Chemical Sensors
Vol. 11, No. 1 (1995)
Abstracts
これからの10年の発展に向けて
酒 井 義 郎
愛媛大学工学部・教授
To the Progress in the Research on Chemical Sensors
Yoshiro SAKAI
Ehime University
化学センサという言葉が広く用いられるようになって久しくなりますが、化学センサ研究会も10周年を迎えることとなりました。化学センサの重要性が各方面で充分に認識され、この研究会にとっても非常に大事な時に、会長を仰せつかり大きな責任を感じております。1993年に第一回の会議が福岡で開催された東アジア化学センサ会議の第2回会議が今年10月に中国西安で開かれますが、その他多くの国際学会に化学センサの部門が設けられており、化学センサの研究が各国で盛んに行われていることを実証しております。
春秋年二回開催されております化学センサ研究発表会のプログラムを過去に遡って眺めてみますと、化学センサ研究会の歴史を辿ることになり、なかなか面白く興味が尽きません。又、年4回発行の会員誌「Chemical Sensors」には、今まで随分お世話になって来ました。化学センサ研究に関する情報誌として貴重な存在であり、新しい編集委員長の下で更に充実していくことと思います。過去2年間実際に編集に係わってみて、編集委員や事務局の方々の献身的な努力によって、この Journalが作られていることを知り、心から感謝しております。
さて、話が少し変わりますが、化学センサの研究や開発に携わっておられる方々の研究開発歴は種々様々であるところが、この分野の大きな特徴ではないかと思います。ほとんどの方が、全く違う分野から化学センサの分野に入って来られたのだろうと思います。それだけ化学センサに利用している材料や原理が多様であるということかもしれません。化学センサの研究発表を聞かせていただきますと、今まで知らなかった世界を覗かせてもらえるという気持ちがいたします。勿論、私自身何処まで理解できるかは別として未知の分野に触れるということは楽しいことです。
この研究会の特徴は、企業と大学・研究機関が一体となって運営しているところだと思います。基礎的研究にせよ応用開発研究にせよ常に社会のニ−ズがどこにあるかということを見つめながら研究を進めて行くことが重要であることは今更述べる迄もありません。これからの10年に向かって、常に新風を取り入れ、これからも世界中の化学センサ関係者から注目される時代の先端を行く研究会でありたいと思います。
迅速クーロメトリーの開発と食品分析への応用
内山 俊一
埼玉工業大学工学部環境工学科
〒369-02 埼玉県大里郡岡部町善済寺1690
Development of Coulometry and Its Application to Food Analysis
Shun-ichi UCHIYAMA
Department of Environmental Engineering, Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji Okabe, Saitama 369-02, Japan
A novel rapid coulometric cell in which a porous carbon felt with chemical activation containing an electrolytic solution has been developed. In this method, a concentration-step method in which a given amount of reactant is added to theelectrolytic solution at rest at a given time, the background current fluctuation caused by the convection of the solution observed in a conventional controlled potential coulometry does not influence the coulometric data. Coulometry using this cell can be performed by conventional electrolytic method and self-driven method. In a self-driven method, coulometry can be performed without an external electric power supply, if on short-circuiting both half cells electrolysis in the sample-containing half cell occurs spontaneously. In the present method, an electrolysis is complete below 30 seconds, and various compounds can be determined by utilizing mediator and enzyme.
The present method has been applied to the determination of biochemical compounds in a variety of food samples, e.g., fruite, vegetables, drinks, soysauce, and so on and it was found that analytical results obtained by coulmetry were in fairly good agreement with those obtained by liquid chromatography and volumetric titration. Coulometry has an attractive merit that absolute value of analyte can be obtained by only one experiment, differing from amperometry or potentiometry, if the current efficiency of an electrolysis is 100%. At present, coulometry based on self-driven method is commercially available as COD meter and food analyzer.
はじめに
クーロメトリーはファラデーの法則に基づき、物質のモル数を電気量から求める方法であることは良く知られており、代表的な電気化学分析法及び電極反応解析法の1つとして重要な位置を占めている。最近のクーロメトリーの進歩については総説を参照されたい。クーロメトリーは外部電源により、作用電極の電位を一定にして電解する定電位クーロメトリーと一定電流で電解発生させた試薬で試料を滴定する定電流クーロメトリー(電量滴定法)に分類することが出来る。定電位クーロメトリーは試料が全て電解される電位に設定して電解をおこなうので、ファラデーの法則を用いると物質の絶対量測定が可能となるという点で他の分析法にない大きな特徴を有しており、この特徴を生かしてある電位における酸化還元電子数の正確な決定法として良く用いられている。
ところで、イオン選択性電極をはじめ電気化学的な化学センサは数多く知られているが、検出信号として電流や電位あるいは電気伝導度を利用する方法が大半を占めている。この主な理由の1つは検出信号が定常値に達するまでのいわゆる応答時間がバルク体積と電極面積の比ではなく電極界面の状態で決まるため短く、迅速に測定できることにあると考えられる。これに対し、定電位クーロメトリーは試料溶液中の試料を全て2次元の電極表面に集めなくてはならず、完全に電解が終了するまでに長時間(10分以上)を要するという難点があり、液体クロマトグラフィーの検出器などのフローシステムにおける利用はあるもののバッチ式化学センサの検出手段として一般に用いられるには至っていない。
しかし、定電位クーロメトリーは絶対量測定が可能であり、仮に迅速性が満たされれば検量線を用いるなどの補正を必要としない簡便な測定法として各種センサに利用できることが期待される。つまり、重量分析における天秤に類似した溶液濃度天秤のような使い方ができるのではないかと思われる。そこで筆者らは電解液を含浸させた親水性多孔性カーボンフェルト電極に試料を微少量添加する方式のクーロメトリーを考案し、各種の電気化学活性種ならびに不活性種の絶対量測定を行っている。本稿では筆者らが開発し、実用化に結び付けた新しいクーロメトリックな測定法を紹介し、この方法の原理と食品分析への応用を中心に述べることにする。
低侵襲血糖測定システム
栗山 敏秀
日本電気株式会社マイクロエレクトロニクス研究所
〒229 相模原市下九沢1120番地
Low-Invasive Blood Glucose Monitoring System
Toshihide KURIYAMA
Microelectronics Research Laboratories, NEC Corporation
1120 Shimokuza, Sagamihara 229, Japan
A portable blood glucose monitoring system has been developed by integrating an ISFET based biosensor technology and a suction effusion fluid (SEF) collection technology. The main feature, where the ISFET based biosensor can be miniaturized and the multi-sensor can be achieved, permits useful applications in the modical field. Recently, an SEF could be obtained transcutaneously by suction and was shown to contain almost the same glucose and urea concentration as that in the serum. When the biosensor cell and SEF collecting cell are made compact and wearable, a porable blood glucose monitoring system will be realized and become very useful for medical treatment of diabetes. A quasi-continuous measurement of blood glucose concentration was achieved by the system.
