Hikaru YASUHARA
Fujikura Ltd.
最近、MEMSに関して注目が集まっている。こういう新しい研究開発には、盛り上がる時期と熱が冷める時期があって、それが交互にきて、段々とレベルが上がり実用化されていくと考えている。今は盛り上がる時期かと思われる。MEMSには既に製品化された圧力センサ、加速度センサ、インクジェットノズル、HDD用の磁気ヘッドはあるものの、これから花の開くものが多く提案されていて、今はそれらの混在期でもあるような感じがする。
MEMSを使った言葉で、かつ本研究会の活動に近いものとして、ケミカルMEMS、バイオMEMS、メディカルMEMS等との用語が散見される。これらのMEMSにおいては、基本的にはある機能、例えばセンシングする機能、化学反応する機能、あるいは物理的な機能が必要である。また、それが達成される条件である光や熱、温度等の環境を作り出す機能とあいまってその目的を達成する。しかし現状提案されたMEMSに、上記のようなセンシングする機能、化学反応する機能は少ない。単にMEMS技術そのもので上述の機能をおこさせるための場所を提供する、つまり極めてマイクロな構造体を提供する役目だけを果たしているように思われる。確かに、シリコンウェハを使えば、微少なチャンネル、孔、空間等を作り出せ、場合によっては犠牲層エッチングでトンネルも作れる。勿論、光や熱を提供する環境も作れる。本来のMEMSの語源である可動部をそれに組みあわせる事もできる。構造体としての設計だけでも多くのアイデアや知識が必要になることは確かである。しかし、この技術を使えば、場の提供はできるが、化学反応やセンシング機能そのものを発揮する事はあまり期待できない。これから期待する事は、MEMS技術やその材料に、ケミカル的な新機能を付加した融合技術ではなかろうか?
是非、MEMS加工する半導体材料等の材料の持つ特性を利用して、それにある種の化学機能を付加する事を期待したい。センシングも化学的だけでなく、物理的な現象変化も付加して何かできないかである。半導体材料も、今はシリコン中心であるが、他にもある。当社で商品化しているジルコニア酸素センサは、ジルコニアを絶縁体であるとみるより、実用上は半導体としてみる方が便利である。電子技術の分野では、シリコン以外の半導体として、GaAsやInPが発光材料や受光素子として使われている。勿論、それ以外に化合物半導体は沢山の種類がある。このような広い意味で半導体といえるものに新機能が発揮できるような発見をして、センシング+構造体のミックスした化学センサとして新しい種類が出てくるのではないかと思う。ご存じのようにシリコンは電極としても使えるし、そこに他の原子を拡散という方法で混ぜる事も出来る。単なる接触電位の差を利用する事は過去に充分検討されている。
経済産業省は2003年度から、今後大きな伸びが期待できるMEMS産業の育成に本格的に乗り出してきた。従来、一枚のシリコンに、電子と機械の特性を融合したチップを構築する開発を目指してはいるが、さらにこれに化学の特性を融合したら、MEMS
もMicro-Electro-Mechanical Systemでなく、Micro-Electro-Mechanical Chemical Systemと言われるようになるかも知れない。既にその提案もあるし、いくつかの研究機関ではその方向にあると思われる研究を進めている。今後は、μTASやFactory
on Chipだけてなく、Chemical Reaction with Semi-Conductorを期待したい。
鈴木 博章
筑波大学大学院 数理物質科学研究科,〒305-8573 茨城県つくば市天王台1-1-1
Hiroaki SUZUKI
Graduate School of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba
1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki 305-8573, JAPAN
中原 毅
フィガロ技研株式会社・常務取締役
〒562-8505 大阪府箕面市船場西1-5-11
Takeshi NAKAHARA
FIGARO Engineering Inc., Senior Managing Director
1-5-11 Senba-nishi, Minoo-shi, Osaka 562-8505
宮坂 武寛1・遠藤 恒介2・望月 精一3・酒井 清孝4
岡山大学大学院医歯学総合研究科システム循環生理学・助手1,〒700-8558 岡山県岡山市鹿田町2-5-1
早稲田大学理工学部応用化学科・助手2*・教授4,〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1
川崎医療短期大学臨床工学科・助教授3,〒701-0194 岡山県倉敷市松島316
*現在,川崎医科大学生理学・助手,〒701-0192 岡山県倉敷市松島577
Takehiro MIYASAKAa, Kosuke ENDOb, Seiichi MOCHIZUKIc,
Kiyotaka SAKAIb
aDepartment of Cardiovascular Physiology, Graduate School of Medicine
and Dentistry, Okayama University, 2-5-1 Shikata-cho, Okayama City, Okayama
700-8558, Japan
bDepartment of Chemical Engineering, Faculty of Science and Engineering,
Waseda University, 3-4-1 Okubo, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8555, Japan
cDepartment of Medical Engineering, Kawasaki Medical School, 577
Matsushima, Kurashiki, Okayama 701-0192, Japan