Chemical Sensors

Vol. 18, No. 3 (2002)


Abstracts



水素との長い付き合い

石川 博

新コスモス電機株式会社・常務取締役(化学センサ研究会副会長)

Long Journey with Hydrogen

Hiroshi ISHIKAWA

New Cosmos Electric Co.,Ltd.


 筆者と水素との関わりは、1974 年に通産省(現経産省)工業技術院において水素エネルギー技術研究開発(現WE-NET計画)が開始された時に始まる。当時大阪工業技術試験所(現産総研関西センター)に勤務していた筆者は、水の熱化学的分解による水素製造の研究に始まり、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵、ケミカルヒートポンプ、ニッケル−水素電池等の研究に従事し、固体高分子電解質型等の各種燃料電池の研究開発にも関わってきた。1999年から新コスモス電機株式会社に勤務しているが、昨今の車載用あるいは家庭向けコジェネレーション用燃料電池の実用化開発が盛り上がるなかで、水素センサ等のガスセンサも新しい市場を形成しつつある。水素吸蔵合金は、いわゆる水素エネルギーとは少し離れた二次電池の分野において一足先に日の目を見た。30年近く水素と付き合ってきた人間として、何らかの関わりがあった技術が世に出て行くこと、あるいは、センサという周辺技術であっても、水素エネルギーとの関わりが持てることは大変ありがたいことと感謝している。
 さて、水素と言えば、上記のような将来のクリーンエネルギー、あるいは、ロケット燃料、石油精製や化学工業で使われる原料というイメージが強い。一方、水素ガスとして常に身近に存在する一般的な物質であることは意外と知られていない。大気中には通常1 ppm 程度の水素ガスが存在する。ある種の細菌は代謝の過程で水素ガスを発生させる。白アリはメタンなどとともに水素ガスを出す。人間の“おなら”や“呼気”にも水素ガス(腸内細菌由来?)が含まれ、学校の教室など人が集まる場所での炭酸ガス濃度と水素ガス濃度の間には良い相関がある。なお、常識に近いことではあるが、タバコの煙や燃焼排ガスには少なからぬ水素が含まれ、不完全燃焼時やくん焼状態においては一酸化炭素とともに大量の水素ガスが発生する。近年、選択性が高く高感度の水素センサが開発され、また、ガスクロマトグラフ的な手法を併用することによって、簡便にppmオーダーの水素が測定できるようになった。漏洩水素の検知すなわち爆発防止という観点からだけでなく、住環境における健康や安全といった面からも水素センサの出番があるように思われる。
 ところで、半導体式に限らず、水素の検知過程で水素の酸化すなわち水の生成を伴うセンサは、動作温度により湿度の影響を大きく受ける。酸化物半導体の抵抗値は湿度によっても変化する。また、湿気と大気中に存在する微量水素との相乗作用も考えられる。湿度の影響が大きいセンサは現場ではほとんど使い物にならない。定常状態はまだしも、湿度が変化した場合の過渡特性や温湿度特性の経時変化は極めて厄介である。新しいセンサの研究発表は多いが、湿度の問題を深く吟味したものは少ないように思われる。識者の方々には是非この辺りの理論的解明をお願いしたい。


非侵襲計測用ウエアラブル化学センサと 匂い情報計測用バイオ・スニファー

三林 浩二

東海大学電子情報学部情報科学科・助教授
未来科学技術共同研究センター・研究プロジェクトリーダー
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目1117 番地

Wearable Chemical Sensors for Non-invasive Monitoring and Bio-sniffer Devices for a Smell Informatics

Kohji MITSUBAYASHI

Department of Human and Information Science, Future Science and Technology Joint Research Center, Tokai University
1117 Kitakaname, Hiratsuka, Kanagawa 259-1292, JAPAN

Several kinds of wearable chemical sensors were constructed by microfabrication techniques for monitoring biochemical substances. The wearable oxygen sensor (thickness 84 μm) was calibrated against dissolved oxygen from 0 to 8.0 mg/L, and was successfully used to monitor the transcutaneous oxygen pressure by applying the device onto the forearm skin surface. Tear fluid conductivity was possible to be measured by applying the wearable sensor to the human subject’s temporal lower cul-de-sac, thus evaluating electrolyte concentration and turnover rate in tear for normal, healthy volunteers and dry-eye patients. Biochemical gas-sensors (bio-sniffer devices) for ethanol, acetaldehyde and formaldehyde in the gas phase were developed using a enzyme immobilized membrane and a reaction cell with both gas and liquid phase compartments separated by a porous diaphragm membrane. Flavin containing monooxygenase (FMO, one of drug metabolism enzymes) was also used for constructing the bio-sniffer devices for trimethylamine, methyl mercaptan, etc. The concentration change of breath ethanol after drinking could be evaluated by the stick-type bio-sniffer. The bio-sniffer technique is expected to contribute for developing an intelligent nose system.



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