Chemical Sensors

Vol. 12, No. 2 (1996)


Abstracts



酸化スズ半導体ガスセンサ

高 橋  祥 夫

新コスモス電機(株)・常務取締役 研究開発本部長

Tin Oxide Semiconductor gas Sensor

Sachio TAKAHASHI

New Cosmos Electric Co.

 酸化スズ半導体ガスセンサを搭載した家庭用ガス警報器の量産化が開始されたのは1969年初頭の事であった。その後、各種触媒の添加、フィルター材料との組み合わせ、作動温度条件の工夫などにより、ガス感度が上がり、識別性が向上し、また長期安定性も確保できるようになった。それとともに、酸化スズ半導体ガスセンサの用途は携帯用ガス検知器や工業用定置式ガス警報器の分野にも拡がり、また家庭用についても一酸化炭素警報器や、ガス漏れと一酸化炭素の複合警報器が登場してきた。
 現在までに使用されてきた酸化スズ半導体ガスセンサの数は数千万個に及び、四半世紀にわたって家庭及び産業の安全確保に大いに役立ってきたと言えよう。
このような状況を振り返って改めて感じるのは、世界に先駆けて酸化スズ半導体のガスセンサ特性を発見された清山九州大学名誉教授及びいわゆる町の発明家の田口氏の偉大さである。
 酸化スズ半導体ガスセンサの有用性は今後も変わらないであろうが、センサの構造は変貌して行き、使われ方はさらに多様化して行くものと思われる。センサの構造はより小型化、省電力化、量産性を志向したものになろう。一方、各種ファインテクノロジーの駆使による識別性の向上を踏まえて、検知対象ガスの種類が増えるとともに、制御回路上の工夫も加えてガス感度がさらに高まって行くことが期待される。
 しかしながら、常に忘れてはならないのは長期安定性の更なる確保であろう。その点に関して、酸化スズと水蒸気との長期にわたる相互作用や、いわゆるエージング工程中の酸化スズの変化過程など、まだまだ本質を解明すべき課題が残っていると思われる。長期安定性のみの研究となると、地味でかつ長期間を要するのに比して、得られる見た目の成果は乏しくなりがちである。だがこの努力なしでは本当の意味で、酸化スズを使いこなしたとは言えないのではなかろうか。
 当研究会の皆様方のご指導・ご協力を得て、酸化スズ半導体の“全貌”を把握することができれば、わが国で生まれ、育まれた貴重なガスセンサテクノロジーの一層の発展が期待できるものと信じている。




バイオセンサ

長谷部 靖

埼玉工業大学工学部
〒369-02 埼玉県大里郡岡部町普済寺 1690

Chemical Sensors 1995 - Biosensors

Yasushi HASEBE

Department of Environmental Engineering, Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji, Okabe, Saitama 369-02, Japan

はじめに
 1960年代に誕生したバイオセンサは、バイオテクノロジー、マイクロマシーン技術、ナノテクノロジーの進展とともに発展し、現在では、より実用を目指した様々な試みが展開されている。本稿では、1995年度に主に分析化学関連の専門誌に掲載されたバイオセンサ関連の総説、研究論文を中心に紹介する。1995年度には、前年度ローマで開催された第5回化学センサ国際会議での発表論文が「Sensors & Actuators B誌」に掲載された他、“バイオエレクトロニクスの新展開”と題する論文特集号が「電気化学および工業物理化学誌」12月号に掲載されるなど、研究論文も年々急増している。したがって、そのすべてを網羅することは筆者の能力を越えているため、詳細については他のすぐれた成書、総説を参照されたい。




バリスタ型ガスセンサ

江頭  誠、清水 康博、高尾 雄二

長崎大学・工学部、海洋生産科学研究科
〒852 長崎市文教町 1-14

ZnO- and SnO2-based varistors as gas sensors

Makoto EGASHIRA, Yasuhiro SHIMIZU and Yuji TAKAO

Department of Materials Science and Engineering, Faculty of Engineering, Graduate School of Marine Science and Engineering, Nagasaki University
1-14 Bunkyo-machi, Nagasaki 852, Japan

