Chemical Sensors
Vol. 9, No. 1 (1993)
Abstracts
新しい出発にむけて
足立 吟也
大阪大学工学部・教授
From a Chairman's Memorandum
Gin-ya ADACHI
Osaka University
化学センサ研究会はその前身である化学センサ研究懇談会発足からかぞえると、すでに15年の歴史をもっている。清山哲郎九州大学名誉教授(当時教授)、塩川二朗大阪大学名誉教授(当時教授)、鈴木周一東京工業大学名誉教授(当時教授)および笛木和雄東京大学名誉教授(当時教授)が大学、国公立研究機関および民間の化学センサに関心をもつ研究者を集めて研究会を組織し、相互に切磋琢磨する場を設けようという基本構想をもちだされ、1977年夏に清山先生のもとに山添昇九州大学工学部教授(当時助教授)、山内繁国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所所長(当時東京大学工学部助教授)、相澤益男東京工業大学教授(当時助手)と小生(当時助教授)が呼ばれ、企画と実務を担当する委員を命ぜられたのが会のはじまりである。この頃は「センサ」という言葉のひびきが新鮮で、未知の分野への胸のときめきに似たものを感じたことが思い出される。折から、材料科学の動向が、長く続いた「丈夫で永持ち」の構造材料の時代から「変換機能」をもつ機能性材料の時代へと移り変わる時代でもあったので、化学センサ素子はその機能性材料の一番手として位置づけられていた思う。その後ガス警報器や酸素センサの開発と普及という成果をみるとき、喧伝された割りには成功していない機能性材料の研究の中では大健闘しているといってよい。さて、化学センサ研究会では初代の塩川先生に続いて山添、山内、相澤の各先生が会長を務められた。この顔ぶれは上に述べたように化学センサ研究懇談会創生期の、いわば同志のそれであり、今回、会長に選出された小生を加えれば研究懇談会発足当時の企画や実務を担当した者はすべて会長をおおせつかったことになる。この会はこれらの会長のもとで、発足から今日まで、2回の国際会議の開催、年2回の発表会、機関誌の刊行など、数々の試みを成功させて来た。そして、小生の会長就任は化学センサ研究会の第一期をしめくくることでもあると思う。我が国は学協会や研究会活動がことのほか盛んな国である。これが、現在、我が国の経済的発展の一翼を担ってきたことは事実であろう。しかし、これら学協会の中には開発のノウハウその他の取り引きの場の役目しか果たさず、会の役員もその仲介人でしかないケースもあると聞く。これに対し、私達の化学センサ研究会が単に情報交換の場だけではなく、会員が集まることで新しい価値を生み出して来たことは誇りとしてよい。そしてこれこそが化学センサ研究会をこの分野における世界の中心的組織たらしめているゆえんであると言える。会長としての小生の役目はまず、この良い伝統を第二期の人々にひきつぎ、新しい時代の礎になることであろう。幸い、化学センサ研究会事務局は強力であり、日々の運営に何ら心配はない。「力」のみなぎっている間に次代を養成していくことが肝要である。新たな第二期への準備としての会員各位の提言、助言、叱生を切に望んでやまない。
電気機器における化学センサへの期待
野村 健次
三菱電機(株)生活システム研究所
〒247 鎌倉市大船2-14-40
Demands for Chemical Sensors from Electrical Systems and Products
Kenji NOMURA
Consumer Products Laboratory, Mitsubishi Electric Corporation
2-14-40 Ofuna, Kamakura, Kanagawa 247, Japan
Chemical sensors are expected to realize convenient, comfortable, safety and healthy human life. In electrical systems and products, several kinds of chemical sensors have already been used for these purposes. Further demands exist to develop and improve new systems and products such as air conditionar, ventilator, combustion apparatus, gas leak detector, electric distribution system, refrigerator, microwave oven. These demands and requested performances for chemical sensors are described.
