Chemical Sensors
Vol. 19, No. 2 (2003)
Abstracts
自然界に学ぶ
鈴木 晨
日本特殊陶業株式会社 常務取締役 総合研究所長
(化学センサ研究会副会長)
Learning in the Nature
Shin SUZUKI
NGK Spark Plug Co., Ltd.
このたび,本誌巻頭言の担当を仰せつかりましたが,永年自動車技術に従事してきた私には化学センサのセンシングメカニズムについての理解はできていないと言っても過言ではありません。そこで,少し趣を変え,私たちの周りに見られる自然力の素晴らしさとセンシングについて,思うところを述べさせていただきます。
私たちは美しい地球を住み家として,それを当然のように,毎日の生活を送っていますが,身の周りにはそれとは気がついていない極めて多くの自然の摂理が溢れています。花一つを取り上げてみましても,四季折々に様々な花が咲き競い私たちの目を楽しませてくれますが,それらが蕾を生み,それを大きく育て,開花させ,受粉そして落花さらには結実と言うプロセスを間違いなく確実に遂行しております。その基本に生命あるいは種族保存の原則が存在している訳ですが,そこには,そのプロセスの遂行を助けるあるいはそれから恩恵を受けるもっと広範囲に及ぶ参画者,これには,昆虫類,鳥類,ほ乳類などがそれぞれの役割を演じていますが,そうした者がいることを考えてみたいものです。
そこには,彼らの「目」が持っている,色素あるいは形状を認識できる光センサが,また,彼らの「鼻」が持っている,匂いをかぎつける匂いセンサが,全く自然の造られたままの姿でその機能を発揮しているはずです。特に,生体匂いセンサはなにがしかの化学反応をしますので,私たち化学センサを扱う者にとっては興味深いものになっております。しかし,実際の反応機構が解明されているものは僅かと言って良いのではないでしょうか。ある特定のものの検出範囲においては人間(動物)をはるかに超えるものも見つけられていますが,総合的な面になると如何に人間の英知を駆使してもこの領域には踏み込めないものであるのでは・・・と言うようなことを考察しておりますと,この自然の世界,特に,生態系には人間には触れ難いものが隠されているように思えてなりません。
さて,このように私たちの身の回りにある多種多様の化学センサは,これら隠されているものをどれくらい利用しているのでしょうか。恐らくごく僅かではないでしょうか。これまでに開発され,実用に供されてきた化学センサは,どれもいわば実験室の産物と言っても良い,経験的,理論的,時には直感的に発見した化学反応機構を私たちの手にすることのできる素材で具体化したものと言えます。しかし,それは先に述べた自然界の生体反応機構を手に入れてそれに高い再現性を付与して定期的及び定量的なセンシング機能を発揮できるようにしたものではないと言えます。そう言う意味においては,今後バイオセンサの役割は大きなものがあります。
さて,唐突ではありますが「水」を考えて見ましょう。水はこの地球に十分な量が与えられ,確実に循環しているので,それは無限のものであり,どこにでも存在するものとも言えますが,この水の,生活圏における態様は本当に万別です。氷,雪,雹,霰,水,蒸気,霧,雲というものですが,そのうちの水,これは0℃〜100℃という環境において程度の差はあるにしてもほとんどの物質を溶解するようです。ここに水の素晴らしさがあると思います。ここで,匂いセンサに戻りますが,動物が固有する匂いセンサはそれぞれの感度に大きな差はあるものの,基本的には電気化学センサと言えます。推察しますに,鼻の粘膜細胞のどこかで,匂いの対象となる化学物質が水に溶解し,酸化または還元反応が起こりシナプスを通して脳細胞のどこかに伝達され過去の経験と照らし合わせ判断するというスマートセンシングメカニズムではないかと思われます。つまり,匂いの検出には,水の存在,水の溶解性が重要な要素となっているのではないでしょうか。
と,素人的発想で匂いセンサについてあれこれ申し上げましたが,匂いセンサはひとつの例に過ぎず,私たちの周りの自然界には数限りなく多様なセンシングメカニズムが常に働いています。私たちはこれら自然の摂理に対して,謙虚にそれを学ぶことが必要ではないでしょうか。さらに,それを十分に理解し,解明し,事実確認を産業レヴェルで再現させるように努力して行けたらと思います。そして,成功しましたら自然の摂理に改めて感謝したいとも思います。
微小電極及びマイクロ分析チップの開発と生体,環境センシングへの応用
丹羽 修
NTTマイクロシステムインテグレーション研究所・主幹研究員
〒243-0198 神奈川県厚木市森の里若宮3-1
Development of Microelectrodes and Microanalytical Devices to Apply for
Biological and Environmental Sensing
Osamu NIWA
NTT Microsystem Integration Laboratories
3-1 Morinosato, Wakamiya, Atsugi, Kanagawa 243-0198, Japan
Miniaturization of analytical instrument is now of great interest and various
kind of microsensors and microanalytical devices have been developed. We have
studied microarray electrodes fabricated with photolithography and dry-etching
to improve the sensitivity of biomolecules. The thin film biosensors are incorporated
in the microfluidic devices and applied for monitoring secretion of neurotransmitters
and hormones from cultured cells. The optical detection method is also employed
to develop miniaturized chemical sensors. For example, small biomolecules can
be detected by surface plasmon resonance sensor combined with microfluidic device.
This enables us to image various reactions for enzyme sensors which are very
important for multi-channel detection. We also developed microfluidic device
to detect air pollutants such as benzene, toluene and xylene (BTX) by UV spectroscopic
measurement after pre-concentration of each gas molecule in the adsorbent.
疎水性架橋高分子を用いた容量式湿度センサの研究・開発
黒岩 孝朗
株式会社 山武 研究開発本部・主席研究員
〒251-8522 藤沢市川名1丁目12番2号
Development of Capacitive Humidity Sensors with Hydrophobic Cross-Linked
Polymers as Sensing Material
Takaaki KUROIWA
Research & Development Headquarteres, Yamatake Corporation
1-12-2, Kawana, Fujisawa, Kanagawa 251-8522, Japan
In general, humidity sensors with capacitive output have been widely adopted
to the measurement of relative humidity in a variety of applications, for example,
building controls, plant automation, semiconductor clean room, food industry,
pharmaceutical industry, bio-clean room hospital, agriculture, horticulture
and so on. This type of humidity sensor has first been developed by Santora
for Caisala Oy., Finland in 1973. Most of the capacitive sensors now in the
market utilize commercially available engineered plastics. This in turn creates
the instability under the harsh environments especially in the atmosphere with
volatile organic chemicals due to the fact that, during the process of manufacturing,
sensing polymers have to be dissolved in the solvents to make thin coated polymer
films on a substrate. On the other hand, direct cross-linking process of the
thin spin coated polymers on a substrate has been developed and marketed by
Yamatake. corp. and Ehime University in 1989 utilizing a series of tailor-made
monomers and oligomers. Newly developed gydrophobic cross-linked polymers have
been applied and have been proved to show long term stability over 15 years
of sensor life under indoor and outdoor environments.
This paper describes the basic approaches to develop capacitive humidity sensors
having both superior initial performance and long term performance with thin
film technology based on delivery under chronological sequence.
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