Chemical Sensors

Vol. 11, No. 4 (1995)


Abstracts



マルチメディア時代におけるセンサ技術への期待

松井  実

日本ガイシ(株) 理事 研究開発本部

Biosensor Technology in the Multimedia

Minoru MATSUI

NGK Insulators, Ltd.

 化学技術は有史以来、節目節目で人類の知的生活・文化活動に影響を与えてきている。最近の大きな話題は米国マイクロソフトと社によるウィンドウズ95の発売が一般紙の一面を飾っていることに象徴されるマルチメディア時代の到来ではないだろうか。今や文化面でも世界を代表する都市となった東京では文化の最先端を担う若者によってインターネットカフェなるものが数軒誕生し、お茶を飲みながらインターネットを楽しみ、世界中の言わば情報化された異種文化を体験することができる。このような情報文化を楽しむことを現すネットサーフィンなる造語も誕生しているようである。
 人類は多くの道具を発明したが、産業革命時の蒸気機関など初期のものは人間の物理的な力を増幅させる働きをする道具が多く、人間以上に優れた特性を持つデバイスが無かったこともあって、人間自身が五感を動員してセンサとアクチュエータの役割を果たすことが出来た。一方、今日のインターネットやマルチメディアに代表される情報処理機器のなかでは圧倒的な情報処理速度をもつコンピュータや超小型MPUが利用され、特定の分野では全く人間の介在無しで高度な情報処理と自動制御を実現している。また、されに高度な応用分野や、特に信頼性を要求される分野では、これらの高速情報処理装置と人間の持つ特徴を有効に合体させる方式が取られており、揺らぎのあるデータの処理や総合的な判断を必要とする制御系などでは最終判断の部分で人間自身が介在し、この人間の機能を補助する部分としてコンピュータが存在するような構成を取っている。また、社会構造が複雑になるにつれて必要性が増したものに、人間のもつ情報処理速度では一生かかっても成しえないような各種の設計業務、オンラインデータベース検索、コンピュータシミュレーションなどがあり、これを可能にしたものはコンピュータと言う機械装置とは別の次元の情報処理機器であり、今世紀での人類の大きな発明であろう。
 マルチメディアに代表され、第3の波と呼ばれる時代のボトルネックの一つは、限界を知らない情報処理機械の速度と、有限の速度の人間との間の情報やデータのやり取りに有るのではなかろうか。現在のマンーマシンインターフェースは古色蒼然たるキーボードであり、文字の羅列からようやく図表やグラフィックスで表示できる世界が始まったところである。情報処理機械と人間とのインターフェース技術の究極の姿は何であろうか。おそらく、人間の心を読み取り、情報処理の結果を人間の脳に直接イメージとして送り込む技術ではなかろうか。現在、すでに人の脳の活動を非接触で定量化する脳磁気計測センサ技術が開発されていると言う。また、人の声を聞き取り、分析して入力できるワープロ技術もデモされている。センサ技術は人間の五感のものまねから、人を補助するもの、またそれを超える機能を提供するものに進化しつつある。センサ技術研究者としてはロマンを持って人類の知的生活・文化活動を向上できるものに取り組みたいとおもっている。




固体電解質センサ

桑田茂樹、青野宏通

新居浜工業高等専門学校・工業化学科
〒792 愛媛県新居浜市

Chemical Sensors 1994/95 - Solid Electrolyte Gas Sensors

Shigeki KUWATA, Hiromichi AONO

Department of Industrial Chemistry, Niihama National College of Technology
Niihama, Ehime 792, Japan

 1994年後半〜1995年前半にかけて発表された固体電解質ガスセンサに関する論文を、1. O2 ガスセンサ、2. H2ガス、湿度センサ、3. CO2ガスセンサ、4. NOx, SOxガスセンサ、5. その他のセンサに分類し、その内容を紹介する。




可燃性ガスセンサ

玉置 純

九州大学総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園6-1

Chemical Sensors 1994/1995-Combustible Gas Sensors

Jun TAMAKI

Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
6-1 Kasuga-Koen, Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan

