Chemical Sensors

Vol. 20, No. 4 (2004)


Abstracts



『安全』への願い

内山 俊一

埼玉工業大学工学部 教授

 

Fascination of Sensor Research

Shunichi UCHIYAMA (Saitama Institute of Technology)

 

 数ある科学技術の研究分野の中でセンサ研究はどの様な魅力に富んでいるのであろうか。センサを用いる測定は濃度と物理信号の相関性に基づくものであるが、新しい相関性を発見したときの喜びは何ものにも代えがたいものがある。その意味で、独創性や創意工夫が生かせるセンサ開発の研究は大変魅力があるのではなかろうか。大学に籍を置く者として、若い学生が研究室に来るようになってから日増しに研究に興味を持っていく様子を眺めるのは教師冥利につきるものがある。
 筆者は20年近く前、助教授になりたての頃、米国デラウエア大学のRechnitz教授のもとで博士研究員として1年間研究する機会を得たが、その時、Rechnitz研究室の設備、機器が極めて平凡なものしかないことに大変驚いたことをよく覚えている。Rechnitz先生は30歳で100報論文を出された方で電気分析化学やバイオセンサの分野で大変有名な教授である。留学する前はNatureやScienceにバイオセンサの論文を出している研究室というものがいかにハイレベルな空間であるかという思いが強かったが、設備に関しては当時の埼玉工業大学の筆者の研究室とほとんど変わりがなかった。しかし、その後、研究を開始してからデータをまとめ自分なりに論文原稿をまとめて教授に提出し、その後戻ってきた訂正原稿を読んだところ、全く同じデータを用いて論文を書いているのに論文の質がこんなに違うものかと驚いた。研究の意味づけ、価値づけにおいて私と先生では決定的な差があったのである。そこで、センサ研究には斬新なアイデアが極めて重要なものであり、またその源泉は個人の頭脳であることを思い知らされた。精製酵素を固定化して酵素センサを作製することが未だ目新しかった1970年代に、動植物の組織が天然の固定化酵素であるとの着想で生物組織のスライスを電極に装着して酵素センサを作るというようなアイデアはどのようにして生まれるものなのかを知りたくて先生に伺ったところ、“毎日勤務時間になってから一生懸命考えてもアイデアなんか出ない。むしろ朝起きて歯を磨いている時のように全く関係ないことをしている時に突然ひらめくのだ”との返事が返ってきて大変困惑したことを記憶している。従って、先生は個人の着想を大事に育てるという意味で、若い人への研究テーマ設定は必ず一度は本人に考えさる方針をとっておられた。私は花びらが大変良い香りがするので、花弁にはきっとある種の一連の代謝反応があり、活性の高い酵素群が存在するはずだとの認識で酵素センサの作製に取り組んだのであるが、残念なことにこのテーマは筆者ではなく先生の着想によるものであった。
 こんなことを書いたのも、最近は大型プロジェクトばやりで研究費の獲得額などが大変重要視される向きがあるが、昔から案外素朴な装置でも研究費のかからないアイデア次第で多くのブレークスルーがなされてきたのではないだろうかといことを言いたかったのである。調べてみると本当にオリジナルな最初の研究は個人のアイデアと努力で、周囲にその価値を認められることなく達成されたものが多いということが明らかになる気がするのである。その意味で、研究目的のあらかじめ決められたプロジェクトばやりの昨今だからこそ、個人の自由な発想に基づく研究センスを磨くことを特に若い研究者の方々に期待する次第である。




人工系の分子設計とバイオセンシングへの応用

春山 哲也

九州工業大学大学院 生命体工学研究科・教授
〒808-0196 福岡県北九州市若松区ひびきの2-4 北九州学術研究都市

 

Biosensing with Designed Artificial Systems

Tetsuya HARUYAMA, Professor
Department of Biological functions and Engineering
Kyushu institute of Technology
Kitakyushu Science and Research Park,
Wakamatsu-ku, Kitakyusyu, Fukuoka 808-0196, JAPAN

 

Many types of biosensors and its principles have been developed and reported. A part of these achievements are taking into the market as commercial products especially for clinical purpose. However, resent great development of related research fields may give novel principles for biosensors to open new applications. To take one example of many concepts, cellular/tissuer biosensing is a new concept to open next application of biosensors. Cells represent the minimum functional and integrating communicable unit of living systems. Cultured cells both transduce and transmit a variety of chemical and physical signals, i.e. production of specific substances and proteins, throughout their life cycle within specific tissue and organs. Such cellular responses might be usefully employed as parameters to obtain chemical information for both pharmaceutical and chemical safety, and drug efficacy profiles in vitro as a screening tool. By using the cellular / tissuer engineering and molecular biology methods, signal transmitting and signal amplification has been achieved to perform cellular biosensing. Simulation technology of molecular designing technology may promises sophisticated construction of molecular transducer. In this paper, two examples of research by using either genetic engineering or molecular designing are presented. These technologies may promise novel principles and systems of biosensor for especial application.






 

生体分子のリアルタイム計測を目的とした マイクロセンシングデバイス

林 勝義・岩崎 弦



NTTマイクロシステムインテグレーション研究所
〒243-0198 神奈川県厚木市森の里若宮3-1

 

Micro Sensing Devices for Real-time Measurement of Biomolecules

Katsuyoshi HAYASHI, Yuzuru IWASAKI

NTT Microsystem Integration Laboratories
3-1, Morinosato, Wakamiya, Atsugi, Kanagawa 243-0198, Japan

 

It is required to monitor biomolecules level at real-time for studying various biological phenomenon, diagnosis and medical treatment. To realize the real-time monitoring of biomolecules, miniaturized sensing devices have been recently developed using a microfabrication technique. This review introduces on-line microfluidic sensing devices and a miniaturized needle-type sensing device using electrochemical and surface plasmon resonance method for monitoring biomarkers.




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