Chemical Sensors
Vol. 15, No. 3 (1999)
Abstracts
センサによる市場創出への期待
秋山 利
矢崎総業株式会社 ガス機器本部長
Development of New Market through Sensors
Toshi AKIYAMA
Yazaki Meter Co., Ltd.
我々、ガス供給機器メーカーでは、より正確なガスの計量,より安全なシステムを
目的として、ガスメーターやガス警報器、及びユーザーと供給元を結ぶ双方向システ
ムなどを手がけてきたが、これらの機器は、端末となる検出部にセンサを用い、長期
信頼性,耐久性が求められるものである。企業の立場としては、ハード面でのセンサ
開発は勿論の事、補正や前処理などセンサの使い方や、如何にして確実性のある寿命
予測をするかを主眼として開発を進めてきた。今後、これらの技術を基にセンサ用途
をいかに拡大し市場創出するかが、我々の使命と考えている。
この分野の製品は、有る意味では規制の中で生まれ熟成されてきたと言えるが、昨
今の規制緩和情勢のもと、少しづつではあるが異業種間交流がなされつつある。例え
ば、ガス警報器と火災報知器は、行政管轄も異なり、それぞれの専門メーカーがそれ
ぞれのルートで製造・販売してきたが、一体化したガス火災警報器を世に送り出す事
により、トータルユーザー数の増加が見込める様になった。規制に関して、もう少し
拡大して考えると、エネルギーそのものの垣根が無くなりつつあるとも言える。環境
保全や、エネルギーの安定供給の問題に対し、総エネルギー消費量による見方になる
と思われるし、保守管理サービスの拡大等、インターネットをはじめとする情報伝達
方法の急速な進歩に伴い、いずれは形態が変わってくると予想される。安全面が最優
先する分野だけに緩やかな変化と言えるが、着実に変化するものと思われる。このよ
うな情勢下で、差別化を図り、生き残って行く為には、信頼性のあるセンサやインター
フェースをいかに使いこなし、ユーザーと会話出来るシステムを構築するかが、大き
な役割を果たすと考えられる。
分野は異なるが、最近話題となっている介護保険では、様々なサービスや新しい介
護補助器などが、マスメディアを通して報じられている。最終的には、いかに相手と
会話するかが最大のケアーであり、その為にもセンサを含めたハードの役割は大きい
と言える。介護問題を論ずる際、排泄や痴呆等、きれい事だけで片付けられない問題
があり、表面上の言葉だけでは無く、要介護者の本質的なニーズを情報としていかに
取り込めるかが鍵となる。元々、センサは五感にいかに近づけるか、五感以上の検知
が出来ないかを目標に様々な分野の方々が努力されてきたものであり、特にこの分野
では言葉だけでは伝わってこない、あるいはストレートな言葉として発しにくい問題、
例えばおしめや床ずれの問題をどうしたら良いか等、思いやりのサービスをする為に
も、センサを含めた機器に対する期待は大きいと思う。
当研究会は、最先端の研究や技術を開示すると同時に、化学センサを通して様々な
分野の交流・情報交換の場でも有り、その意味でもセンサによる新たな市場創出に貢
献できるものと確信している。
固体触媒開発へのコンビナトリアルケミストリの導入と迅速ガス分析の必要性
山田 裕介、小林 哲彦
大阪工業技術研究所 エネルギー・環境材料部 触媒化学研究室
〒563-8577 大阪府池田市緑丘1-8-31
Combinatorial chemistry and high throughput screening for heterogenous catalysts
Yusuke YAMADA and Tetsuhiko KOBAYASHI
Department of Energy and Environment, Osaka National Research Institute, AIST, MITI
Midorigatoka 1-8-31, Ikeda, Osaka 563-8577, Japan
コンビナトリアルケミストリとは、元素や官能基の組み合わせを利用して系統的、効
率的かつ迅速に化合物群(ライブラリ)を合成し、それら化合物群を迅速に評価する
ことにより、絨毯爆撃的な探索、最適化の速度を飛躍的に向上させようとするもので
ある。固相合成法を利用した自動合成技術の発達しているペプチドや糖化合物の合成
に始まり、すでに医薬品の開発においては実用的に広く利用されている1)。蛍光材料
や超伝導材料などの無機材料開発においても、コンビナトリアルケミストリの導入が
検討され始めた。スパッタなどの蒸着技術を利用してウエハ上に種々の組成の材料ラ
イブラリを析出させておいて、一度に評価するなどの方法が試みられている2-5)。こ
のような手法では多くの情報が得られるので、ソフトウエア(データーベース、機能
予測などのいわゆるインフォーマティクス)も同時に重要となる。勿論コンビナトリ
アルケミストリだけで材料開発ができるのではなく、精密分析や精密合成など従来か
らの基礎的アプローチと相補的に研究開発を進めることが重要である。
ガスアレイセンサーによるにおい識別
喜多純一
島津製作所 分析機器事業部
においの測定としては、人間の嗅覚による官能検査が一般的であるが、客観性が低
い、嗅覚が順応する、記録に残し難いなどの問題がある。一方、ガスクロマトグラフ
質量分析計(GCMS)に代表される成分分析は、構成成分を求めるものであり、に
おい官能値との対応づけが難しいという問題がある。
それらの問題を解決できる方法として、嗅覚を模倣したにおい識別装置が開発され
た(写真1)。その原理は、特異性はないが特性の異なるガスセンサを組み合わせ、
それらのガスセンサでにおいを感知し、それらの複数の信号を計算機に持ち込み多変
量解析などの信号処理を行うものである。このセンサ部に使用するセンサ種として、
酸化物半導体、導電性高分子、水晶振動子もしくはsawデバイス上に吸着膜を配した
ものなどが研究されているが、実用に耐える感度と寿命を有するのは今のところ酸化
物半導体と考えられる(表1)。しかし、その酸化物半導体ですら、以下の問題をか
かえている。
a. 感度が嗅覚に比べると低い。
b. 水分の影響を受け、データの信頼性が低い。
c. エタノールの影響をうけアルコール飲料の測定ができない。
d. ガス以外のものにも応答するため、ベースラインが安定しない。
今回我々は、上記問題点を考慮して、GCMS分析などで一般的に使用されている捕
集管技術とセンサを組み合わせ、上記問題点の克服を試みた。
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