本稿では、1994年および1995年に発表された可燃性ガスセンサに関する論文を 1)炭化水素、2) 水素、3) 一酸化炭素、4) アルコールに分類し、紹介する。検出方式は、半導体式、接触燃焼式、固体電解質式、光学式など様々であるが、全固体型素子を報告している論文について取り上げた。また、化学センサ1994/1995-半導体ガスセンサとの重複を避けるため、半導体式では、主としてヘテロ接合型、ダイオード型、FET型について取り上げ、電気抵抗型ではガス検知特性を調べているものを取り上げた。




半導体ガスセンサ

玉置 純

九州大学総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園6-1

Chemical Sensors 1994/1995-Semiconductor Gas Sensors

Jun TAMAKI

Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
6-1 Kasuga-Koen, Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan

 本稿では、1994年および1995年に発表された半導体ガスセンサに関する論文を、1) 可燃性ガス、2) 環境ガス、3) におい物質、4) パターン認識に分類し、紹介する。ここでは、主に電気抵抗式センサについて取り上げ、ダイオード型、FET型の半導体ガスセンサでH2などの可燃性ガスを検知するものについては、化学センサ1994/1995-可燃性ガスセンサ-を参照されたい。Gopelら[1]は、SnO2センサの現状と将来に関するレビューのなかで、吸着や表面反応など表面における原子レベルの現象、粒子接合や結晶化度など構造の効果を中心にまとめ、将来の展望として交流測定による選択性改善、素子構造制御による安定性の改善、パターン認識による選択性改善やドリフト補償を挙げている。各論では、厚膜型センサ[2]、薄膜型センサ[3,4]、FET型センサ[5]、パターン認識[6]、表面修飾[7]についてそれぞれ詳しくまとめられている。また、Miszei[8]は、半導体ガスセンサを高性能化するにはどうすればよいかをまとめている。センサ特性を決定する項目として、半導体表面の性質、添加剤の役割、粒子径、粒界ポテンシャル障壁などを挙げ、これらを十分に制御することが必要であるとしている。




湿度センサ

松口 正信

愛媛大学工学部応用化学科
〒790 松山市文教町3

Chemical Sensors 1994 - Humidity Sensors

Masanobu MATSUGUCHI

Faculty of Engineering, Ehime University
3-Bunkyo-cho, Matsuyama 790, Japan

はじめに
 湿度センサに関する1994年後半から1995年前半における研究動向を、その検出原理、及び材料の種類によって分類しまとめた。もちろん、この中から漏れた論文も多いと思われるが、お許し願いたい。




イオンセンサ

逢坂 哲彌・駒場 慎一・瀬山 倫子

早稲田大学理工学部・早稲田大学材料技術研究所
〒169 東京都新宿区大久保3-4-1

Chemical Sensors 1994/95-Ion Sensors

Tetsuya OSAKA, Shinichi KOMABA, Michiko SEYAMA

Department of Applied Chemistry, School of Science and Engineering, Kagami Memorial Laboratory for Materials Science and Technology, Waseda University
3-4-1 Okubo, Shinjuku-ku, Tokyo 169, Japan

はじめに
 高度技術化社会の進行に伴って、各種のセンサが社会的にも産業的にも重要性が認識されるようになった。その様な社会状況において化学の研究者、技術者の興味をそそるのは化学物質を識別検知し、電気信号や光信号に変換する化学センサである。近年、化学センサの研究開発が活発に行われ、更にはそれらのセンサデバイスを実際の計測に組み込むことを目的としたセンサプローブのマイクロ化、自動化センシングシステムの設計は益々盛んになっている。
 今回、イオンセンサにおける最近一年間の研究報告について、著者らの興味も合わせその関連論文を概観したい。イオンセンサを含む化学センサの最近の研究動向については、既にいくつかの総説も出ており、合わせて参照されたい[1,2,3]。また、フローシステム系のこれまでの発展についてまとめた報告[4]、化学センサを適用する利点などについて述べた総説も出されている[5]。
 以下では、従来より知られているイオン選択性電極(イオン電極)の基礎と応用、半導体イオンセンサ、オプティカルイオンセンサ(オプトード)、化学修飾電極を用いたイオンセンサ、我々の取り組んでいる電解重合膜を用いたイオンセンサに分類し述べることにする。




