Chemical Sensors

Vol. 14, No. 4 (1998)


Abstracts



バイオセンサと生物電気分析化学

池田 篤治

京都大学大学院農学研究科

Biosensors and Bioelectroanalytical Chemistry

Tokuji IKEDA

Kyoto Univ.



 酵素電極の原型が報告されてから30年,そして,この原理の酵素センサが市場に出るようになってから20年,さらに,メディエータを用いる新しい原理の酵素センサが市場にでてから10年が経過しました.このように見てくると,21世紀を間近にした今,次の飛躍的展開が起こるべき時期が来ているように思われます.バイオセンサという言葉が,いつ頃,誰によって提唱されたのか,不勉強でよく知らないのですが,酵素電極の研究がさかんになり,測定対象や,測定原理,方法にさまざまの展開が見られるようになって,より広い概念としてバイオセンサと言う言葉が用いられているようです.
 私自身は,生物電気分析化学,とでも呼べるような領域に関わって来まして,バイオセンサそのものの研究ということになると,正直いって内心忸怩たるものがあります.バイオセンサの研究と宣言してしまうと,実際に使えるもの,役に立つものを作らねばならないという脅迫観念にとらわれてしまうので,この言葉を意識的に避けてきらい無きにしもあらずです.  20年近く前に,酵素反応を電気化学反応と共役させて,酵素触媒反応を電気化学的に測ってみたい,という興味から酵素を電極に吸着させて,メディエータを用いる間接共役系の実験をしていました.ちょうどそのころ,酵素電極の新しい展開が模索されている時期でありました.そこで,私も,カーボンペースト電極の中にキノンをメディエータとして練り込むという,純粋電気分析化学からみれば,そうとう荒っぽいことをやって,グルコース測定用のメディエータ型酵素電極を作成しました.
 この電極は雑な作りにもかかわらず,データの定量的な取り扱いが可能できれいな機能解析が出来ました.このようなタイプの電極は,使い捨て型のグルコースセンサとして,企業のかたが,みごとに商品化されました.メディエータとして用いる化合物の選択が,大きなポイントで,それ以外にもあちこちに様々の工夫がこらしてあります.このような多様な技術を駆使した研究は,それ自身,実用化に欠かせない重要な研究です.このような経験から,自分の性にあった領域で研究を進めれば,結果として何らかの貢献ができるのではないかと思っています.私ごとを,ぐだぐだと述べてきましたが,いろんな分野の人々がそれぞれの興味で進めている研究を,化学センサと言う視点からながめて見ると,新鮮なアイデアが生まれてくるように思います.少し分野が異なりますが,そのような例としてクラーク型酸素電極があります.膜の片側に2つの電極を集めるという工夫によって,ポーラログラフの原理が実用化され,今日広い分野で使われています.
 バイオセンサは酵素触媒反応や免疫反応という生体に特有の高度な機能に依拠した化学センサ技術であり,分子生物学の目を見張る進歩と歩調を合わせてその展開が大いに期待できるはずですし,また,一方で,このようなセンサ技術の進歩が分子生物学の研究飛躍に重要な貢献をすることも疑う余地がありません.新しい分析法が確立されると,いずれの研究分野においても,その研究が飛躍的に進展することはよく知られた事実です.いろんな分野の人々が,さまざまの視点から,化学センサをめざす研究に参画されることを期待します.


化学センサ1997/1998- 固体電解質センサ

桑田 茂樹*、青野 宏通**

*新居浜工業高等専門学校 生物応用化学科
〒792-8580 愛媛県新居浜市
**愛媛大学工学部 機能材料工学科
〒790-8577 愛媛県松山市

Chemical Sensors 1997/98 − Solid Electrolyte Gas Sensors

Shigeki KUWATA* and Hiromichi AONO**

*Department of Applied Chemistry an Biotechnology, Niihama National College of Technology
Niihama, Ehime 792-8580, Japan
**Department of Materials Science and Engineering, Faculty of Engineering, Ehime University
Matsuyama, Ehime 790-8577, Japan


 1997年後半〜1998年前半にかけて発表された固体電解質ガスセンサに関する論文を,1. O2ガスセンサ,2. CO2ガスセンサ,3. ハロゲンガスセンサ,4. NOxガスセンサ,5. その他のセンサ,として紹介した.



可燃性ガスセンサ

玉置  純

立命館大学理工学部化学科
〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1

Chemical Sensors 1997/1998-Combustible Gas Sensors

Jun TAMAKI

Department of Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Ritsumeikan University
Noji-higashi 1-1-1, Kusatsu-shi, Shiga 525-8577, Japan

 本稿では,1997年および1998年に発表された可燃性ガスセンサに関する論文を1)炭化水素,2)水素,3)一酸化炭素,4)アルコールに分類し,紹介する.検出方式は,半導体式,固体電解質式,接触燃焼式など様々であるが,全固体型素子を報告している論文について取り上げた.また,化学センサ1997/1998-半導体ガスセンサ との重複を避けるため,半導体式では,主として,ダイオード型,MOSFET型について取り上げ,電気抵抗型ではガス検知特性を調べているものを取り上げた.





半導体ガスセンサ

玉置  純

立命館大学理工学部化学科
〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1

Chemical Sensors 1997/1998-Combustible Gas Sensors

Jun TAMAKI

Department of Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Ritsumeikan University
Noji-higashi 1-1-1, Kusatsu-shi, Shiga 525-8577, Japan

 本稿では,1997年および1998年に発表された半導体ガスセンサに関する論文を,1)調製および検知機構,2)可燃性ガス,3)環境ガス,4)におい物質,5)パターン認識に分類し,紹介する.ここでは,主に電気抵抗型センサについて取り上げ,ダイオード型,MOSFET型などの半導体ガスセンサでH2などの可燃性ガスを検知するものについては,化学センサ1997/1998 - 可燃性ガスセンサ を参照されたい.1)では,半導体酸化物の調製,マイクロマシニングによるセンサの作成,およびセンサの検知機構に関して調べているものについて報告する.2)〜4)では,種々の半導体材料を用いたセンサにより特定ガスの検知を行っている論文について,5)ではパターン認識によりガスの識別を行っている論文について紹介する.




エレクトロクロミックデバイスによるリン酸イオンセンシング

清水 陽一

九州工業大学工学部物質工学科
〒804-8550 北九州市戸畑区仙水町1-1

Phosphate-Ion Sensing with Electrochromic Device

Youichi SHIMIZU

Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Kyushu Institute of Technology
1-1 Sensui-cho, Tobata, Kitakyushu 804-8550, Japan
e-mail: shims@che.kyutech.ac.jp


Novel optical phosphate-ion sensors based on electrochromism of metal-oxide thin-film electrodes were proposed. Among the metal-oxide thin-films tested, it was found that Co3O4 and NiO-based electrodes prepared onto ITO glasses by a sol-gel method showed good sensing performance, i.e., the transmittance at 400-800 nm of the electrodes changed reversibly depending on HPO42- concentration under applying anodic electrode potentials. The transmittance change of Co3O4 based element at 620 nm was almost linear to the logarithm of the HPO42--concentration between 1.0 x 10-6 and 1.0 x 10-2 M at +0.4 V vs. SCE. The 90 % response time of the element, when the electrode potential was changed from +0.4 to 0 V vs. SCE at 10-2 M, was about 50 s at room temperature.


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