Chemical Sensors

Vol. 26, No. 1 (2010)


Abstracts


化学センサ技術による新しい健康市場の創出

化学センサ研究会 副会長  谷田 千里

(株式会社タニタ 代表取締役)

 日本人の生活習慣の変化や高齢者の増加により、糖尿病等の生活習慣病の有病者と予備群が増加しており、生活習慣病を原因とする死亡は、全体の約3分の1にものぼると推計されている。増加する膨大な医療費も深刻であり、平成19年の厚生労働省白書は、全体の医療費32.1兆円のうち、生活習慣病に関係する医療費は10.4兆円と報じている。政府は「特定健診・特定保健指導」、いわゆるメタボ検診により、病気になるリスクが高まった段階から生活習慣を改善して病気を予防する取り組みを開始した。この施策には、「予防」の重要性に対する国民運動を展開することで、増加する医療費の適正化を推進する狙いがある。これらの社会的背景より、今後、健康保険制度の改革とともに医療市場・健康市場も大きく変わっていくものと予測される。

 医療機器の技術動向としては、病院などの検査室で計測する大型装置から、即時検査を可能にする卓上のベットサイド装置、在宅で使用できる小型・携帯型装置へ、ニアーペイシェント(より患者のそばへ)と呼ばれる変革がおきている。技術の進歩とともに、機器が家庭に入り込み、生体情報が簡便に、リアルタイムに計測できる方向に進むと考えられる。生活習慣病を予防する観点では、体組成や血圧等、毎年の健康診断のスポットデータではなく、日常の変化を計測することで、メタボリックシンドロームの早期発見を促し、結果的に早期の受診へつなげることが可能になる。また、尿糖計や歩数計等を活用することにより、バランスの取れた食事や適度な運動習慣へ生活習慣を見直すことが可能となり、メタボリックシンドロームの指標を改善することが出来る。

  化学センサの分野では、@新しいバイオマーカの探索、Aマイクロ化学分析システムの進展、B家庭での使用を目指した小型・簡便化、に関する研究が期待される。新しいバイオマーカの探索では、遺伝子やタンパク質の疾病マーカや尿で計測するガンマーカ、活性酸素の影響を計測する酸化ストレスマーカ等がセンシング技術とともに研究されている。また、マイクロ化学分析システム技術の研究では、微細加工技術を利用して流路やセンサアレイなどを微小化し、必要な試薬や検体の量を大幅に低減して、測定時間を短縮化するとともに、ポータブルな大きさを実現する研究が進められている。たとえば、遺伝子を分析するDNAチップは実用化が着実に進んでいる。家庭での使用を目指した小型・簡便化の研究では、まずは計測が非侵襲・無拘束であること、キャリブレーションなどの取扱いが簡便であること、そして低コストに供給できることが求められている。これまでに血糖自己測定器や尿糖計等、携帯可能なグルコースセンサーやコレステロールセンサー、唾液で精神的ストレスを計測するアミラーゼセンサー等が製品化されており、簡便かつ低コストに使用できるよう改良されることで、今後の発展が大いに期待される。  

  タニタは、「健康をはかる」の旗印の下、世界初の体脂肪計付き体重計や体組成計、ウェブによる会員制の健康管理サービス「からだカルテ」など、常に先進の健康機器・サービスを世に送り出している。そのはかる技術は携帯型デジタル尿糖計や3Dセンサ搭載歩数計、活動量計「カロリズム」といった周辺分野へと拡大してきた。化学センサの分野は、健康の「見える化・技術」にソリューションを提供するキ−技術であり、新しい健康市場の創出のチャンスも多い。本研究会が、産官学の密接な連携の架け橋となり、化学センサの分野をさらに大きく発展させることを心から期待したい。


触媒集積化マイクロ熱電式ガスセンサを用いた呼気中微量ガス分析

西掘 麻衣子、申 ウソク、松原 一郎

産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門
〒463-8560 愛知県名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2269-98

Micro Thermoelectric Gas Sensor with
Catalyst Combustor for The Detection of Gases in Breath

Maiko NISHIBORI, Woosuck SHIN, Ichiro MATSUBARA

Advanced Manufacturing Research Institute
National Institute of Advanced Industrial Science & Technology,
Shimo-Shidami, Moriyama-ku, Nagoya 463-8560, Japan

The sensing performance of the thermoelectric hydrogen sensor (THS) aimed at the application to the human breath hydrogen (H2) analysis was demonstrated. We have designed a simple human breath analysis system with this sensor, gas pump and dehumidifier of silica gel. The humidity of the human breath gas was controlled to be as low as 20%RH at 25℃ through the gas drying tube, because the humidity in the human breath gas causes serious noise effect. The THS system was able to detect 4~103 ppm of H2 in human breath sample which is coexisted with various gases such as methane (CH4) and carbon monoxide (CO).


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