Chemical Sensors

Vol. 24, No. 3 (2008)


Abstracts


信じよう! 感動しよう!

中川 英元

(東京大学先端科学技術研究センター人工生体機構分野 客員研究員)

  タイトルに信じるとか、感動するとかといった単語が入っていると、新興宗教をイメージされる方もいらっしゃるかもしれない。実際のところ、信じるとか感動する行為そのものは対象が宗教であろうと愛であろうと、共通のものかもしれない。しかしここでは研究に関連するかたちでお話をさせて頂きたい。

  最近の若者は総じて覇気がなくなっているといわれているし、小生もそう感じる。覇気がなくなっているのは若者だけでなく、私自身を含めた日本人一般にいえるとも思うのだが、日本の未来を担ってほしい若者にその傾向が顕著である。学生や若い研究者の方と話していても素直というか、実に物分りのよい人たちばかりである。実際学生に“今の学生は覇気がないね”と問いかけても、“おっしゃるとおりですね“という素直な答が返ってくる。かつては自分の研究テーマ以外にはほとんど興味を示さないが、自分の研究テーマの話では、堯舌に夢や方法論を語り続ける人種が少なからずいたように思う。今でも研究が好きで測定装置の製作や材料の加工法を試みることが楽しくてという学生もいないわけではないが、半ば義務感のように感じて研究を進める学生が主流を占めるようになってきた。いわゆる引きこもり状態に陥る学生もいないわけではない。

 社会の成熟化、人的コミュニケーションの不足、科学技術に偏重した社会の発展、パソコンやゲーム機の普及、ユビキタス時代に象徴されるインターネットの普及による情報の氾濫等々、さまざまな原因が指摘されている。おそらくどれもが正しい指摘なのだろう。それぞれの要因が絡み合って現代人の意欲を阻害していて、ある要素がどの程度意欲の低下に影響しているかは個人ごとに異なっていて当然である。いくつかの要因についてはすでに外国で経験され、曲がりなりにも解決されている問題もある。ここでは、今後ますます大きな問題になるであろうユビキタス時代の情報氾濫に限って持論を述べさせていただく。

  ユビキタス時代といわれ、研究に必要な文献はほとんどいつでも検索、ダウンロードできる研究にとって理想的な環境が現実のものになった。しかしこのことが研究の競争を加速させ、簡単にアクセスできる大量の情報を消化しきれずに自分の研究の位置づけが不明という事態を引き起こしかねない皮肉な時代にしてしまったのである。インターネットの発展により、新しい発見や技術開発の情報は瞬く間に全世界に流され、世界の注目を浴びる。しかも経済のグローバル化、あるいは研究の効率化(このことは大きな間違いだという個人的見解をもっているが)により、研究予算はそれを乗り越えるようなテーマに重点配分される。競争は否が応でも激化する。他方インターネットの特徴として、誰でもが情報発信者になれるためインターネットには玉石混交の情報があふれかえっている。小生のような無知蒙昧の輩にはどれが玉でどれが石なのか判断がつきにくい。若い人たちが戸惑ってしまうのも無理はないし、そのことが若い人たちの表面的な物分りのよさや研究への姿勢に影響を与えていないだろうか。研究の覇気を取り戻す万能的な解決策といった提案はできないが、小生の経験で効果的と思うのは、個人的に直接学生と対話することである。できれば何か小さな成功体験をしてもらい、それに感動してもらうことである。

  最後に小生の感動体験を書かせていただきたい。本会元会長の山添f先生が現在も酸化物半導体センサの研究を続けられ、抵抗値の粒径依存性について空乏層を考慮した理論でうまく説明されていることを最近知って感動を受けた。先生は野菜作りに専念されていると思い込んでいた小生の失礼をお詫びするとともに見過ごしていた無知を恥じ、小生もがんばらねばと反省するこのごろである。


ストレス計測評価用マイクロ流体
システムのプロトタイプ開発
−ストレスや健康を手軽に計ることを目指して−

脇田 慎一、田中 喜秀、永井 秀典、宮道 隆

産業技術総合研究所 健康工学研究センター
〒563-8577大阪府池田市緑丘1-8-31

Research and Development of Microfluidic Biosensing System
Towards Convenient Stress/Health Monitoring

Shin-ichi WAKIDA, Yoshihide TANAKA, Hidenori NAGAI, and Takashi MIYADO

Health Technology Research Center
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
1-8-31 Midorigaoka, Ikeda, Osaka 563-8577, Japan

To make convenient monitoring of human stress and/or health, we have focused on R & D on microfluidic biosensing system using Lab-on-a-Chip technology for several years since the establishment of National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) in 2000. Under the lifescience research unit, which contains the basic science of molecular and chemical biology and the applied human and biological engineering, we have developed several kinds of prototype of microfluidic biosensing systems towards stress/health monitoring. In this paper, we introduce a brief review of 4 topics among our prototype developments and demonstration studies.


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