Chemical Sensors
Vol. 15, No. 2 (1999)
Abstracts
新世紀と化学センサ
岸田 俊二
日本電気(株)資源環境技術研究所所長
Greeting from new chairman of Japan Association of Chemical Sensors
Tetsuya Osaka
Nat'l Inst. of Biosci. & Human-Technol.
21世紀を目前にして、我々を取り巻く社会があらゆる面で激変しつつある。とり
わけ、「環境」、「高齢化」、「情報化」の3つは、その変化が明確で、しかも影響
の及ぶ範囲と程度が極めて大きい。これらの3つの大きな変化が、いずれも政府の「
ミレニアム(千年紀)プロジェクト」による 国家的な重点開発分野に挙げられてい
ることは、誠に時宜を得ている。「環境」の分野では、ダイオキシンをはじめとする
環境ホルモンが社会不安を引き起こしたことは記憶に新しい。また、遺伝子組み換え
作物の安全性が新たな環境課題として急浮上している。「高齢化」の分野では、医療
の効率化と国民の健康維持の両立を巡って、保険・医療分野の大きな社会的摩擦が予
測される。これらの深刻な社会問題化の背景には、環境、安全、健康というキーワー
ドに集約される「生活者」の視点が急速に社会的発言力を増している点が、共通して
存在するように思われる。一方「情報化」の進展は、インターネットを個人の生活に
も広く、深く浸透させ、行政や企業が独占してきた広範な情報を、個人が広く収集・
共有することを可能とする。この結果、やはり生活者の社会的発言力の強化が助長さ
れる。生活者は、とくに、環境、安全、健康に関しては、極めて敏感になっている。
生活圏の環境状況把握や、個人の健康情報収集・管理、遠隔医療サービス、家族のセ
ーフティーネットなどの情報サービスに対する、生活者の潜在ニーズは極めて大きい
。これらのパーソナルな情報の収集・発信手段として、インターネットはますます大
きな役割を果たしていく。
このように、新世紀に向けた「環境、高齢化、情報化」の3つの大きな変化は、生
活者のプレゼンスの増大と相互に強く関連しながら、環境、安全、健康に関わるパー
ソナルな情報サービスニーズを、従来になく高めていく。こうしたなか、化学センサ
の領域では、マイクロ化学分析技術の進展により、分析機器の画期的な小型化・ポー
タブル化・低コスト化が、確実に実現する。試薬や検体の必要量の大幅削減、測定時
間の短縮も、同時に進む。このため、化学センサは、インターネット時代にふさわし
く、生活者が、いつでも、どこでも、ほしい情報を安価に収集できる、「環境、安全
、健康を守る」ためのセンサとしての、大きな役割と機会を与えられたと考えられる
。ポータブルな環境モニタや家庭用医療計測器、DNA高速分析チップなど、新世紀
に向けて期待の高まる化学センサが数多い。このような見方にたてば、今こそ、産官
学が密接に連携して知恵を絞り、マイクロ化学分析技術の欧米への遅れを克服しなが
ら、ミレニアムにふさわしい足跡を化学センサの領域を通じて残したいものである。
化学センサは、情報技術と結びつけば、まさに環境・安全・健康の課題にソリューシ
ョンを提供するキー技術となる。革新技術による新産業創出のチャンスも多い。本研
究会の場が、産官学のみならず企業間の密接な連携の架け橋となり、化学センサの分
野をさらに大きく発展させることを心から期待したい。
電流応答型電気化学ガスセンサに関する研究
石地 徹
理研計器株式会社 研究部
〒174-8744 東京都板橋区小豆沢2-7-6
A Study on the Amperometric Gas Sensor Using Electrolytic Solution
Toru Ishiji
Riken Keiki, Co.,Ltd. Research Department
2-7-6 Azusawa, Itabashi-ku, Tokyo 174-8744, Japan
Amperometric gas sensors based on electrode reactions of gases are
attractive for detection of various kinds of gases. I have investigated to
realize a reliable gas detection by means of gas permeable
electrode/electrolytic solution cell system. An amperometric sensor using
a gold thin-film electrode showed good selectivity for arsine against
coexisting solvent vapors. Sensitivity and reliability of HF sensor have
been improved by a study of the electrolytic solution composition. New
carbon dioxide and ammonia gas sensors have been developed by means of pH
dependent metal oxide electrode reaction. Importance of the gas sensors is
increasing for industrial usage and also environmental monitoring,
especially the carbon dioxide sensing will play important roles in global
CO2 monitoring. A hand-made oxygen gas sensor has been developed to arouse
scientific interest for young students as an educational equipment.
