Chemical Sensors

Vol. 25, No. 3 (2009)


Abstracts


センサの実用化技術

化学センサ研究会 副会長  川口 賢治

(新コスモス電機(株) 執行役員 技術開発本部副本部長兼センサ開発センター長)

 

 センサやトランスデューサに関する学会で、長期にわたる耐久性に関する研究報告や、加速試験の妥当性を評価したりするような話題は極めて稀である。大学等の研究機関においては、積極的に研究されていないのが現状である。革新的な技術や高度な設備を駆使した研究は注目を浴びるし、華やかで格好いい。それに比べると一つの技術を実用化レベルに持っていくのは結構地味な仕事である。コア技術は開発できたから、後の実用化は企業がやってくれる、そんな雰囲気を感じることがある。しないのではなく、研究資金も含めて現状のシステムでは困難なのかもしれない。

 弊社は主要な製品の一つとしてガス検知警報器を世の中に提供させていただいているが、このことは人々の生命、安全・安心を守るという社会的に大きな責任を担っていると認識している。確実にガスをセンシングし、危険を知らせる。一日24時間、365日途切れることなく監視を行い、家庭用については5年以上の長期にわたって「確実に危険を知らせる」という機能の信頼性を維持し続けなければならない。多少精度に影響があるとしても、信頼性、確実性が何よりも重要である。新しいセンシング技術や材料が開発され、今までにない素晴らしい特徴を出せたとしても、一か月で特性が変化してしまうのでは製品にはならない。様々な環境条件で長期間の耐久性を評価してみるとうまくいかない場合があり、最初に戻って検討しなおさなければならないことも少なくない。他の分野でも実用化への道のりは簡単ではない。マイクロ化学センサそのものは華やかで格好いいけれど、実用化には様々なパーツが揃っていないと、せっかくのマイクロ技術を活かせないことがある。研究段階では、試料導入部のバルブやコネクタ、マイクロポンプはそのうち誰かが解決してくれるものということで、論議から外されることが多い。でも最後には実用化の最も大きな課題の一つとして残ってしまう。バイオセンサにおける実用化への挑戦も同じ。原理的に素晴らしいものであっても、価格が高ければ、センサチップの再生利用が必要となり、その再生の質が精度に大きくかかわってくる。たとえば、抗原抗体反応を利用したバイオセンサで被測定物質(抗原)の濃度を測定する場合、その一つとして、センサチップに固定化された抗原と被測定物質(抗原)との競合反応の程度をセンシングする方法がある。超高感度検出に成功しても、コスト的な制限や連続測定の必要性などのためにセンサチップを使い捨てにできない場合がある。そのためにはセンサを再生利用しなければならない。ところがこれがそんなに簡単ではない。固定化抗原と抗体との結合が強すぎて再生がスムーズにいかない場合は、折角の高い抗体との反応性を弱めたりすることもある。新品のセンサ性能が素晴らしいにもかかわらず、実用化への大きな障害になる。このあたりの技術も極めて重要であるにも関わらず、余り研究されていないように感じる。 ?

  産学連携の重要性がより大きく謳われてきているが、実用化を目指す企業と大学等の研究機関との間の実用化技術に対する認識の違いは依然として大きい。本当の意味での産学連携をするためには、実用化技術までも含めた総合的な取り組みが必要である。実用化のための地道な研究を含めたアプリケーションオリエンテッドな研究の重要性を皆が理解するだけでなく、十分な研究資金と研究者が高い評価を受けるシステムが構築されない限り、高い動機付けを行うことは難しいであろう。実用化されたときの喜びをともに共有できるような環境づくりに努力していきたい。
  
  


化学情報をノンラベルで画像化するイオンイメージセンサ

澤田 和明

豊橋技術科学大学 電気・電子工学系 教授 JST-CREST
〒441-8580 豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1

Ion Image Sensors for Non-Label Chemical Information Imaging

Kazuaki SAWADA

Toyohashi University of Technology, JST-CREST
Tenhaku-cho, Toyohashi, Aichi 441-8580

A possibility of fabricating a bio-and chemical-sensing devices by LSI fabrication technology has provided. Recently, we have proposed new sensing device field named “Intelligent Bio Sensing Devices”, which is fused technology of bio-sensing and LSI. By using CCD/CMOS image sensor technology, development of an ion imaging system, which is able to observed 2 dimensional ion distribution in real time, is carried out. The state-of-the-art in the image sensor technology is that number of pixels is 20 million pixels and the pixels size is miniaturized less than 2 micron square for consumer use digital camera. The size of our human cell is about 20 μm. It is expected that the LSI technology will be fuse to bio-chemical sensing system.
  


技術戦略マップ2009

矢吹 聡一

産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 主幹研究員
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1

A Glance at "Strategic Technology Roadmap 2009"

Soichi YABUKI

National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
1-1-1 Higashi, Tsukuba, Ibaraki 305-8566

The Strategic Technology Roadmap 2009 (STR2009) was formulated by METI in corporation with NEDO and other agencies. In this manuscript, I introduce outline of the STR2009 on chemical sensors, and my opinion.
  


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