Chemical Sensors

Vol. 8, No. 3 (1992)


Abstracts



化学センサ国際会議に思う

一ノ瀬 昇

早稲田大学理工学部・教授

Comment on International Meeting on Chemical Sensors

Noboru ICHINOSE

Waseda Univ.

御承知の通り第4回化学センサ国際会議は平成4年9月13〜17日の期間早稲田大学国際会議場で開催させ無事成功裡に終了した。まずは御同慶の至りである。国際会議開催の準備がこの不況とは重ならず少々早めにスタートしたお陰で募金等にはあまり苦労しなかったと聞いているが、これがタイミングがずれてこの不況と重なったらとても成功は覚束なかったことだろうと思う。
 さて、今回の米国大統領の選挙戦をみていると「経済」という2文字が大きなウェイトを占めたことがわかった。米国の失業者は1千万人にも及ぶといわれており、ニューヨーク、ロスアンジェルス、サンフランシスコのような大都市では紙コップを差し出して小銭をせびる若者や無気力に路上に横たわるホームレスの姿があふれ荒涼とした風景がみられる。
 過去の失業は、ブルーカラーのレイオフ(一時解雇)というのが相場であったが、会社が一息つけばまた呼び戻す、つまりレイオフの間、失業保険で面倒をみさせ、会社は給料を支払わずに雇用関係を続けているようなものであった。しかし、今度の不況では首を切っている。しかも、これまで安全圏といわれていたホワイトカラーにまで広がっている。「ホワイトカラーリセッション」と何度も聞かされている。
 経済状況が悪い時の大統領は過去に落選の憂き目をみてきた。ブッシュが何を言っても駄目なのである。こんな不人気な現職大統領も珍しいという。ブッシュ個人は悪い人ではないが、問題は経済である。こう悪くてはどうしようもないのである。米国民の多くが、財布の中身をみて怒っているのである。「この状況を変えよう、あと4年は待てない」クリントン陣営の単純なスローガンが、人々の心を完全に捉えたのも無理のないことであった。ブッシュは「経済」という2文字に負けたのである。
 こんな不況を反映して、米国で開催された最近の国際会議は低調であった。会議と併設された展示会などは大きなホールに20社程度の出展しかなく目を疑いたくなる程寂しいものであった。
 日本も今や大不況である。新聞に発表される企業各社の収益はガタ落ちである。大学は不況なんて関係ないだろうと人は言うが、無関係ではあり得ないのである。グラント(研究助成金)が取れないとテニュア(終身身分保障)をもっている教授も職を去らねばならぬ米国とは違って、日本では少額だがある程度研究費が大学から保証されているので厳しさは少ないであろう。しかし、産学共同の研究費などはまず最初にカットということになるから研究開発にも支障が当然出てこよう。このような不況により化学センサの研究開発ばかりでなく、科学技術の進歩が遅れてしまうことを危惧する昨今である。




バイオセンサ

内山 俊一

埼玉工業大学工学部
〒369-02 埼玉県大里郡岡部町普済寺1690

Chemical Sensors 1991 - Bio-Sensors

Shunichi UCHIYAMA

Departmento fo Environmental Engineering, Saitama Institute of Technology
1690 Fusaiji Okabe, Saitama 369-02, Japan

はじめに
 1960年代に誕生した酵素電極は、その後物質識別部位の信号検出部位とから構成された生体触媒を有するトランスジューサーとして大きく発展した。そして1980年代に入り、様々なバイオセンサとして大きく花開いた感がある。本稿は1991年の1年間に発表された論文と総説を中心に記述することにするが、バイオセンサの関連する領域は極めて広く、その全てを網羅することは筆者の能力を越えており、本稿と合わせて後述の1991年に出版された単行本や総説を参照されたい。
 1991年は化学センサとバイオセンサの国際会議の開かれない年であったが、8月に日本で初めて国際分析化学会議(IUPUC International Congress on Analytical Science)が千葉県幕張で開かれた。またそのポストシンポジウムとして第5回フローインジェクション分析法国際会議(Flow Analysis V)が熊本工業大学で開催された。そしてTownshend教授の招待講演が行われ、フロー法における化学発光検出の最近の動向が報告された。
 バイオセンサに関連した単行本としてBlumとCouletが編集した“Biosensor Principles and Applications”が出版された。この本はアンペロメトリック及びポテンショメトリックな酵素電極、酵素イムノアッセイ、サーミスター、ピエゾ、FET、光ファイバー、蛍光、バイオルミネッセンス、微生物、in vivoセンサなど14章からなるバイオセンサ全般の総説集であり、それぞれの手法の原理、コンセプトを理解するのにまた最近の動向を調べるのに適している。またChemical Sensor Technology Vol. 3が発刊となり、4編のバイオセンサに関する総説が発表され、オプトロード、SnO2を検出素子とした匂いセンサ、バイオモレキュラー修飾電極、生体分子測定用ウルトラマイクロ電極などが紹介されている。またFourth International Symposium on quantitative luminescence spectrometry in biomedical sciences, Ghent, Belgium, May, 1991とSeminar in celeblation of the 250 th volume of Analytica Chimica Acta, Ootmarsum, The Netherlands, May, 1991及びThe first world congress on biosensors, Singapore. May, 1990の国際会議のプロシーディングがAnalytica Chimica ActaとBiosensors & Bioelectronicsの特集号の中に相澤教授による電気化学及び分光学的検出に基づくバイオセンサの原理と応用に関する解説が記載されている。




