Chemical Sensors
Vol. 34, No.1 (2018)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサとのあゆみ

パナソニック ヘルスケア株式会社 取締役 常務執行役員
(2018年4月1日よりPHC株式会社に社名変更します)
(化学センサ研究会 副会長)

宮崎 正次

この度化学センサ研究会の副会長を拝命致しました宮崎でございます。入社以来私は一貫して技術畑に身を置き、研究現場とは少し距離のある商品設計並びにモノづくり現場にて会社生活を過ごして参りました。よって、日本の化学センサ研究活動をリードする本研究会にて、このような大役を仰せつかりましたことを大変光栄に思うと同時に、少々恐縮致しております。微力ではございますが、本研究会発展のために精一杯務めて参る所存でございます。
 当社は1949年に四国の地で事業を開始したことに端を発し、1969年に松下寿電子工業株式会社として発足致しました。その後、2005年にパナソニック 四国エレクトロニクス株式会社、2010年にはパナソニック ヘルスケア株式会社、という社名の変遷を経て、2018年4月1日からはPHC株式会社という新社名で新たな船出を致します。この様な社名の変遷は当社の事業の変遷でございます。創業当初は「電子工業」の名が表す通り、ビデオデッキやハードディスクドライブ等の電子機器の製造を生業としておりました。それが現在では、「医療機器」「ヘルスケアIT」「ライフサイエンス」の三事業を中核とした「ヘルスケア」分野にて積極的に事業を展開しております。当社がヘルスケア分野に大きく舵を切ったきっかけが、まさに化学センサとの出会いでありました。
 当社と化学センサとの出会いは糖尿病患者様向けの血糖値測定システム(グルコースセンサ)に始まり、1991年にグルコースセンサの製造を開始致しました。本センサの大きな特徴の一つはキャピラリ(毛細管)構造を有することであり、指先から出した米粒程の血液をセンサ先端へ接触させるだけで、グルコースの測定に必要な規定量の血液が自動的にセンサへ吸引されるというものです。これは、ユーザビリティを大幅に改善した世界初の自動吸引型グルコースセンサとして、ユーザーの方々より多くのご好評をいただきました。当社のグルコースセンサは、その後も正確性と安全性並びにユーザビリティの向上などの改良を重ね、初代から数えて25年以上を経た今日でも多くのご支持を頂戴する、当社を代表する商品へと成長致しました。このグルコースセンサの事業化をきっかけとして、乳酸センサ、脂質センサ、HbA1cセンサ、呼気NOセンサなどの化学センサ事業を展開するに至っております。このように化学センサ関連事業が当社の屋台骨を支えており、化学センサという研究分野がなければ当社のヘルスケア事業への参入はなかったものと考えております。商品化を通じて培った様々な要素技術を見つめ直しますと、長年に渡って蓄積された国内外における化学センサ関連の学術成果が、当社の技術基盤になっていることを思い知らされます。化学センサに関する基礎研究を推進され当該分野の発展にご尽力されてきた諸先輩方に対し、改めて感謝申し上げる次第です。
 近年はIoTに代表されるように、情報と情報が融合し新たな価値が創出される時代となっております。化学センサにおきましても、個々に測定した結果を自己完結的に扱うだけではなく、様々なセンサの測定結果を包括的に統合することで、今までにない新しい価値を提供できるのではないでしょうか。そのために多種多様な独自性の高い化学センサが求められ、必要になってくるのではないでしょうか。化学センサ研究会からバラエティーに富んだ研究成果が発信され、それらが大きな潮流となって社会に浸透していくことを期待しながら、副会長職を全うしていく所存でございます。会員の皆様のご指導、ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

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トピックス

ウエアラブル有機トランジスタ型バイオセンサの開発と 汗成分分析への応用

長峯邦明、吉嶺浩司、土屋和彦、野村綾子、時任静士

山形大学・有機エレクトロニクス研究センター
〒992-8510 山形県米沢市城南4-3-16

Development of a Wearable Organic Transistor-Based Biosensor for Perspiration Analysis

Kuniaki NAGAMINE, Hiroshi, YOSHIMINE, Kazuhiko TSUCHIYA, Ayako NOMURA, Shizuo TOKITO

Yamagata University, Research Center for Organic Electronics (ROEL)
4-3-16, Jonan, Yonezawa, Yamagata 992-8510

The daily monitoring of human physiological conditions is a future goal for personal healthcare in the home. Wearable sensors that can non-invasively quantify multiple chemical species in-situ are required for accurate and comprehensive management of complex health conditions. We are currently developing wearable organic field-effect transistor-based biosensors for detecting various target analytes from bodily fluids such as perspiration and saliva. In this chapter, we describe fundamental characteristics of the organic transistor-based biosensor utilizing enzyme as recognition elements for lactate, and its potential application to lactate monitoring. The sensor exhibited selective and sensitive detection of lactate in a concentration range between 50 µM to 1 mM. The sensor integrated with wearable microfluidic film can be laminated on human skin to demonstrate real-time monitoring of lactate in sweat during ergometer exercise. We are currently developing a wearable multi-sensing device with wireless communication system for comprehensive analysis of perspiration to realize non-invasive healthcare in the future.

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一酸化炭素センサとその応用の紹介

井澤 邦之

フィガロ技研株式会社
〒562-8505 大阪府箕面市船場西1-5-11

Introduction of carbon monoxide gas sensors and their applications

Kuniyuki IZAWA
Figaro Engineering Inc. 1-5-11, Senbanishi, Mino, Osaka, 562-8505

In our daily life, fire is undoubtedly indispensable while it may bring a potential risk of CO poisoning or fire disaster. In order to mitigate such a risk, CO sensors have been developed with sustained efforts. In this article, CO sensors and their applications for consumer and commercial use are introduced with their histories and backgrounds of the development. Finally, a recently released CO sensor that is characterized by its compact button cell shape is introduced as well.

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