Chemical Sensors
Vol. 31, No.3 (2015)

 

Abstracts



巻頭言

化学センサへの期待

富士電機株式会社 技術開発本部
計測制御技術開発センター 副センター長
(化学センサ研究会副会長)

相馬 伸一

本年度より化学センサ研究会に入会させて頂き、また、副会長を務めさせて頂くことになりました。これからは本研究会のため、皆様からご指導を賜りながら尽力する所存でございます。
 巻頭言を執筆させて頂くことになり、これからの化学センサへの期待を考えてみた。化学センサという大きな枠で考えると、様々なセンサが利用されている。大気環境、水質環境、生活環境など至る所に活用されている。その原理は多岐に亘るものの、最終的には抵抗値変位のような電気信号の変化で検出しているものが多い。例えば、身近にある家庭用のメタンガスセンサでは、接触燃焼式も半導体式も抵抗値の変位により検出している。微生物や抗体等を検出部とするバイオセンサやイオンセンサもその検出は電気信号によるものである。このように、化学センサは電気化学によりこれまで発展を遂げてきたと言っても過言ではない。
 これからの化学センサはどのような発展をしていくのだろうか。これからの化学センサに期待することは、人と社会環境の安全構築であると考えている。例えばセンサネットワークの構築による環境監視、これは、工場や海外から飛来する有害物質による大気汚染の監視、また世界的に脅威となっているテロによる化学兵器の毒物検知、放射線の線量監視といった人的に害のあるものを早期に検出し、広域に亘り監視することで社会生活の安全を確保することである。もう一つは人の健康状態の監視である。現在では、医療分野でも化学センサが利用されている。生活習慣病や三大疾病、現代社会が生み出したと言われているうつ病など、食生活や住環境等の変化により様々な病気が発症している。化学センサはその早期発見に貢献することが出来るであろう。呼気による肺炎、肺がんの検出や唾液によるストレス成分の判定のような非侵襲診断での化学センサの実用化に期待する。また、エネルギーに目を向けると、今後普及される水素社会においては、水素エネルギーの製造、貯蔵、運搬など安全に向けた取組も進んでいる。この分野でも化学センサは当然活用される。このように化学センサに期待することは大きく、その応用範囲も幅広く活用されていくものと思う。
 一方、これらの化学センサの製造技術の革新も目覚ましい。ガス警報器用のメタンセンサでは、MEMS技術を応用することで小型化、低消費電力化を実現し、ガス警報器のコードレス化に寄与している。このようにエレクトロニクス技術だけでなくメカニカル技術との融合による製造技術も活用されるようになってきた。この製造技術の進歩により、センサの更なる小型化やマルチ化、高集積化が進むことが期待できる。一方でセンサを小型化、マルチ化することで検出部分が微細になるため更なるセンサの高感度化が課題となると考える。更にバッテリレス、無線技術を応用することで、ウェアラブルセンサやインプラント型のセンサも将来的には実現可能なものになると考えられる。
 このように、化学センサはその応用範囲も拡大し、様々な分野で活用される。これは、電気化学分野の発展と同時に進むものであり、今後より良い社会の構築のために我々が出来ることは、最新のテクノロジーを融合して化学センサで出来ることを更に増やしていくことであり、それにより社会貢献することが使命であると考える。最後に化学センサ研究会が更なる発展を遂げ、化学センサ分野で世界をリードすることを切に期待したい。

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