湿度センサ

松口 正信

愛媛大学工学部応用化学科
〒790 松山市文京町3

Chemical Sensors 1991-Humidity Sensors

Masanobu MATSUGUCHI

Faculty of Engineering, Ehime University
3 Bunkyo-cho, Matsuyama 790, Japan

はじめに
 最近、投稿論文や学会発表等において、湿度センサに関するものが再び増えてきたように思う。これは、雰囲気の水分の影響は無視できないものであり、その制御の重要性を誰もが認識しているためであろう。今や単に材料を変えて湿度依存性を測定するだけの研究ではなく、感湿機構に関するより基礎的な議論、そしてその上に立った実用性センサ作製の研究が求められている。
 本稿では、湿度センサに関する1991年後半から1992年前半における研究動向を、高分子湿度センサ、セラミックス湿度センサ、電気的特性以外の検出原理を利用したもの、その他に分類しその内容をまとめた。




第4回化学センサ国際会議

江頭  誠(長崎大学工学部)
武内  隆(徳山曹達(株))
松口 正信(愛媛大学工学部)
定岡 芳彦(愛媛大学工学部)
今任 稔彦(九州大学工学部)
佐藤 生男(神奈川工科大学)
石原 達己(大分大学工学部)

Conference Report. The 4th International Meeting on Chemical Sensors

Makoto EGASHIRA (Nagasaki Univ.)
Takashi TAKEUCHI (Tokuyama Soda Co., Ltd)
Masanobu MATSUGUCHI, Yoshihiko SADAOKA (Ehime Univ.)
Toshihiko IMATO (Kyushu Univ.)
Ikuo SATOH (Kanagawa Inst. Tech.)
Tatsumi ISHIHARA (Oita Univ.)

はじめに
 第4回化学センサ国際会議が、本年9月13から17日に早稲田大学の国際会議場で、九大総理工の山添教授を組織委員長として開催された。会議は非常に盛会であり、清山哲郎先生をはじめとする諸先生方のご尽力で9年前に福岡でスタートした本国際会議を第2世代が立派に引き継いで、本会議を十分に発展・定着させることができたのではと感じる次第です。
 さて、会議の参加登録者は別表の通り530名を越えた。諸般の事情で、実際には、とくに旧ソ連や中国を中心に来日できなかった方も20数名いたが、いずれにしてもClevelandでの第3回を上回る参加者であり、化学センサ分野に対する関心が引き続き非常に強いことが伺えた。つぎに、発表件数は、特別講演4件と招待講演11件、それに口頭発表140件およびポスター発表151件の申し込みがあったが、キャンセルが全部で41件も出たのはいささか残念であった。国別の講演件数については別表を参照いただきたい。なお、特別講演は米国のLiu教授、スウェーデンのLundstrom教授、それに日本の軽部教授と松浦氏の4件であった。これまでの会議と比べた特徴は、旧ソ連と中国からの発表が多かったこと、その一方で米国からの発表が少なかったことであろう。米国については景気の落ち込みがかなり深刻なようである。
 招待講演と口頭発表は3会場を使って、以下に示すセッションに分類されて行われた。 また、ポスター発表は一日約50件の予定で3日間それぞれ午後の一番に行われた。これらの講演内容について6人の方々にレポートをまとめていただいた。記事中講演番号を発表者名の後に付しているので、詳細についてはTechnical Digestを参照いただきたい。
 なお、本国際会議では、新しい企画として優秀論文が選定されClosing Ceremonyで表彰された。選定された論文は、Smithら(3A05, 米)、Dickertら(3A14, 独)、Imanakaら(4C04,日)、およびNomuraら(4C07, 日)、の4件であった。これとは別に、化学センサの発展に対する功績を称えて、米国Case Western Reserve Univ.のWen H. Ko教授、スウェーデンLinkoping Univ.のI. Ludstrom教授、埼玉工大の鈴木周一教授および故松尾正之東北大学名誉教授の4氏に、IMCS AwardsがBanquetの席上で贈られた。




第15回化学センサ研究発表会

今中 信人(大阪大学工学部)
水谷 文雄(繊維高分子材料研究所)

Conference Report. The 15 th Chemical Sensors Symposium

Nobuhito IMANAKA (Osaka Univ.)
Fumio MIZUTANI (Research Inst. Polymers and Textiles)


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