Chemical Sensors
Vol. 29, No.3 (2013)

 

Abstracts



巻頭言

分析計と検知警報器

矢東亜ディーケーケー 株式会社  執行役員 
バイオニクス機器株式会社  取締役
(化学センサ研究会  副会長)

伊東 哲

東亜ディーケーケー株式会社は、1944年に設立した東亜電波工業株式会社と1945年に設立した電気化学計器株式会社が2000年に合併してできた会社です。ともに戦後pH測定用ガラス膜電極を国産化し分析計を開発・製造・販売する会社として成長してきました。更に、1973年に設立したバイオニクス機器株式会社を2005年に完全子会社として併合し現在に至っています。それぞれにセンサ技術を基軸として環境・プロセス分野でのビジネスを展開しています。

東亜ディーケーケー株式会社とバイオニクス機器株式会社は、同じような原理に基づくセンサ技術を実用化していますが、東亜ディーケーケー株式会社は主に分析計を、バイオニクス機器株式会社は主に検知警報器を扱っています。分析計と検知警報器は同じ測定原理に基づいているとしても目的や性格はかなり異なります。どちらも測定対象物質を定量し結果を表示・記録・伝送することに変わりはないのですが、分析計が決められた濃度範囲の全領域に渡って一定の精度での測定が要求され、且つ、共存する他の物質に対して影響を受けにくいという選択性を要求されるのに対して、検知警報器はある決まった警報設定点(一般には許容濃度(TLV))に対して正確な測定が要求され、共存物質に対する選択性や濃度幅に対する直線性には寛容な場合が多いと思われます。しかし、検知警報器は測定対象物質が存在しない場合のゼロ点の安定性(誤警報を発しない)、測定対象物質が発生した場合の速やかな応答性、長期間のメンテナンスフリー性、そして何よりも小型で安価であることも求められます。つまり分析計と検知警報器は似て非なるものといえます。

 検知警報器の用途としては、可燃性ガスの検知、毒性ガスの検知、そして酸素濃度欠乏の検知などがありますが、近年、地球温暖化問題が取り沙汰されるようになり、温室効果ガスの検知という新たなマーケットの創出も見られます。

 

検知警報器はその目的と性格から感応する仕掛けはセンサといえるような小型のブラックボックスが最適です。化学センサ研究会で研究開発されてきた成果が検知警報器の分野で活躍しているのはご承知の通りです。一方、東亜ディーケーケー株式会社とバイオニクス機器株式会社は、合併以降、化学センサで容易に測定することのできない物質について東亜ディーケーケー株式会社の分析計をダウンサイズして検知警報器に適応する技術を開発してきました。温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)、六ふっ素化イオウ(SF6)、フロン(PFC)、イソプロピルアルコール(IPA)などを非分散型赤外線吸収法(ND-IR法)で検知する警報器、許容濃度(TLV)の低濃度化によって従来の化学センサでは検知できなくなったアルシン(AsH3)を化学発光法で検知する警報器などを実用化してきました。このような取り組みは今後も対象物質や分析手法を拡大して発展させていく予定ですが、更に、このような装置ともいえるような検知警報器/感応する仕掛けをマイクロ化して小型のブラックボックス、即ちセンサといえるようなデバイスに進化させていく研究も行っていきたいと考えています。

 私は、2011年7月から2013年6月までの2年間、バイオニクス機器株式会社の代表取締役社長を務め、本化学センサ研究会の副理事長にも就任させていただきましたが、今年の7月から取締役営業部長の室井憲次に社長を交替しました。今後は室井が主体となって化学センサ研究会への貢献を継続させていただくことになります。私も引き続き東亜ディーケーケー株式会社の分析技術、センサ技術を集約発展させて、バイオニクス機器株式会社の検知警報器ビジネスの発展と、延いては化学センサ研究会の発展に貢献していく所存です。

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トピックス

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東京農工大学・生物システム応用科学府
〒184-8588 東京都小金井市中町2-24-16

Robotic System to Locate a Gas Source

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Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering,
Tokyo University of Agriculture and Technology
2-24-16, Naka-cho, Koganei, Tokyo, 184-8588

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磁性ナノ粒子を利用したがん細胞の挙動解析

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〒464-8603 名古屋市千種区不老町

Cell behavior analysis of cancer cells using
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Mina Okochi, Hiroyuki Honda

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Microengineering techniques such as lab-on-a-chip technologies are emerging as the next revolution in tools for high throughput cell-based analysis. Cell is the basic unit of life with all organisms and exerts its function by pericellular microenvironment, such as extracellular matrix and other cells adjacent to individual cells. We have developed a methodology for cell handling and patterning using magnetic force and magnetite nanoparticles. Magnetite nanoparticles were employed for magnetic cell labeling, and a three dimensional cell culture array has been fabricated using a pin-holder device made of magnetic soft iron and an external magnet for cell behavior analysis. The cell behavior of patterned cancer cells associated with stromal fibroblasts was investigated by image analysis. Also, on-chip gene expression analysis system employing a magnetic beads-droplet-handling was developed, and applied for clinical detection of cancer cells.

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