大場 正利
オムロン 技術本部 先端デバイス研究所 所長
(化学センサ研究会 副会長)
産業、医療の発展、生活環境の向上、及び環境問題の深刻化等の観点から、さまざまな物理量センサ、化学センサが開発され、世の中で活用されている。その種類、数量も増加する一途であるが、その反面、世の中で活用できるレベルにするため、解決しなければならない課題は数多くある。つまり事業として辿り着くまでには、いわゆるサバイバルゲームと言っても過言ではない状況である。
新規の発明、発見、またはイノベーションにより産業化を成し遂げるためには、「死の谷」「ダーウィンの海」を超える必要性で例えられているが、これを乗り越えたとしても大替技術、競合、市場の変化などで常に存在価値を求められるのはセンサ実用化とて同じである。
1980年代後半から注目されたMEMS技術も各種デバイスやセンサ応用に限らず、大きな可能性に魅せられて大学、企業で活発に研究・開発が続いている。また産業化に向けては、国家プロジェクト、産学連携等での実現に向けた取り組みも行われているが、実際に商品、事業まで行き着いた実例が少ないのが実情である。
また近年では、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーの将来性と大きな可能性に魅せられて、さまざまな研究・開発が進んでいるが、多分、MEMS技術と同様にデバイス、センサ応用としても産業化への道はさまざまな困難を乗り越えていく必要性を感じる。
このような状況の中、産業界に携わる立場で成功への道を考えると次の3点にポイントを挙げることが出来そうである。@市場を明確にしている。Aコア技術や差異化技術を持っている。B研究・開発者の情熱と確固たる信念がある。当然、これらが全てではないが、少なくとも、この3点がしっかりしていれば商品化、産業化へのハードルはかなり低くなると感じている。
一方、将来(2020年〜2025年)の社会を想定した場合、「安心」「安全」「環境/エネルギー」「健康」分野の画期的な変化が想定される。また、効率や生産性の追求といった工業社会の価値観から、次第に精神的な豊かさを求める方向へと価値観が高まり、「個人と社会」「人間と自然」「人間と機械」が最適なバランスを保ちながら融合していく最適化社会に向かうと考えられる。現在の世界総人口が66億人から76億人(2020年)に増加することも、これらの変化を加速する要因であると想定できる。この将来社会に求められるデバイス、センサを想定してみるのも面白い。例えば「見えなかったものを見るセンサ」「有無検知から成分判別を重視するセンサ」「内部を簡単に検査するセンサ」「エネルギーマネージメントに必要なセンサ」「生活環境を向上・維持するライフアシストセンサ」「ホームドクター用センサ」等である。これらのソーシャルニーズを想像し、現行技術を発展的対比させることで新規のデバイスやセンサ創出の可能性が生まれてきそうである。このような将来を予測し、具現化することに本研究会、並びに化学センサが役立つことで、社会に貢献し続けることを切に願うばかりである。
神田 奎千
新コスモス電機株式会社R&Dセンター
コスモス研究所・上席首席研究員
〒532-0036 大阪市淀川区三津屋中3-6-25
Development of a Semiconductor Type VOC sensor and Its Application to a Portable VOC Analyzer
This paper describes development of a VOC sensor and its application in a portable VOC analyzer.The authors have developed a highly sensitive VOC gas sensor for the detection of VOCs, especially for the aromatic hydrocarbons, toluene, ethylbenzene, xylene and styrene, using a WO3 thick film where catalysts of Pd and Pt were applied to a limited area of the film to effectively promote sensitivity and improve gas selectivity. The fine structure of the film and film thickness has been optimized for the detecting target gases by investigating sensing properties of the films with different grain sizes and thicknesses. The sensor shows extremely high sensitivity to the aromatic hydrocarbon gases with good gas selectivity. And furthermore, the sensor has also been applied to a portableVOC analyzer in conjunction with gas chromatography, and its excellent sensing properties for VOCs have brought a high performance to the VOC analyzer. The target VOCs at concentration level of ppb can be simply measured with the analyzer by directly injecting only 10mL sample into the system without using any sampler to concentrate sample gas, and the concentrations of the target gases are correctly determined by an original quantitative analysis method incorporated in the VOC analyzer system.
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