Chemical Sensors
Vol. 9, No. 3 (1993)
Abstracts
センサへの期待
井上 悳太
トヨタ自動車(株)・取締役・東富士研究所副所長
Expectation of Sensors
Tokuta INOUE
TOYOTA Motor Corp.
今センサが面白い。材料の進化、加工技術の進歩、最近ではエレクトロニクスの進歩も加わった各技術分野におけるシーズと、現代情報化社会における生活様式の変化、生活空間の拡大、価値観の多様化に伴う極めて幅広い商品、機能の実用化のニーズから、実に多種多様で高機能なセンサが考えられ実用化されている。良い商品、良いシステムは良いセンサ或いは良いアクチュエータによって作られる例が多い。パソコンの入力用マウス、ファジー洗濯機の汚れ検知センサ、オートフォーカスカメラの自動焦点検知機構、POS(Point of Sales)機器のバーコードリーダ自動水洗式トイレの赤外線センサ等、身近にある便利なもの、使いやすい機器には優れたセンサが用いられている。
自動車の世界においても同様で、例えば環境保護の面から行っている排気ガス対策では三元触媒を用い電子制御噴射装置をフィードバック制御することにより排気ガス中の HC, CO, NOxを同時に高能率で浄化している。このシステムを実現するためのキーとなるのは正確な空燃比の検出であり、ジルコニアの固体電解質による酸素濃淡電池の性質を使ったO2センサ(酸素センサ)が用いられている。また近年、安全に対する認識の高まりから普及が進んでいるエアバッグシステムも、衝突時の車体減速度を正確に検出する優れた加速度センサによるところが大である。この他にも低燃費を実現するリーンバーン制御エンジンで気筒内の圧力を検出する燃焼圧センサ、4輪操舵システムで車両のヨー角速度を検出するヨーレイトセンサ、オートワイパ装置でウインドウへの雨の付着を検出する雨センサ、喫煙時エアピュリファイヤを自動的に作動させるため煙を検知するスモークセンサ等、各システムのキーとなるセンサは多い。
一般に、これまでのセンサは主として位置・速度・圧力等の物理量の変化を測定するものであったが、今後は、リサイクル・環境保護・安全・高齢化対応などの社会的要求に合わせたシステム開発が進んでいく中で、その検出対象が複雑化・高度化していくものと考えられる。これらの流れの中でバイオセンサ、化学センサ等の活用もさらに活発化していくものと思われ、本化学センサー研究会に期待するところは大きい。
バイオセンサ
水谷 文雄
生命工学工業技術研究所
〒305 茨城県つくば市東1-1
Chemical Sensor 1992-Biosensors
Fumio MIZUTANI
National Institute of Bioscience and Human-Technology
1-1 Higashi Tsukuba, Ibaraki 305, Japan
はじめに
本稿では1992年に発表されたバイオセンサ関連の論文を紹介する。バイオセンサ92及び第4回化学センサ国際会議が開催され、特に前者での発表論文がBiosens. Bioelectron.に掲載され始めたこともあって多数の報告がなされている。
湿度センサ
松口 正信
愛媛大学工学部応用科学科
〒790 松山市文京町3
Chemical Sensors 1992-Humidity Sensors
Masanobu MATSUGUCHI
Faculty of engineering, Ehime University
3 Bunkyo-cho, Matsuyama 790, Japan
はじめに
湿度センサに関する1992年後半から1993年前半における研究動向を、その検出原理、及び材料の種類によって分類しその内容をまとめた。なおこの間に行われた国際会議等の内容については既に本誌の学会レポートにおいて報告されているので本稿では省略させていただく。
機能性色素膜を利用した分子認識素子
秋山 久・勝治 洋子・実吉 秀治・和田 富夫
シャープ株式会社技術本部中央研究所
〒632 奈良県天理市櫟本町2613-1
Molecular Recognition Device Using Functional Dye Films
Hisashi AKIYAMA, Youko KATSUYA, Shuji MIYOSHI, Tomio WADA
Corporate Research and Development Group, SHARP Corporation
2613-1 Ichinomoto-cho Tenri-shi, Nara 632, Japan
Molecular recognition device which detects odor optically have been studied by using two types of functional dye films. One is a solvatochromic dye film of which absorption wavelength (color) changes. The other is a color former film of which absorbance (light and shade of color) changes. In this paper, optical characteristics of these films in the presence of odor and the color change mechanism will by described. Furthermore, the possibility of odor discrimination will by considered. The method of odor discrimination is as follows. Changes of optical characteristics of four dye films were detected by using photodiodes. And these outputs were treated as information of optical pattarn by personal computer. The result indicated that there was possibility of discrimination of seven odors such as banana (isoamyl acetate), sake (ethanol) and the like.