はじめに
糖尿病は血糖値が病的に高い値を示し、この状態が長期間続くと網膜症、腎症、末梢血管障害などの合併症を引き起こす。そのため食事療法、運動療法に加え、インスリン投与などの治療が行われるが、この時、血糖値を測定することが必要となる。従来、血糖値測定のためには採血が必要で、特に、日内変動を測定するためには一日に数回の採血が行われてきた。しかし、頻繁な採血は患者に苦痛を与えるだけでなく、出血や感染による合併症を引き起こす可能性がある。したがって、なるべく侵襲の少ない血糖値の測定方法が望まれている。
近年、皮膚表面を非観血的に減圧吸引して得られる微量な液体(吸引浸出液:SEF, Suction Effusion Fluid)は、そのグルコース濃度が血糖値と良い相関を示す事が見つけられている。一方、ISFET (Ion Sensitive Field Effect Transistor) を利用したバイオセンサはIC製造方法によりつくられ、小型化、多機能化、大量生産が可能で、微量な試料の測定に適しているという特徴を持っている。この特徴を生かして、上記の経皮的に得られるSEFを用いた携帯型の血糖値測定システムを開発した。
ガスセンサの市場と新しい技術開発
松 浦 俊 二
フィガロ技研株式会社
〒562 大阪府箕面市船場西1-5-3
Demestic Demands of Gas Sensor in the World and the Strategy of Research and Development of New Sensor in Figaro Eng. Inc.
Shunji MATSUURA
Figaro Eng. Inc.
1-5-3 Senbanishi Mino, Osaka 562, Japan
The market trends of main domestic usage of gas sensor (gas leak-detectors, monitor of incomplete combustion and automatic control of air cleaners and micro oven ranges) are discussed in the world wide. The largest topic of this year would be the rapid increase of carbonmonoxide detectors in North America.
According to the request of the world, many efforts to develop the new type sensor should be continued by Figaro Eng. Inc. They are especially focused to cut down the power consumption and the improvement of the reliabilities and sensitivities. Some parts of these are summarized. The pulse drive CO sensor with 14 mV has being developed.
緒言
ガスセンサの市場は'92年、'93年と我が国の不況の影響もあり余り大きい伸びを示していなかったが、'94年に入りUSAのCO警報器設置義務の法制化に伴い、急激な伸びを示し始めた。しかしUL規格の変更等が検討されており、まだまだ長期的に安定した需要になるかどうかは不確定の要素はあるが、'95年に入り不況からの立ち直りとあいまってその需要拡大が期待される状況になってきた。本報告では可燃性ガス洩れ警報器、不完全燃焼警報器、空気清浄器及び電子レンジ用のガスセンサの市場の動向を述べる。
次に、新たなガスセンサニーズに向けてのフィガロ技研のセンサ及びソフトの技術開発のうち、2・3の著しい成果の上がっているものについて述べる。
ガスセンサの用語「感度」を見直そう
武 内 隆
(株)トクヤマ藤沢研究所
〒252 神奈川県藤沢市遠藤2023-1
Let's Reconsider the Term "Sensitivity" of Gas Sensors
Takashi TAKEUCHI
Fujisawa Research Laboratory, Tokuyama Corp
2023-1 Endo Fujisawa-city, Kanagawa 252, Japan
In many papers, the "Sensitivity" of semiconductor gas sensors is defined as a quantity such as R/R0, where R is the resistance of a gas sensor in an atmosphere containing a fixed concentration of a gas and R0 is that in a standard atmosphere. The quantity R/R0 is very convenient but differs from the ordinal concept of sensitivity being used in the field of measurement and most of sensors. More serious misunderstanding occurs when the R/R0 is plotted as a function of gas concentration. Sensitivity index or pseudo-sensitivity, which is expressed as a quantity such as R100/R0, where R1000 means the resistance of gas concentration of 1000 ppm, is proposed to solve the problems. The idea can also be adapted to similar problems in other gas sensors such as solid electrolyte type.
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