Chemical Sensors
Vol. 17, No. 1 (2001)
Abstracts
新世紀の化学センサ研究会
谷口 功
熊本大学・工学部
Japan Association of Chemical Sensors for New Century
Isao TANIGUCHI
Kumamoto University
いよいよ新しい世紀の始まりである。激動の20世紀から共生と調和の21世紀へと巧く転換できるだろうか? いろいろな不安とともにやはり新しい世紀への期待が大きく膨らむ。
この新しい世紀においては、我が国が科学技術のあらゆる面で世界的なリーダーシップを要求され、未踏分野の進展に大きく寄与することを期待されることになろう。我が国がアジアの懐の深さと繊細さを持って、独自の科学技術によって活躍する時代としたいものである。一方で、21 世紀の共生と調和への参画は、それぞれが真に独創的な科学技術や文化基盤を持ってはじめて敬意を持って認められるのだということも忘れてはならない。
過日、9億を越える民を抱えるインドでの電気分析化学に関する国際会議に招聘されて参加する機
会を得た。そこでは化学センサの開発が幅広い学術・産業分野で極めて緊急で重要な課題として真剣に取り組まれていた。安価で実用的なセンサの開発はアジア諸国や発展途上国の明日を支える産業育成の鍵ともなっている。この分野の展開について我が国への期待が極めて大きいことも知った。
そもそも「化学センサ」は、20 世紀に我が国で生まれ育った世界に冠たるコンセプトといって過言ではない。今日まで多くの方々の献身的な努力によって新しい科学技術として成長し、数多くの成果が実用化されて社会的に寄与しながら急速に進展を遂げつつある分野であることを、誇りを持って確認しておきたい。「化学センサ」は我が国の国民性にも良くあって、これからも得意分野の一つとして育っていくであろう。
新しい世紀を迎えて、我が国の社会の構造の改革・改編が急ピッチで進んでいる。大学の役割も正面から問い直されている。この背景には我が国の未来を賭けた科学技術立国のための戦略と若年人口の極度の減少などがある。これに向かい合うために新しい質の科学技術の展開が期待されている。その意味で、「化学センサ」は世界に誇ることのできる新しい質の基盤科学技術の一つであり、科学技術立国の要としても成長させなければならない。従って、本研究会は新しい世紀においても社会的に極めて期待の大きな集団であることを再度肝に銘じたい。これからも益々情熱と誇りを持って笑顔で多くの仲間と繋がりながら、世界の一員としてエネルギッシュに新しい時代を切り開くべく、初心に返って飛躍したいと思っている。
ペロブスカイト型酸化物のプロセッシングとセンサデバイスへの応用
清水 陽一
九州工業大学工学部物質工学科
〒804-8550 北九州市戸畑区仙水町1-1
Processing of Perovskite-Type Oxide for Chemical Sensor Device
Youichi SHIMIZU
Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Kyushu Institute of Technology
1-1 Sensui-cho, Tobata, Kitakyushu 804-8550, Japan
A novel sol-gel processing technique of perovskite-type oxide based electrode was developed
for new functional electrochemical sensor device. La-based perovskite-type fine-powders and
thin-films could be prepared by an acetylacetone - poly(vinyl alcohol)(PVA) polymeric precursor
method. The PVA-based precursor made it possible to deposit a thin-film as well as to lower the
sintering temperature as low as 773K. Carbon electrodes loaded with perovskite-type oxide fine
powders could be applied to H2O2 or hydrogen-phosphate ion sensors. Electromotive force (EMF) of
the carbon electrode loaded with La0.6Ca0.4Ni0.7Fe0.3O3 was found to vary logarithmically with H2O2
concentration. Amperometric sensing to H2O2 or HPO4
2- of the carbon electrodes with various
perovskite-type oxides have been also developed. Anodic current of the carbon-based electrode loaded
with La based perovskite-type oxide fine powder, the sensing signal, was increased with increasing
the concentration of H2O2 or HPO4
2-. The use of perovskite-type oxide thin-film electrode gave drastical
improvement to these chemical sensor devices. A LaCoO3 thin-film electrode showed high sensitivity
and high anion selectivity with fast response time for an amperometric sensing to HPO4
2-. A LaNiO3
thin-film electrode gave good sensing properties to solid-electrolyte type thin-film CO2 sensor using
an NASICON thin-film.
イオンセンサ
勝 孝
岡山大学 薬学部
〒700-8530 岡山市津島中1-1-1
Chemical Sensors 2000: Ion Sensors
Takashi KATSU
Faculty of Pharmaceutical Sciences, Okayama University
1-1-1, Tsushima-naka, Okayama 700-8530, Japan
はじめに
本総説は、昨年度、本誌に掲載された「化学センサ1999:イオンセンサ」1)の続きである。本稿を執筆するにあたり、1999 年後半から2000 年に発表された「イオンセンサ」に関する論文を中心に調査した。昨年度と同様に、筆者の専門領域の偏りから、取り上げられた内容が「イオン(選択性)電極」の一部の領域になったことを御了承いただきたい。ところで、日本分析化学会の機関誌「ぶんせき」では2年ごとにイオン選択性電極の進歩総説が掲載されている。今回は、1997 年から1999 年前半までに発表された論文の中から、基礎研究、膜物質及びアニオン電極に関する成果がまとめられている2)。特定領域に焦点をあてた総説として、イオノフォアを用いた膜電極の新しい考え方3)、選択係数測定に関する考え方4)、アニオンセンサ及び生体適合性センサを中心に最近のイオンセンサの研究動向についての解説5)、主に市販イオン電極の種類と性能・応用例についての解説6)、カリックスアレーンを用いたセンサについてのレビュー7)、ポルフィリンのセンサ開発を含む分析化学への応用8)あるいは中華人民共和国の研究グループ(主にHunan 大学R.-Q. Yu 教授)の下で得られたイオン電極の成果9)などが報告されている。また、分析機器の20 世紀として電気化学分析とセンサーが概観されている10)。
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