By applying the anhydrate salt having enough thermal stability as the auxiliary sensing electrode, that is R2(SO4)3・(NH4)2SO4, we successfully realized the sensor operation with a theoretical response as low as 230℃.
  


ポリイオンを用いる酵素電極

駒場 慎一、勝野 瑛自、渡辺 真也

東京理科大学 理学部 応用化学科
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3

Enzyme Electrodes Prepared with Polyions

Shinichi Komaba, Eiji Katsuno, and Shinya Watanabe

Department of Applied Chemistry, Tokyo University of Science
1-3 Kagurazaka Shinjuku, Tokyo 162-8601

Polyion complex (PIC) is insoluble polymers formed by self-assembling polyanion and polycation in which functional molecules, such as enzyme, redox species, carbon nanotube, etc., are entrapped for the application of molecular-functional electrochemical devices. This complex has molecular sieving ability depending on its microstructures, therefore, high sensitivity biosensors are fabricated by utilizing the molecular sieve variety of PIC. Furthermore, PIC is applied for enzyme immobilized electrodes for biosensors and biofuel cells. In this paper, we review the recent progress and study on PIC electrodes for biosensors and biofuel cells.
  


To On-line Chemical Sensors Index Page (Japanese)
To On-line Chemical Sensors Index Page (English)