Chemical Sensors
Vol. 30, No.1 (2014)

 

Abstracts



巻頭言

市場調査の重要性

バイオニクス機器株式会社 取締役社長
化学センサ研究会 副会長

室井 憲次

私と化学センサとの出会いは、20代の頃の水質計用センサの基礎データ採りから始まりました。pH計用の各種標準液を調製してゼロ・スパン校正、ORP計用のキンヒドロン標準液を調製して電位チェック、これらを数百回繰り返しました。化学実験でビューレットに滴定試薬を入れコニカルビーカーにサンプルと指示薬を入れて滴定を行います。この操作を自動化した分析計がプロセスタイトレーターです。きれいな滴定曲線を作るためのサンプル量や試薬・濃度の選択、コーナーポイントとエンドポイントのpHやORP(酸化還元電位)が重要なファクターとなります。その他に残留塩素計・アルカリ度計・濁度計・COD計の基礎実験を20代後半まで行い、各種化学センサを使用した水質分析計に携わりました。これらの開発実験は、約30年前のことですが、今でも鮮明に記憶しています。

30歳からはバイオニクス機器に転職し、電気化学センサを使用した産業用ガス検知警報器の仕事に携わりました。最初は技術サービス員として試運転調整や定期点検で全国各地の化学プラント・半導体工場・研究所・大学等を回りました。産業用ガス検知警報器の警報精度は警報点に対して可燃性ガス用±25%以下、酸素用±5%以下、毒性ガス用±30%以下、警報遅れ時間は警報点の1.6倍のガス濃度にて30秒又は60秒と非常にラフであり、水質分析計との精度差が大きいため、当初馴染めませんでした。その後約5年間は技術サービス専任、次の10年間は営業と技術サービスの兼任、そして15年間は営業専任、以上がバイオニクス機器における社歴となります。

化学センサ研究会の会員の皆様はほとんどが研究開発に従事されていると思われます。私は営業の社歴経験がほとんどなので、営業の立場から電気化学センサに対する話をします。お客様が何を必要と感じているか、開発者に当たり前のことを含め正確に伝達する能力を強化する事が重要な課題となります。マーケットリサーチに時間をかけて、仕様・環境条件・干渉ガス・マーケット規模・納期・納入希望価格・ランニングコスト等の全ての条件が揃えばヒット製品になる確率は高くなりますが、なかなか全ての条件を網羅するのは難しい事です。産業用ガス検知警報器の業界は大手2社がマーケットシェアを握っており弊社はニッチな市場開拓を行い売上に貢献する様に日々努力をしています。成功例としては、ある食品業界の工業会名簿を元に、会員会社に訪問予約の電話やメールを入れますが「カタログ、資料を送って下さい。」と断られる。そこで天気の悪い日は営業担当が会社にいる事が多いので、大雨の日に非常識とは思いつつ予約なしで飛び込みの営業を行いました。運良く検知器の担当と打合せができ、その中でも「干渉ガスの少なさ・ランニングコスト」を評価され、本社担当を御紹介頂き受注する事が出来ました。今後はガス検知警報器と分析計の中間的な市場に時間を掛けて開拓して行きたいと思います。

産業用ガス検知警報器は通常ガスがない状態で温度・湿度・電気ノイズ・干渉ガス等の外乱要因に影響を受けず、指示値が安定していて、いざガス漏洩が発生した場合には確実に警報を発し、避難を促す保安機器です。近年は国内半導体不況にとどまらず、全ての業種からの製品価格・ランニングコストの見直し等の価格面での要求が非常に厳しく、これに加えて仕様面ではより厳しい精度・性能が要求されることが多くなっております。今後尚一層センサに対する要求性能は高くなり、重要度は増すこととなりますので化学センサ研究会に対する期待も大きくなります。今後、化学センサ研究会が益々発展し、世の中に寄与できるよう弊社も尽力していく所存です。

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トピックス

バイオセンシングを目的としたDNA-タンパク質複合分子作製法の開発

三重 正和、小畠 英理

東京工業大学・大学院総合理工学研究科・化学環境学専攻
〒226-8502 神奈川県横浜市緑区長津田町4259 G1-13

Construction of semisynthetic DNA-protein conjugates for biosensing system

Masayasu MIE, Eiry KOBATAKE

Department of Environmental Chemistry and Engineering,
Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology
G1-13, 4259 Nagatsuta, Midori-ku, Yokohama 226-8502

DNA-protein conjugates have been used as versatile molecular tools for a valiety of applications in biotechnology. For conjugation of DNA to proteins, various methods based on either covalent or noncovalent strategies were developed. However, in most cases, DNA molecules were required modification. These processes were cumbersome. To overcome this problem, we have developed a method for site-specific labeling of single-stranded DNA (ssDNA) to a recombinant protein of interest with the Gene-A* protein derived from bacteriophage phiX174, without any chemical modifications of ssDNA. By using this method, DNA conjugate with IgG binding protein was constructed and achived sensitive detection of human interferon-γ (IFN-γ) in sandwich ELISA format.

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活性酸素によるウイルス不活化メカニズムの解析とウイルス感染価センシング技術の展望

塩野入 望、田中 剛

東京農工大学 工学府 生命工学専攻
〒184-8588 東京都小金井市中町2-24-16

The mechanism of reactive oxygen species disinfection of
virus and a prospect of virus titer sensing

Nozomi SHIONOIRI, Tsuyoshi TANAKA

Division of Biotechnology and Life Science, Institute of Engineering,
Tokyo University of Agriculture and Technology
2-24-16, Naka-cho, Koganei, Tokyo 184-8588

Norovirus is now known as the most common cause of nonbacterial acute gastroenteritis, and its high resistance against disinfectant such as ethanol is also well known. The use of reactive oxygen species (ROS) for disinfecting viral or bacterial pathogens is becoming a common way because of their high efficiency. We have demonstrated the antiviral activity of ROS, which were generated via fenton-like reaction using copper iodide (CuI) nanoparticles or electrochemical reactions, against feline calicivirus (FCV), a non-enveloped virus commonly used as a surrogate for human norovirus research. Hydroxyl radical generated in our experimental system effectively disinfected FCV, and we found oxidative damages in the outer shell of the disinfected viruses. This article also provides a perspective on the new approach for the determination of viral infectious titer using the oxidative damages as a marker.

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