生体機能分子修飾電極の作製とバイオセンサへの応用
水谷 文雄
生命工学工業技術研究所
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1
Preparation and Use of Electrodes Modified with Biofunctional Molecules
Fumio Mizutani
National Institute of Bioscience and Human-Technology
1-1 Higashi, Tsukuba, Ibaraki 305-8566, Japan
Biosensors combining the specificity of biological reactions with
electrochemical signal transduction have attracted increasing interest in
the last two decades. Particular efforts in this field have recently been
directed to the establishment of simple, rapid and reproducible procedures
for constructing biosensors. Techniques for preparing chemically-modified
electrodes (CMEs) are useful for this purpose. This review focuses upon
our research results for the preparation of biosensors of CME-type; the use
of biochemically- or chemically-modified proteins, and that of polyion
complex membranes as enzyme matrices or anti-interference layers are
described.
バイオセンサ
内山俊一、長谷部靖
埼玉工業大学工学部応用化学科
〒369-0293 埼玉県大里郡岡部町普済寺1690
Chemical Sensors 1998-Biosensors
Shunichi Uchiyama, Yasushi Hasebe
Department of Applied Chemistry, Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji, Okabe, Saitama, 369-0293, Japan
はじめに
バイオセンサは物質識別部位と信号検出部位の組み合わせによって多様性がもたらさ
れ、1年間に限っても膨大な研究論文が発表されている。これらの文献を整理するに
あたり、本稿ではまず分子認識物質及び分子認識反応の種類で分け、それぞれについ
て可能な限り、信号検出法によって分類してまとめることを試みた。ただし、極めて
多種多様な領域にバイオセンサが進出しているため、その全てについて網羅すること
は筆者らの能力を越えるものであり、ページ数の関係からも省略せざるを得なかった
文献が少なからずあることをご容赦願いたい。1998年もバイオセンサと関係の深い単
行本が出版され、総説と解説 も多数発表されている。
THV−加工性に優れた”テフロン”
青木 尚三 住友スリーエム(株) 技術本部開発部
永井 憲司 住友スリーエム(株) 化学製品事業部
はじめに
3Mは色々と変わった材料を提供しておりますが、あまり広く宣伝をしていません
。そこで今回は、テフロンに近い特性を持ちながら、透明でかつ溶液コートが可能あ
るいは熱可塑性であるという、使いやすさに優れたフッ素樹脂をご紹介します。もち
ろんこれだけ聞くと、これはもうテフロンではない、と言われるかもしれません。し
かし、ご存知のようにテフロンは非常に加工しにくい材料ですので、テフロンをお使
いの方たちから、良い溶媒はないか、耐熱性を犠牲にしても熱可塑性に、あるいは何
とか透明にならないか、などの要求があります。
私どもで販売していますTHV***はそれらの要求に答えた材料で、PTFE-PVDF-HFPの
三元系のフッ素ポリマーです。耐薬品性、加工性、透明性などに応じて、五種類のポ
リマーを用意しています。組成図、Fig.1から、THVはフッ素エラストマーとPTFEやF
EPの組成領域の中間に位置していることがお解りいただけると思います。一番融点の
低いTHV200はエラストマー領域に近接しているため、融点や結晶化度が低く、非常に
透明で柔らかいゴムに近い特性を持った樹脂となります。これにVDFの代わりにTFE成
分を増やして行くと、PTFEの樹脂の特性が強くなり、融点が高く結晶化度の高い、硬
く、耐薬品性の高い樹脂になります。
To Japanese Contents
To English Contents
To On-line Chemical Sensors Index Page (Japanese)
To On-line Chemical Sensors Index Page (English)