Sensing properties of ZnO- and SnO2-based varistors to H2, O3 and NO2 have been investigated. The varistors exhibited nonlinear I-V characteristics at 300-600℃. The breakdown voltage shifted to a high electric field in the presence on NO2 and O3, while the presence of H2 led to a shift toward a low electric field. The H2-induced shift in breakdown voltage of a ZnO-based varistor sensor was enhanced when the grain boundary phase was changed from β- to δ-Bi2o3, which is known to exhibit high oxide ion conductivity, by adding Cr2O3 or Y2O3. Addition of 0.1-1.0 wt% Au to SnO2 resulted in an increased shift in breakdown voltage upon exposure to h2, while that of Pd, Pt, Rh and Ir resulted in a decreased shift. A mechanism in which oxygen adsorbates or excess oxide ions at grain boundaries play an important role was proposed for the variations in I-V characteristics between reducing and oxidizing gas atmospheres.

はじめに
 現在までに、多種多様の原理やセンサ材料を用いた各種のガスセンサが開発されてきている。その中で、非直線性のI-V(電流・電圧)特性が被検ガスにより変化することを報告した例として、Pd-MOSトランジスタ型センサやPt-TiO2ダイオード型センサなどがある。一方において、Bi2O3などを添加したZnO焼結体は非直線性のI-V特性を利用したバリスタ素子として接点保護やサージ防止などに広く用いられている。その非直線的I-V特性は、粒界表面あるいはその近傍に過剰酸素イオンが存在することに起因するという説がある。この説が正しければ、素子を多孔体としかつ高温で作動させれば、雰囲気中の可燃性ガスや酸化性ガスに応答して粒界部における負電荷化学種の量が変化することによりI-V特性が変わると期待される。このような考えから、われわれはバリスタ素子をガスセンサとして利用する可能性について検討している。本稿では、代表的なZnO系バリスタ素子のI-V特性、そのH2ガス応答性、および各種酸化物の添加効果等について検討した結果を紹介する。また、代表的な半導体ガスセンサ材料であるSnO2について同様のバリスタ型ガスセンサ特性を調べた結果も紹介する。




アンペロメトリックバイオセンサの高機能化

矢吹 聡一

生命工学工業技術研究所
〒305 茨城県つくば市東 1-1

Development of Amperometric Biosensors with High Performance

Soichi YABUKI

National Institute of Bioscience & Human-Technology
1-1 Higashi Tsukuba, Ibaraki 305, Japan

This review shows our latest studies on the development of amperometric biosensors with high performance. In this paper, I show these three points on the preparation of the biosensors: 1)Electro-conductive materials such as polypyrrole (which has conjugated double bond), carbon paste and colloidal gold were used for the preparation of enzyme electrode as a matrix. 2)Enzymes which were modified chemically were used for the preparation of enzyme electrode for prevention of losing the enzyme activity. 3)Novel electron mediator was adopted for the preparation.

はじめに
さまざまな分野で迅速・簡便な測定素子としてアンペロメトリックバイオセンサの利用が広がりつつある。しかし、その利用拡大とともに、さらに高精度のセンサ開発が望まれるようになってきた。ここでは、この紙面をお借りして、我々の行ってきたアンペロメトリックセンサの高機能化を目指した研究成果について紹介する。
一般的なアンペロメトリックバイオセンサは、図1に示すような模式図で表されよう。言い換えれば、酸素ならびにメディエーターを固定化する層とこれを保持ならびに電流に変換する基板とから成る。ここでは、@担体、A酸素、Bメディエーターの順に高機能化への方法を考えて行くことにする。




学会レポート
第14回「センサの基礎と応用シンポジウム」

(‘96年6月4〜5日 於 川崎市産業振興会館 )

中込 真二(石巻専修大学理工学部)

Conference Report. The 14th Sensor Symposium.

Shinji NAKAGOMI (Ishinomaki Senshu Univ.)


To Japanese Contents
To English Contents

To On-line Chemical Sensors Index Page (Japanese)
To On-line Chemical Sensors Index Page (English)