Chemical Sensors

Vol. 15, No. 1 (1999)


Abstracts



会長就任挨拶

逢坂 哲彌

生命工学工業技術研究所・研究室長

Greeting from new chairman of Japan Association of Chemical Sensors

Tetsuya Osaka

Nat'l Inst. of Biosci. & Human-Technol.



 1999年より本化学センサ研究会の会長を仰せつかった早稲田大学の逢坂哲彌です。日本における化学センサ研究はその伝統ある歴史と研究者人口の多さでは世界で一際目立つもので,その環境下での本会会長職は大変光栄であると共に身の引き締まる思いがします。
 私共早大グループが本格的に化学センサに取り組みだしたのは,絶縁性ポリピロール膜という微小pHセンサに適する電解重合膜を見つけ出してからです。これをもとにイオンセンサ,バイオセンサ等々面白さに引かれて展開し,現在ではキラルセンサといった分子の光学異性体の識別センサを作ってみたいと思ったりしています。
 日本における化学センサの発展を見ると,ガスセンサがまず最初に工学的応用分野を広げ,とりあえず一段落したような感があります。この分野は金額的大きさからいったら,それ程大きいわけでもありません。しかし,これからのこの分野は外部情報を複合的に取り込んで高いレベルの生活環境コントロールなどが必要となってきている”環境問題”,”高齢化社会問題”というような時代に,最も必要な技術開発分野の一つであると感じています。高齢者一人住まいの人間生活情報モニタリングやセンシングと,周りの環境情報をコンピュータ技術に取り込ませることが出来る貴重な技術です。このセンシングをデバイスと一体化するなど未来技術としては魅力あるテーマと思われます。1998年のECS秋期大会(ボストン)で印象的だったのですが,たまたまIBMフェローのRommankiw博士がエレクトロニクスデバイスのシンポジウムを組み,私が招待講演でよばれたシンポジウムで,若いこれからの人たちが,数百万ドルレベルの研究資金を得てマイクロマシーニングの分野でセンサをデバイスに組み込む仕事を展開しているのを目の当たりに見て,強い印象を受けて帰ったのを覚えています。
 ”化学センサ”の分野をより大きい強力なものに育て上げて行ける研究会を願って,微力ながら協力して行きたいと願っています。



イオン電極法による細胞膜透過性変化の測定

勝 孝

岡山大学薬学部
〒700-8530 岡山市津島中1-1-1

Cell Membrane Pharmeability Assay Using Ion-Selective Electrodes

Takashi Katsu

Faculty of Pharmaceutical Sciences, Okayama University
1-1-1 Tsushima-naka, Okayama 700-8530, Japan

Our studies on the application of ion-selective electrodes to cell membrane permeability assay were reviewed. We presented three examples: 1) determination of changes in the permeability of cell membranes using a K+-selective electrode; 2) determination of histamine release from mast cells using a histamine-sensitive electrode; 3) determination of pH differences across cell membranes using a methylammonium-selective electrode.




高精細技術―フィルム上に 0.05 μmの精度で微細な三次元構造を複製する―

青木 尚三

住友スリーエム(株) 技術本部開発部

Microstructure Technology

Shozo Aoki

 3M社は長年にわたり,ユニークな製品開発をしてまいりました。今回,皆様のご研究のご参考にしていただくとともに,化学センサーのお立場から皆様から私どもへご指導を賜りたく,その技術の一端をご紹介致します。
 3M社の中核技術はテクノロジープラットフォームという言葉で語られます。テクノロジープラットフォームとは,複数の市場に複数の異なった製品を開発する発展性を備えた技術基盤のことです。さまざまな分野の独自技術を派生分化させて組み合わせることによるシナジー効果(相乗効果)が次々と新たな製品を生み出しています。現在3M社は30を超えるテクノロジープラットフォームを確立しています。ここでは,その一つである高精細表面テクノロジープラットフォーム(Microstructured Surface Technology Platform)を紹介致します。
 これは,フィルムなどの表面を微細に加工し,1 μmから500 μm程度の三次元構造体を構築する技術です。その最大の特徴は加工精度が0.05 μmと高精度で,光学分野の要求にもこたえることができることです。また,使い捨てのおむつにも使えるくらい,コストパフォーマンスにも優れています。
 OHPは3M社が開発した製品ですが,投書はガラス性のレンズを使っていたので,重くしかも高価でした。そこで,1950年代後半から,図1のようなフレネルレンズの開発を着手し,薄くかつ安いレンズの製品化を目指しました。その家庭で樹脂表面に無数の小さな溝を精度よく作る技術が誕生し,その後,連続で成形加工できる技術が開発され,目的を達成しました。現在では,高精度表面テクノロジーを応用した多数のユニークな製品が,さまざまな分野で活躍しています。以下に,いくつかの代表例を示し,具体的に説明します。
(以下省略)



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