緒言
近年、オフィスや家庭生活において匂い・香りと快適環境との関係が重要視されているとともに、産業分野においては安全性を重視したガス検知が望まれるなど、広範囲な分野で匂いを対象としたセンサが必要とされている。
従来から知られているガスセンサとしてはSnO2 や ZnO などの酸化物半導体の導電率等の変化を利用したものが、また、匂いセンサとしては、水晶発振子の表面に高分子等の薄膜を作製し、匂い物質の吸着による水晶発振子の発信周波数の変化で検知するものなどがある。ところがいずれの場合も検知方法として電気信号を利用するため、配線の必要性があり、引火性ガスの検出が難しい。しかも、特性の異なる多くのセンサを並べて多数の匂いやガスの識別を行うためにはセンサ自身の大きさから小型化が困難であった。また、酸化物半導体を用いたものでは、素子を過熱する必要があるなどの問題点を有していた。
一方、生物が有する優れた情報処理機能を模倣し、光学的に利用する研究が大きな期待を集めており、この生態機能を実現するためにシリコンに代表される無機半導体材料にはない新しい機能を求めて、有機材料を利用した分子機能素子の研究が進められている。例えば、動物の嗅覚細胞の重要な部分である匂い物質の吸着サイトである脂質二分子膜を模倣した膜を用いた匂いセンサの研究等が挙げられる。
我々は、このような観点から、匂い物質の吸脱着によって吸収波長が変化するソルバトクロミック色素膜と吸光度が変化するカラーフォーマー膜を用いて匂いを光学的に感知する分子認識素子の開発を行った。すなわち、本研究では、これらの機能性色素膜をマトリックス配置し、発光素子と受光素子を組み合わせることにより、匂いの吸・脱着により得られた色パターンを光情報として処理し、匂いの認識の可能性を検討した。
本稿では、機能性色素膜の匂いの吸・脱着に伴う光学特性の変化及び機能性色素膜を用いた匂い認識システムについて述べる。
ユーロアナリシス [
石原 達己
大分大学工学部
EUROANALYSIS [
(Edinburgh, Scotland, UK, September 5-11, 1993)
Tatsumi ISHIHARA
第9回固体イオニクス国際会議(SSI-9)
石原 達己
大分大学工学部
9th International Conference on Solid State Ionics (SSI-9)
(The Hague, The Netherlands, September 12-17, 1993)
Tatsumi ISHIHARA
東アジア化学センサ会議
山添 f(九州大学総合理工学研究科)
八木 秀明(日本特殊陶業)
水谷 文雄(生命工学工業技術研究所)
清水 陽一(九州工業大学工学部)
内山 俊一(埼玉工業大学)
清水 康博(長崎大学工学部)
伊藤 善孝(新電元工業)
East Asia Conference on Chemical Sensors
Noboru YAMAZOE, Hideaki YAGI, Fumio MIZUTANI, Youichi SHIMIZU, Shun-ichi UCHIYAMA, Yasuhiro SHIMIZU, Yoshitaka ITOH
'93年電気化学秋季大会
(九州大学箱崎キャンパス)
今中 信人(大阪大学工学部)
桑畑 進(大阪大学工学部)
春山 哲也(東京工業大学生命理工学部)
松岡 英明(東京農工大学工学部)
'93 Autumn Meeting of The Electrochemical Society of Japan
Nobuhito IMANAKA, Susumu KUWAHATA, Tetsuya HARUYAMA, Hideaki MATSUOKA
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