Chemical Sensors

Vol. 22, No. 4(2006)


Abstracts



何でも屋

南戸 秀仁

金沢工業大学 高度材料化学研究開発センター教授

Utility Man

Hidehito NANTO

 阪大の原子力工学専攻で博士号を取得した後、金沢工大に着任して、化合物半導体薄膜の研究に着手した。その際、研究対象としたZnO透明導電膜の電気的特性を調べるうちに、皮膜作成後、室内に放置されたZnO薄膜の抵抗が変化する現象と遭遇した。その原因を学生と調べていくうちに、ZnO表面でのガスの吸脱着が原因であることがわかった。当初の研究目的では、ZnO薄膜の抵抗が変化しては困るのだが、新しい現象に遭遇すると、それを何とか応用できないかとすぐ考えてしまう私の習性のため、次の年には研究室の研究テーマに「ZnO薄膜を用いたアンモニアガスセンサの研究」が掲げられた。その1年後、ZnO薄膜を用いたアンモニアガスセンサというタイトルで、Transducers国際会議(サンフランシスコ)で講演発表したのが、ガスセンサに関する私の最初の発表であった。発表後のコーヒーブレイクでは、山添先生から声をかけて頂き、化学センサ研究会への入会を勧められた。帰国後、入会し、研究会で活動するようになって、早いものでもう十数年が経つ。最近では、「においセンサシステムの開発」が私のライフワークとなり、研究室でも、主要な研究テーマになりつつある。ただ、なんにでも興味をもつ習性から、その後、放射線センサなどの研究にも手を染め、テーマ的にはやや発散気味である。しかし、近年、企業との連携の下、「においセンサ搭載のユーティリティロボット番竜」の商品化、「医療診断用X線イメージセンサ」の商品化にこぎつけ、研究室で生まれた成果を製品化につなげることができた。
 学位取得以来、四半世紀にわたって、大学人として教育・研究に携わってきたが、常に若い学生と接しているせいか、色々なことに興味を持ち、研究テーマに関しても、面白いことが現れれば、すぐに計画変更して、枝葉の研究に入り込んでいく。しかもそれが自分の専門外であろうともおかまえなしという姿勢で、ただひたすら前を向いて、夢を実現すべく、学生と共にがんばってきた。お陰で、最近は自分の専門分野がなんであるか、一言で言い切れない状態である。学生時代は、電気工学(高専・大学)、電子工学(大学修士課程)および原子力工学(大学院博士課程)を学び、大学院時代の女子大文学部の物理の非常勤講師を皮切りに、大学では、電気工学科、電子工学科、物質システム工学科、先端材料工学科およびロボティクス学科と渡り歩きながら教鞭に携わり、研究面においては、イオン結晶の光物性、絶縁体と放射線の相互作用、化合物半導体を用いた透明導電膜および薄膜EL素子の開発、「味」および「におい」センサシステムの開発、医療診断用X線イメージセンサの開発などなど、多義にわたる研究を、産学官連携のもと推進してきた。この25年間の教育・研究活動から培われた私の武器は、色々な分野を勉強し、色々な分野で教育・研究を推し進めた「なんでも屋」なのかなーと思う。新しい発想や独創的なアプローチは、何もないところからは生まれない。ほとんどの場合はアナロジーにより新しいアイディアが生まれるのではないか(ある分野では常識的な技術や考え方だが、それを他の分野へモディファイして持ってくるだけで、その分野では独創的で新しい技術や考え方となる)?色々な分野を渡り歩き、色々なことを経験したことが、研究・教育において私独自のアプローチを可能ならせしめているのではないか?そのおかげで何とか、ここまで大学人としてやってこられたのではないかなーと思う。
これからも貪欲に興味のむくまま、研究をすすめていきたいと思う。私の武器である「なんでも屋」の刃をさらに磨きながら!




爆薬類検出用超高感度SPR免疫センサ

川口 俊一1、デシン ラビ シャンカラン1,2、松本 清3、 都甲 潔4、三浦 則雄1

九州大学 産学連携センター プロジェクト部門1、〒816-8580 福岡県春日市春日公園6-1
日本学術振興会2、〒102-8471 東京都千代田区一番町6
九州大学 大学院農学研究員 生物機能科学部門3、〒812-8581 福岡県福岡市東区箱崎6-10-1
九州大学 大学院システム情報科学研究員 電子デバイス工学部門4
〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744

Ultra-Highly Sensitive SPR Immunosensor for Detection of Explosives

Toshikazu KAWAGUCHI1, Dhesignh Ravi SHANKARAN1,2, Kiyoshi MATSUMOTO3, Kiyoshi TOKO4, Norio MIURA1

1Art, Science and Technology Center for Cooperative Research, Kyushu University
6-1 Kasuga-kouen, Kasuga-shi. Fukuoka 816-8580, Japan
2Japan Society for the Promotion of Science
6 Ichibancho, Chiyoda-ku, Tokyo 102-8471, Japan
3Graduate School of Agriculture, Kyushu University
6-10-1 Hakozaki, Higashi-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 812-8581, Japan
4Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University
744 Motooka, Nishi-ku, Fkuoka-shi, Fukuoka 819-0395, Japan

   There is an expanding concern on the international terrorism and weapons of mass destruction all around the world. Thus, the development of novel sensing methods for identification and quantification of explosive molecules is an important analytical challenge to promote safety, security, health of human. Surface plasmon resonance (SPR) based immunoassays have great potential in this respect because they offer exceptional performance with respect to sensitivity, specificity, speed and multianalyte detection in complex matrices. In our research group, we have been engaged in the development of high performance SPR immunosensors for detection of explosive molecules, in particular 2, 4, 6-trinitrotoluene (TNT). TNT is a prime component of the landmines and bombs used by terrorist and military forces. In this review, the interesting results observed in the development of SPR immunoassays for TNT were discussed. We fabricated highly reliable and commercially affordable immunosensors by simple physical adsorption as well as self-assembly methods. Home-made and commercial antibodies were used for the immunoassay. Quantification of TNT was done based on simple and highly effective indirect competitive immunoassay principle. Our immunosensors are ultra-highly sensitive down to several ppt levels with good selectivity. The immunosensors are highly regenerable and could be used for more than 100 cycles with original response. A single measurement can be done within 2 min. Our SPR immunosensors exhibit highly desired sensing characteristics with exciting opportunities in developing portable detection systems for on-site application in aviation security and environmental monitoring.


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