Chemical Sensors

Vol. 19, No. 4 (2003)


Abstracts



化学センサ研究会の果たした役割と今後への期待

宇田 泰三

広島県立大学大学院 生物生産システム研究科長

A significant role of Japan Association of Chemical Sensors in the development of precious chemical sensors and perspectives in the future

Taizo UDA

School of Biosciences, Hiroshima Prefectural University

 第1回化学センサ国際会議が福岡で開催されてから20年が経過した。化学センサ懇話会が設立されてから約30年が過ぎようとしているが,その間のセンサ研究の進展には目を見張るものがあったと言っても良いであろう。ガスセンサの基礎研究は30年前には九大清山研で二田穂積氏が細々と,しかも一人で携わっておられた。ところがその後の商品化は意外と早く,現在では世界に市場が開けているばかりか,研究が世界的に行われているのが素晴らしい。ガスセンサもその後,湿度センサ,臭いセンサと新型あるいは新機能を有する開発に進展している。ガスセンサ研究は九大の清山教授が中心となって始まったものであるが,その後,山添教授,江頭教授,定岡教授,三浦教授達が素晴らしい研究を行って,各種のセンサ開発が進んだものである。今や,全家庭にガス検出器として普及している事を考えれば,30年前とは隔世の感がある。一方,バイオセンサは東工大の鈴木教授が中心となり,次世代の相沢東工大学長,軽部教授達が30歳代の若さで世界をリードしてきた。お陰で酵素センサは血糖センサ,乳酸センサなどとして実用化されている,特に血糖センサは糖尿病患者に福音をもたらし,単に,商品化を喜ぶだけでなく,社会的貢献という意味でも大きな成果があったと思える。こうして多方面にわたり化学センサ研究会の果たした役割は大きい。また今後もさらに研究会の意義は高くなるであろう。
 こうした経緯を振り返ってみるとき,面白い流れがある。それは,ガスセンサの研究は,主に,センサ素子の材料に主眼が置かれてきた事である。続いて商品化のための検出システムへの開発へと展開した。ところが,バイオセンサは全く逆である。バイオセンサは扱う物質が酵素や抗体などのタンパク質であるため,遺伝子工学やタンパク質工学が発展するまで材料そのものに改変(あるいは改良)を加えることが難しかった。それで電極の改良に長い間主眼がおかれてきた。電子メディエーターを使った系などもこの間に開発されてきた。その中で酵素の重層法を開発し,酵素センサの感度向上を計る安斉教授達の研究はユニークである。同じバイオセンサでも免疫センサは,未だに実用化が出来ていない。表面プラズモン共鳴,水晶振動子などを用いた免疫測定装置が商品化されてきた。これも一種の電極の改良に当たる。装置の値段も数百〜数千万円/台と高額である。実用的センサにするには10万円/台くらいにしなければならない。ここに到達するのはなかなか難しい。だが,最近,「スーパー抗体酵素」(Antigenase)なるユニークなタンパク質が開発された。これは抗体でありながら抗原を酵素的に分解するという画期的な性質を有する。センサにするには高いkcatを持つ必要があるが,そうした「スーパー抗体酵素」(Antigenase)の開発される日も近いであろう。新しいタンパク素子が開発されれば免疫センサの実用化は新局面を迎えると言って良いだろう。
 ガスセンサ,バイオセンサとも開拓者の時代から,2代目を経て,3代目,4代目の時代に入ってきた。化学センサの開発にはセンサ素子とその周辺の検出システムの研究開発が必須であるが,その体制はますます充実されてきているように思う。さらなる発展のためには時代を担う若手研究者がますます頑張れる環境作りをする重要な氏名が我々には課されている。こうしたヒト・モノ両面にわたる体制の整備により,今後の化学センサ研究会の発展にますます期待したい。



導電性高分子を用いたプラスチックエレクトロニクス

芦澤 里樹・奥崎 秀典

山梨大学大学院医学工学総合教育部
〒400-8511 山梨県甲府市武田4-3-11

Plastic Electronics Based on Conducting Polymers

Satoki ASHIZAWA, Hidenori OKUZAKI

Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, University of Yamanashi
4-3-11 Takeda, Kofu, Yamanashi 400-8511, Japan

The line patterning, a simple and inexpensive method to customize patterns of conducting polymers using a standard laster printer, without exploiting photolithography, vacuum deposition, or printing of conducting inks, is capable of fabricating various electronic devices, such as resistor, capacitor, push switch, liquid crystal display, and field-effect transistors. On the other hand, the combination of electrical and hygroscopic nature of conducting polymers provides an insight into a new class of electro-driven actuators or artificial muscle systems that work in ambient air. Furthermore, conducting microfibers, with a diameter less than 10mm, can be fabricated by a wet-spinning technique.


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