はじめに
日常生活において、「より便利に」、「より快適に」、「より安全に」という要請に対して、センサの果たす役割がますます重要になりつつある。この中で、化学センサは我々の日常生活に最も関連の深い呼吸する空気や食品などに直接関係するもので、これまでのように安全性という観点からだけでなく、「より快適に」、「より美味しく」など人間の感性に訴えるような要求も高まりつつある。一方、大気汚染、水質汚染、温暖化、フロンによるオゾンホールなど、地球規模の環境問題の大部分は、化石燃料の燃焼や生活、産業廃棄物など有機/無機などのいわゆる化学物質が原因になっていて、長期的な観点に立った環境問題や省資源・省エネルギーに対しても化学センサの役割が重要と考えられる。
ここでは、電気会社の立場で、生活システム関連機器からの化学センサへの期待として、室内外空気質関連、防災関連、給配電設備機器関連、燃焼機関連、食品の製造・保存・調理関連などに要求される化学センサの性能や、化学センサ全般への要求項目についての私見をまとめてみた。
遺伝子組み換え技術を用いた環境中難分解性化合物の発光モニタリング
碇山 義人
東京工業大学生命理工学部
Bioluminescent Monitoring of Hardly Decomposable Chemical Compounds in the Environment by Recombinant
Yoshihito IKARIYAMA
Department of Bioengineering, Tokyo Institute of Technology
4259 Nagatsuta Midori-ku, Yokohama, Kanagawa 227, Japan
Here we have taken a new strategy to monitor hardly decomposable chemical compounds by taking advantages of excellent metabolisms of bacteria. Benzene, toluene, xylene (BTX), which are massively produced on a large scale in industrial circles, are discharged and accumulated in the environment, Monitoring these organic compounds has significant meaning for the prevention of environmental destruction.
A new strategy toward the detection of aromatic hydrocarbons with a recombinant E. coli has been taken. We have constructed a light-generating plasmid (pTSN316). A fragment from TOL plasmid, responsible for the digestion of BTX and their derivatives, bearing the promoter (Ps) of the xylS gene for transcriptional activator, was fused to the luciferase gene of firefly (Photinus pyralis). The E. coli strain containing the plasmid (HB101 (pTSN316)) can emit photons in the presence of a benzene derivative. The xylR regulatory gene of TOL plasmid plays an important role to induce luciferase. This system can be used to measure the BTX concentration.
The bioluminescence of the transformed E. coli increased with the increase in BTX concentration. When compared at 0.8 or 0.9 mM concentration, the bioluminescence became smaller in order of m-xylene, p-xylene, toluene, and benzene. This indicates that specific binding between the regulatory protein. XylR, and BTX is very important. Moreover, we made a monitoring device by immobilizing the recombinat E. coli to the tip of a fiber optic, and tried the measurement of BTX concentration in a batch system. In this result, several ppm of BTX was measured.
These findings suggest that realtime monitoring of BTX is possibile. And the aromatic hydrocarbon concentration can be easily measured by using the proposed fiber optic device. We believe that substances of environmental deterioration can be sensitively monitored in this method.
緒言
現在、我々の経済活動に伴って、環境中に放出される多様な物質の中でも土壌中に長期にわたって残存する難分解性化合物を検出あるいは分解除去することは緊急の課題である。
微生物の有する汚染物質の浄化作用を利用して難分解性化合物を環境から除去しようとする試みは多くの研究室で既に着手されている。ところで、環境汚染物質のモニタリングは環境破壊を呼ぼう、低減化するという観点から極めて重要であるが、有効な方法はほとんどないのが実情である。そこで、ある種の細菌が芳香族化合物などの完全分解系を司る遺伝子を有することに着目し、この遺伝子とマーカー酵素遺伝子の融合を行うと、環境中の芳香族化合物の量に対応してマーカー酵素の活性化が起こるものと考えた。本研究では、化学工業で大量に使用されるベンゼン(B)、トルエン(T)、そしてキシレン(X)を分解する遺伝子を有するTOLプラスミドに着目し、これらをモニタリングできるデバイスを構築することにした。
第16回化学センサ研究発表会
(4月1〜2日、東京工業大学)
松口 正信(愛媛大学工学部)
水谷 文雄(生命工学工業技術研究所)
Conference Report. The 16th Chemical Sensor Symposium
Masanobu MATSUGUCHI (Ehime Univ.)
Fumio MIZUTANI (National Insti. Biosci. and Human-tech)
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