Chemical Sensors

Vol. 22, No. 3(2006)


Abstracts



ファインダーを通して

石地 徹

蒲搆、計器 恵山製作所 取締役工場長

Through a Finder of Camera

Toru ISHIJI

  テレビで青森の「ねぶた祭り」のニュースが流れる8月初旬の土曜日。朝起きると函館は快晴。一眼レフカメラを持って、昼過ぎのフェリーに乗り込む。津軽海峡を越えると、そこは祭りの真っ只中。ラッセラの掛け声に人が跳ぶ。夜空に映えるねぶたの山車と祭りの雰囲気を切り撮ることができた。私自身、特別に感性が豊かな訳ではないが、カメラを持ちファインダーを覗くことを意識してから、周りの景色が違ってきた。
  ここ函館の工場に赴任したのは昨年の10月末。自分で開発した電気化学式ガスセンサを含めて、各種のガスセンサを生産する現場での指導が役目である。今までとは違った生活(単身赴任)と仕事は、新鮮であり、かつ厳しくもある。冬の寒さも心配であったが、比較的雪の少ない函館は、思ったよりも過ごしやすい。そして、マイナス10度を越す寒さの中、工場まで通う車は素晴らしい景色と遭遇する。海面の水蒸気が冷気で凝縮して「けあらし」と呼ばれる幻想的な霧が海上一面に沸き立つ様である。安全な場所を探して車を停め、助手席のカメラを抱えて寒さの中に出る。気持ちを込めてシャッターを押す。秋には紅葉、春先には野生の馬や鹿が被写体となる。
  カメラというセンシング触媒を手に入れたことで、漠然と見過ごしてしまう景色や人の動きが、味わい深いものとなった。青い空も白い雲も、以前とは違って見えてきた。
 自然の美しさを感じるセンシング部分が一眼レフカメラだとすれば、ガスセンサの開発という仕事の楽しさを教えてくれたのが「化学センサ研究会」。化学センサ研究会と出会うことで、泥臭い仕事だと感じたセンサ開発が、アカデミックな色彩を帯びてきた。化学センサ研究会を知り、化学センサ発表会と夏の泊り込みの研究会の場を通じて、多くの人と知り合うことができた。大学や研究所の先生方のアドバイスを受けて、理論と実践が結びつく楽しさも経験できるようになった。
 編集委員の安斉先生から執筆の依頼があり、「私ごときが」と一度は断った。しかし、「石地さん、もう我々の順番ですよ」と笑われた。そうだ、もう若くはないのだと気づき、化学センサ研究会を大いに活用させてもらったお礼も含めて、ここにまとめた。
  21年前の8月、日航機が御巣鷹山に墜落した悲惨な事故の直後に阿蘇山で開催された化学センサ研究会に、同僚と初めて参加した。羽田から熊本空港までの飛行機の振動におびえたことを覚えている。被害者のご冥福を祈るとともに、そのときの研究会で高名な先生方と楽しく話ができた若き日の興奮を今でも思い出させてくれる、毎年の夏である。  




酸化セリウムを使った高速応答抵抗型酸素センサ

伊藤典哉1、申ウソク2、松原一郎3、村上宣光4

産業技術総合研究所 研究員1、主任研究員2、グループ長3
〒463-8560 愛知県名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2266-98
産業技術総合研究所 総括企画主幹4
〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1

Fast Response Resistive Type Oxygen Sensor Using Cerium Oxide Thick Film

Noriya IZU1, Woosuck SHIN2, Ichiro MATSUBARA3, Norimitsu MURAYAMA4
1-3National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
2266-98 Anagahora, Shimo-Shidami, Moriyama-ku, Nagoya, Aichi 463-8560, Japan
4National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
1-1-1 Umezono, Tsukuba, Ibaraki 305-8568, Japan

  Recentry resistive oxygen sensors have again become the focus of much attention because they have simpler structure and it is easy to downsize them. Here we describe the trend of research and development of the resistive oxygen sensors using cerium oxide, which have a good corrosion resistance to corrosive gases. First, we describe studies on the improvement of response speed on the sensor. Next,we describe studies on the improvement of other sensing properties such as decreace of temperature dependence of output of the sensor and decrease of the resistance of the sensing material.



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