免疫反応における抗原および抗体タンパクの機能化

宇田 泰三

広島県立大学・生物資源学部 生物資源開発学科
〒727 広島県庄原市七塚町562

Functioning of antigen and antibody protein in the immunoreactions

Taizo UDA

Department of Bioscience, Hiroshima Prefectural University
562 Nanatsuka-cho, Shoubara-city, Hiroshima 727, Japan

Immunosensor has been limited in its practical application compared with that of enzyme sensor. Author has proposed a new idea, mimic antigen and mimic antibody, to overcome the fundamental problem in immunoreaction. A mimic antigen was successfully synthesized against gp41, one of the protein of human Immunodeficiency virus (HIV). The mimic antigen could work in the flow type of immunosensor detecting the native antigen in the range from 1 to 20 μg/ml. Consecutive 5〜10 injections of sample were possible in the AIDS sensor. On the other hand, gene analyses of cDNA from antibody secreting hybridoma were carried out for anti methamphetamine monoclonal antibodies and anti hemin antibodies in connection to the mimic antibodies. From the peptide syntheses for the complementarity determining region (CDR) and the examinations of their immuno affinity against the antigens, we found some peptides having appropriate immunoaffinity. These facts suggest that the mimic antibody can be build and will be applied in its practical use.

はじめに
 抗原抗体反応はこれまで多くの場合、抗原全体および抗体全体(or 可変領域全体)として反応を捕らえ、分子認識の機構や能力あるいは免疫反応の解釈を行ってきた。勿論エピトープ(抗原決定基)の様にミクロに抗原を捕らえる場合もあるが、それは抗原蛋白の部分ペプチドを使って動物内での免疫応答を得るケースが多かった。こう言った取り扱いに対し最近、我々は模擬抗原、模擬抗体と言う概念を提案し、この考えに基づく新しい機能をもたせたペプチドを作製し、バイオセンサーへの応用を試みたり、また抗体のアミノ酸配列の解析から新機能を持った抗体ペプチドの可能性を検討している。




国際電気学会第46回大会

('95年8月28日〜9月1日 於 Xiamen [China]) 水谷 文雄(生命工学工業技術研究所)
末永 智一(東北大学大学院工学研究科)
菅原 正雄(東京大学大学院理学系研究科)

Conference Report. The 46 th Annual Meeting of International Society of Electrochemistry

Fumio MIZUTANI (Nat'l. Inst. Biosci. & Human-Technol.)
Tomokazu MATSUE (Tohoku Univ.)
Masao SUGAWARA (Tokyo Univ.)



第21回化学センサ研究発表会

('95年9月29日〜30日 於 山梨大学教育学部キャンパス) 矢吹 聡一(生命工学工業技術研究所)
安斉 順一(東北大学薬学部)
清水 康博(長崎大学工学部)
今中 信人(大阪大学大学院工学研究科)

Conference Report. The 21 th Chemical Sensor Symposium

Soichi YABUKI (Nat'l Inst. Bioscience & Human-Technol.)
Jun-ichi ANZAI (Tohoku Univ.)
Yasuhiro SHIMIZU (Nagasaki Univ.)
Nobuto IMANAKA (Osaka Univ.)



第2回東アジア化学センサ会議

('95年10月5日〜8日 於 Xi'an, China)

外山 滋(身障者リハビリセンター)
大藪多可志(富山国際大)
玉置 純(九大総理工)
酒井 義郎(愛媛大工)
江頭 誠(長崎大工)

Conference Report. Second East Asia Conference on Chemical Sensors

Shigeru TOYAMA (Res. Inst., Nat'l. Rehabilitation Center for the Disabled)
Takashi OYABU (Toyama univ. of International Studies)
Jun TAMAKI (Kyushu Univ.)
Yoshiro SAKAI (Ehime Univ.)
Makoto EGASHIRA (Nagasaki Univ.)


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