Chemical Sensors

Vol. 17, No. 3 (2001)


Abstracts



匂いと味の計測

高田通之助

(株)島津製作所 分析機器事業部 副事業部長

Measuring a Smell and a Taste

Michinosuke TAKADA

Deputy General Manager, Analytical Instruments Division, Shimadzu Corporation


 ヒトの五感をセンサーに置き換えて数値化しようとする試みの中で「視覚」、「聴覚」、「触覚」では早くから物理センサーが開発され技術開発が進み、ヒトの感覚をはるかに上回る感度のものが実用化されている。 それに対して「味覚」と「嗅覚」については近年になってようやく「化学センサー」で計測する試みが始まったところである。「味覚」や「嗅覚」は、前の3 者に比較して、生活習慣や時代背景に影響を受けることが少なくないために、数値化の研究がはばまれてきた。また、「嗅覚」のように、物質によっては極微量では芳香を感じるものが、濃度が高くなると悪臭に転ずる非線形性の大きい現象などは、化学センサーによる測定を難しくしている。また、ソムリエがワインの味や香りを評価する時の表現方法が極めて文学的であることからわかるように、臭い(香り)の違いを数値化しようとする時の座標軸の表現が大変難しい。わかりやすくしようとすると何かの物理量を物差しに持ってくればよいのだが、まだ学問的に評価の定まったスケールは無い。たいていは、主成分分析による第1 主成分、第2主成分などの成分値を座標軸に持って来て表示するが、このような表現は従来行なわれてきた官能検査の結果と感覚的に一致させることが難しく、使用者に不満が残る事が多い。化学センサーは人の器官と違って疲れや慣れがなくて、長時間の連続測定には極めて好都合なのであるが、座標軸の問題は大きい。色彩の違いを色度座標で表現しているように、匂い(臭い、香り)の違いを表現する座標系が確立されることが望まれる。「味覚」はヒトの舌での感覚であるが、本来WET 状態での感覚であるため、化学センサー向きのテーマであるといえるかもしれない。しかし、こちらの方も「嗅覚」に輪を掛けて難しい課題が多い。糖度計、塩分計までの範囲では市販の計測器が多いが、苦味、辛味、さらには旨味までくると汎用の計測器にすることは不可能に近い。WET なセンサーの寿命の短いことも実用化をはばんでいる理由の一つと考えられる。「味覚」や「嗅覚」のような感覚の計測結果は、数値で表現するのではなくて、新しい表現法(例えば、パターン表現など)が必要になるのではないだろうか。研究者の立場からすれば官能検査のような曖昧さの残るものをセンサーに置き換えていこうという姿勢を取るのは当然で、この「化学センサー研究会」が存在するための拠り所の一つでもあるわけだが、一方、何でもかんでも計測して客観的に評価できるようにという考えは、工業的には有効な側面もあるが、行き過ぎると生活が何か味気ないものになるような気がする。「味覚」や「嗅覚」などは、芸術などと同様に人間の属性としての「主観」を大切にしていくべきものかもしれない。世の中が科学的になればなるほど、香道、茶道など生活に潤いを与える文化を大切にしていかなければならないと思う。


エレクトロニックノーズ(人工電子鼻)
−水晶振動子を用いたガスおよびニオイセンサシステムの開発−

南戸 秀仁

金沢工業大学 高度材料科学研究開発センター
〒924-0838 石川県松任市八束穂3-1

Electronic Nose- Gas Sensors Using Quartz Resonator Microbalance

Hidehito NANTO

Advanced Materials Sceicne R&D Center,Kanazawa Institute of Technology
3-1 Yatsukaho,Mattou,Ishikawa 924- 0838,JAPAN

Researches on electronic nose system using quartz crystal microbalance (QCM) gas sensor, including our research on functional design of electronic nose using polymer-film coated QCM gas sensors for environmental monitoring, based on the solubility parameter of sensing membrane and gases, have been reviewed in this paper.



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