Chemical Sensors

Vol. 8, No. 4 (1992)


Abstracts



センサと触媒

今中 利信

大阪大学基礎工学部・教授

Sensor and Catalyst

Toshinobu IMANAKA

Osaka Univ.

 視、聴、嗅、味、触からなる人間の五感は、我々が社会生活を営むうえで必須のものである。あらゆる産業活動において、いかにコンピューターの支援を受けても、最終的にはこれらの五感の働きによって、社会活動が成り立っていることは自明である。しかしながら、人間の五感は定量性に欠けているのみならず、一酸化炭素のような毒物を検知できないような不感性の部分もある。また、高温、低温、高圧、真空状態などのように、工業上重要であるが生命体の活動に適さないような厳しい条件、または放射線や各種の有害物質の存在する危険な環境においても、産業活動を行わなければならない場合もある。このような過酷な条件下でも各種の重要な測定情報を検知し、定量しなければ産業活動ができないことは明らかである。このような場合に、不完全な機能しかもっていない五感の働きを補い助け、拡大するための補助機能が必要となり、また、生産のオートメーション化においては絶えず生産状況をモニターしなければならない。そこでセンサの必要性が生じる。
 時代の進展に伴って産業活動は高度化し、複雑になり、社会的要求も多様化してくる。この意味でセンサは益々広範囲にわたって利用されるべき運命にあり、信頼性のある優れた性能を備えたセンサの開発が叫ばれている所以である。
 化学センサも例外ではなく、検知物質に対して高感度で、精度が高く、再現性の良い、特定物質への選択性の高い、優れた機能が要求される。その機能は特異的な化学種の認識と識別を行うことと、それを他の信号に変換することである。化学センサにおいては、センサ素子への特定の化学種の吸着・配位と、それによる電導度などの物性値の変化を検知すると言った、センサ素子と化学種との相互作用を利用している場合が殆どである。化学センサの働きは触媒のそれとよく似たところがあり、化学種である吸着物がセンサ素子に接触して吸着し、それと同時に電子移動が起こり、検知した後脱離して元の状態に再生される。触媒の場合は触媒に反応物が吸着・配位して電子移動が起こり、さらにこれに加えて原子の組み換えである反応が進行し、その後脱離して生成物を得、触媒は元の状態に再生される。この意味で、固体表面の物性変化に主体を置くセンサか、化学種の反応に主体を置く触媒かの相違となり、サイクルのプロセスには殆ど差のないことになる。それ故に、研究法についても両者に共通の手法が多く用いられることになる。このような観点からみると、センサ素子と触媒の開発とは密接に関係しているのも当然の事と云える。
 センサ研究の発展は触媒研究の進展に寄与し、この逆も成り立ち、両者は相補的に関連し、相互に助け合い進展して行くものである。両研究者の交流と連携とが何よりも大切であることを痛感している。




固体電解質ガスセンサ

桑田茂樹

新居浜工業高等専門学校工業科学科
〒792 愛媛県新居浜市

Chemical Sensors 1991-Solid Electrolyte Gas Sensors-

Shigeki KUWATA

Department of Industrial Chemistry, Niihama National College of Technology
Niihama, Ehime 792, Japan

 1991年に発表された固体電解質ガスセンサに関する論文を1)O2ガスセンサ、2)H2ガスセンサ、3)CO2, NOx, SOxガスセンサに分類し、その内容を紹介する。
 固体電解質ガスセンサとしては、相変わらずO2ガスに関するものが多く見られたが、最近、地球環境やエネルギ問題が取り上げられるようになり、CO2やSOxなどのガスセンサの報告も増えてきている。また、ガスセンサに関する総説、解説も多く目にするようになってきた[1-6]。




半導体ガスセンサ

玉置 純

九州大学総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園

Chemical Sensors 1991-Semiconductor Gas Sensors-

Jun TAMAKI

Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Kasuga-koen Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan

 本稿では、1991年に発表された半導体ガスセンサに関する論文、学会講演を1)水素、2)一酸化炭素、3)その他の可燃性ガス、4)におい、5)環境ガスおよび6)センサシステムの6つに分類し、それたの概略を紹介する。
 1)〜5)では対象ガス別に大別し、それらに対する検知特性を調べたものおよび優れたセンサを開発した論文を含め、6)にはパターン認識、ファジィ推論、温度サイクル時の出力信号解析など信号処理を工夫して新しいセンサシステムを開発した論文を含めた。
 半導体ガスセンサをはじめとする最近のガスセンサの開発動向[1]、半導体ガスセンサの高性能化の手法[2,3]、ならびに半導体酸化物上の吸着酸素の特性の解析[4]など、半導体ガスセンサに関する総説、解説がいくつか発表されているので参照されたい。また、Chiba[5]は、Figaroガスセンサ(TGSセンサ)の開発物語を紹介しており、読物としておもしろいと思う。




半導体化学センサ

勝部 昭明

埼玉大学工学部
〒338 浦和市下大久保255

Chemical Sensors 1991/92-Semiconductor Chemical Sensors-

Teruaki KATSUBE

Faculty of Engineering, Saitama University
255 Shimo-Okubo Urawa, Saitama 338, Japan

 マイクロエレクトロニクスをベースとして作製される半導体化学センサについて、1991年から1992年前半までに発表された研究成果について述べる。主にSiを用いたセンサについて扱うが、他の半導体についてもFETやダイオード等の基板材料として用いられているものはとりあげた。1990年までのものについては本誌に既報[1]である。また、この方面の論文のレビューとしては文献[2,3]が参考になる。



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