会長挨拶

平成21/22年度 会長挨拶

振り返ってさて

化学センサ研究会・会長 定岡芳彦

(愛媛大学工学部 機能材料工学科・教授)

 

 

 

懐古主義ではないが、振り返ると、1976年化学センサに関する研究をはじめて以来、2003年、27年を経過してしまった。この間、対象とした材料は、有機半導体、陽極酸化膜、合成高分子、金属酸化物と、測定法で言えば、電気伝導度、誘電率、質量、光吸収・発光、電位、電流といろいろである。真空管からダイオード、トランジスターと、回折格子、光電管からホトダイオードアレイー等々、科学技術の発展とともに利用する機器の変遷もあった。

 

湿度センサについて言えば、初期には、電気抵抗型、今では電気容量型へと変化し、材料も、陽極酸化膜から、金属酸化物、固体電解質、高分子電解質、多孔性高分子膜、親水性高分子と展開し、疎水性高分子にたどり着いた。

 

初期のセンサ設計は、利用できる計測装置依存型であったことはいなめない。センサ材料の選択は、測定感度と経費に大きく依存していた。いまでこそ、電気容量型湿度センサは実用化され普及しているが、開発当時は、測定精度・感度は、精々10pF、低容量変化は特殊な計測器を使用しないと再現性のある検出は困難であった。収着水の挙動から判断すると、容量型湿度センサの場合、吸水量3%以下であることが、ヒステリシス、安定性等の観点から必要であることを提案したが、電極形態、電極材料、センササイズ、膜形成法などの因子を考えると、当時、計測は至難の問題であった。データ解析についていえば、全てペンレコーダー、アナログであり、機器の安定性ドリフト、確度を考えると、長期安定性、再現性など検証する環境は殆ど整備されていなかったのが実情でもあった。また、湿度の発生装置の再現性、精度についても制約があった。現在は、コンピュータの高性能化、周辺分析機器の高度化が非常に進展しており、上記の悩みは解消されつつある。

 

平成14年2月には、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」の中間報告を受けた、厚生労働省医薬局長名での、「室内空気中化学物質の室内濃度指針及び標準的測定方法等について」の通達も出されており、化学センサの将来は確実なものであることは疑いない。

 

ガスセンサには、空気質管理と汚染度予測の目的もある。一部のガスセンサーを除いて、センサー特性は、共存ガスの影響を受ける。このことを、逆に利用すれば、複数のガスセンサの組み合わせにより、汚染化学種の予測と濃度予測が可能であろう。最近、このような観点から、臭い識別センサ、いわゆる、人工電子鼻の開発が行なわれつつある。これらは、複数のガスセンサからなるセンサーアレイを構成し、主成分分析、因子分析、クラスター分析法などの手法で、臭い識別を行なう。現在、試料が由来する群を示す目的変数がある場合には、ニューラルネットワーク法、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)など多変量解析手法を用いて、複数の測定信号から、化学物質の同定、質、濃度に関する情報を迅速に取り出す(ケモマトリックス)ことが可能となっている。ガスセンサの性能ならびに多変量解析手法の高度化を考え、ガスセンサの利用形態とその広がりを考えると、ガスセンサの小型化(省エネルギー化)、アレイ集積化(多機能化)、積層化(選択性、安定性)について積極的に展開する必要がある。